(EDH) Hapatra, Vizier of Poisons 毒物の侍臣、ハパチラ EDH 解説(最終更新日:令和2年8月11日)
古い記事ですがアクセスがあるようですで,ハパチラ関係の記事をまとめたマガジンを作成しました.最新のリストまですべて載っていますので,こちらを参考にして下さい.
mediumに令和2年8月11日に投稿したもの(https://0gnv2hh.medium.com/hapatra-edh-hapatra-vizier-of-poisons-commander-73afa3d4256b)をこちらに再投稿します.
今見直すと慚愧赤面するばかりですが,再投稿するその心は(https://note.com/0gnv2hh/n/n3155fca35246)
2020年8月最新のハパチラの解説です.ハパチラがどういうカードなのか,EDH(統率者)という舞台ではどういう利点があるのかなどまとめました.また,最も代表的なヨーグモスとのコンボについて簡単に解説します.
基本事項の説明に主眼を置いているため,最初は非常に基礎的な話が続きます.コンボのみ知りたい方はコンボの部分まで読み飛ばして下さればと思います.
2020年9月8日の改訂版リストは(https://medium.com/@0gnv2hh/61a25812d13b)です.
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1. ジェネラル概要
まずはジェネラルの紹介です.(以下,画像など公式ホームページ(https://mtg-jp)から引用)
ハパチラの特徴は大きく3つです.
・2マナと軽量
・緑黒というカラー
・他にはないユニークな能力
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2. ハパチラの特徴
2.1 軽量
2マナというコストは数多の伝説のクリーチャーの中でも比較的軽く,これだけで値千金と言えます.
EDHでは,多くのデッキが様々な理由で最初の数ターンはマナを確保する(土地を置く,マナを生み出すパーマネントを並べる)ことに費やします.例えば《キィエルドーの王、ダリアン》デッキのように5マナ以上の比較的重いコストを持つジェネラルを有し,なおかつそれをどうしてもキャストしたいデッキの根幹に据えている場合,ジェネラルをより早く展開するために最初の数ターンをマナの確保に費やす必要があります.
そうでなくても,マナは多ければ多いほどたくさんの面白い呪文が打てますから(例えば《世界混ぜ》で混沌を齎したい場合にも,8マナが要求されます),多くのデッキは序盤に使えるマナ加速を積んでいます.
そういったデッキがマナ基盤を整えている様を横目で見ながら,ハパチラは2ターン目にして自身を場に展開することが可能なのです.加えて,後述しますが,あわよくばそういった相手の序盤の戦術を崩すことが出来る能力をハパチラは有しています.
また,手札に森と沼やそれに準ずるカード2枚があるだけで2ターン目のアクションが補償されているというのは,ゲームへの参加権という観点からマリガン基準を大きく下げることも出来ます.仮に序盤に意気揚々と展開したハパチラが打ち倒されてしまったとしても,2回目は4マナ,3回目は6マナで再キャストすることが出来るというのも,大きな魅力の一つです.
マナがなければ始まらない
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2.2 色
ハパチラの固有色である緑黒は打ち消しこそないものの,サーチやドローに優れており,除去にも多くの選択肢があります.
例えば《森の知恵》は毎ターン追加の2枚のドローを与えてくれますし,《悪魔の教示者》は言うまでもなく強力なカードです.黒にはクリーチャー,緑にはエンチャントやアーティファクトを除去する強力な呪文が多く存在しますし,この2色を組み合わせることで《暗殺者の戦利品》のようなどんな種類のパーマネントでも破壊できる呪文を練り上げることに成功しています.
上述したマナ加速に関しても,《極楽鳥》や《ラノワールのエルフ》といった古来からの強力なクリーチャーがたくさんいます.《ガイアの揺籃の地》は1枚で3マナも4マナも生み出すことが出来る,驚異的なパワーを持っています.
しかしながら,やはりハパチラ最大の魅力はその能力でしょう.ハパチラは能力を2つ持っており,これらが有機的に接合されているため,非常に面白い結果を場に及ぼすことが出来ます.一方で,意外と混乱するのでひとつずつ説明していきたいと思います.
緑黒の強力なカード達(悪魔の教示者は公式に画像がなかったため実写)
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2.3 ユニークなハパチラの能力
2.3.1 第1の能力:-1/-1カウンター
ハパチラは相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えるたびに,クリーチャー1体の上に-1/-1カウンターを1つ置くことが出来ます.
対象を取る能力のために被覆や呪禁を持つクリーチャーには効かないという欠点がありますが,それらを持ち合わせているクリーチャーは少ないため,攻撃が通れば殆どの相手クリーチャーを弱体化させることが出来ます.何度も攻撃を通し,-1/-1カウンターをタフネスと同じ数だけ置くことが出来れば,破壊不能を持ったクリーチャーでも倒すことが出来ます.
ただし,戦闘以外のダメージでは乗せることが出来ませんし,ハパチラのパワーは2ですが2点以上のダメージを与えたからといって,2つ以上カウンターを置くことは出来ません.
この能力の主な利点は,序盤に相手の展開を遅くすることが出来ることです.1回攻撃を通すだけで《ラノワールのエルフ》などのマナクリーチャーを簡単に倒すことが出来るため,こちらのジェネラルがハパチラだとわかった時点で相手はマナクリーチャーを出すのを躊躇うかもしれません.
勿論EDHは多人数戦ですから,複数のプレイヤーが同時にクリーチャーを展開すればハパチラの攻撃を通すことは難しくなります.実際,ハパチラのパワーとタフネスは2しかありませんから,1マナの《木の壁》にすら止められてしまいます.
しかし,青単などの序盤にクリーチャーを展開しない人がいたらどうでしょうか.また,すべての対戦相手の手札にラノワールのエルフがいたとしても,他人の手札が覗けない以上,他の1人でも出してくれいない人がいた場合を想像すれば,誰が進んで展開するでしょうか.ハパチラのパワーとタフネスは,逆に言えば2もあるのです.多くのマナクリは,ブロックしようがしまいが死ぬ運命にあるのです.
更に,誰かの場に嫌なクリーチャーがいた場合,他のプレイヤーに攻撃を通してもらうこと,つまり政治を行うことでそのクリーチャーを排除できる可能性があります.果たしてこの交渉を相手が飲んでくれるか確約することは出来ませんが,これは多人数戦を遊ぶ上で,非常にエキサイティングな点だと言えるでしょう.
ここまで相手のクリーチャーを弱体化させることについて言及してきましたが,実はこの能力で一番面白いのは,ハパチラ自身に-1/-1カウンターを置くことが出来るという点です.これにより,攻撃を通すことが出来れば確実にもう一つの能力に繋げることが出来るのです.
-1/-1カウンターが置かれるプロセス
どこかが空いていればいいのは4人戦ならでは
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2.3.2 第2の能力:蛇の生成
蛇トークン
2番目の能力は,-1/-1カウンターをクリーチャーの上に置いたときに,緑の1/1の接死を有する蛇トークンを生成するというものです.
ハパチラの場合,第1の能力で-1/-1カウンターをどこかに乗せることで第2の能力が誘発し,蛇を生成することができます.この蛇は接死を持っているため,他のクリーチャーがこちらを攻撃するのを阻む優秀な盾となってくれます.また,攻撃に転じる場合でも,接死を持つクリーチャーはブロックしたくないでしょう.ただし1/1であるため,攻撃性能は高くありません.
また,前述したようにハパチラは自分の第1の効果で自身に-1/-1カウンターを置くことが出来ます.つまり,毒物の侍臣たるハパチラは,蛇を生成するためならば自らの皿に毒を盛ることも厭わないのです.
この能力の素晴らしいのは,蛇を生成する能力が,第1の能力で載せた場合に限らないということです.したがって,自分が-1/-1カウンターを置くことに成功したならば,それがどんな手段であれ蛇を生成することが出来ます.例えば《黒の太陽の頂点》でも,大量の蛇を生成することが出来ます.
自ら毒を食らうことで蛇を生成することも可能
一方で,蛇の生成条件は少し複雑です.
まず,-1/-1カウンターはあなたが乗せた場合に限ります.あなたが乗せるという意味は,あなたのコントロールしている呪文や能力によって-1/-1カウンターが置かれる場合ということです.あなたがコントロールしていない,例えば対戦相手のクリーチャーや呪文によって-1/-1カウンターがどこかに置かれたとしても,ハパチラの能力は誘発しません.
1体のクリーチャーの上に複数個のカウンターを一度に置いた場合では,能力は1度しか誘発しません.一方で,複数のクリーチャーの上に-1/-1カウンターを一度に置いた場合,能力はそれらのクリーチャー1体につき1回ずつ誘発します.
前述した《黒の太陽の頂点》では,場にいるクリーチャーの数に等しい-1/-1カウンターを生成することが出来ますが,Xの値をいくら大きくしても蛇の数に変わりはありません.一度に何体に置いたかが重要で,何個置いたかはカウントしないと覚えておけば問題ないかと思います.勿論,-1/-1カウンターを置く行動を何度も繰り返せば,その分蛇を生成することが出来ます.
また,間違いやすい点として,例えば頑強を持つクリーチャーや《不気味な戯れ児》といったクリーチャーが-1/-1カウンターが置かれた状態で戦場に出ることでも,第2の能力は誘発します(これはwikiに記載されている通りです).勿論,《媒介者の修練者》のようなクリーチャーでも,蛇を生成することが出来ます.
従って,-1/-1カウンターを置くカードすべてが,蛇の生成につながるという利点があり,相手のクリーチャーを排除しつつトークンを並べることで大きなボードアドバンテージを得ることができます.特に戦闘を介するクリーチャー主体のデッキに対しては,絶大な効果を発揮します.
更に,並べた蛇を《十字軍》じみたカードで強化すれば,自然と勝利は見えてくるでしょう.《獣使いの昇天》や《清められし者、せし郎》,《孔蹄のビヒモス》は,こうしたタイプのいくつかのハパチラデッキで目にすることができる,エンドカードの一つです.
単純にクリーチャーの数を数えればいい
これらの条件でも第2の能力は誘発する
蛇を強化するカード達
しかし,competitiveな,いわゆるガチなEDH,cEDHにおいて,ハパチラは通用するのでしょうか.cEDHでクリーチャーを場に多く展開し,殴り倒すことで勝ちに行くようなことが許されるのでしょうか.恐らく許されないでしょう.《織り手のティムナ》+《トリトンの英雄、トラシオス》のような強力なジェネラル達,また無限マナや無限ダメージ,無限ドロー,さらには《タッサの神託者》に繋がるようなコンボに対して,ハパチラのようなジェネラルが付け入る隙が本当に存在するのでしょうか.
心配ありません.competitiveなEDHこそ,ハパチラが最も輝く舞台なのです.
強大なジェネラル達
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3. ハパチラ+ヨーグモスコンボ
どうしてハパチラがcEDHで通用するのでしょうか.
それは,ハパチラにはとっておきの切り札であるコンボがあるからなのです.
このコンボは実質1枚コンボであり,安定して最速3~4ターン目に決めることが出来,また緑というカラーにより妨害をケアする選択肢も多いことから,cEDHにおいても通用すると考えています.また,このコンボは強力さだけでなく派手さも兼ね備えており,カジュアルにおいても採用する価値のある,面白いコンボだと思います.(実際,多くのカジュアルなデッキリストでもこのコンボは採用されています.)
これからコンボの解説に移りますが,このコンボを説明していく中で,あたかも序盤に相手を減速させる程度のおまけでしかないと思われていた第1の能力の重要性,そして何故ハパチラ自身が毒を食らうのか,その真相が見えてきます.
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3.1 コンボ概要
このコンボに必要なのは,ジェネラルであるハパチラを除けば,《スランの医師、ヨーグモス》の1枚だけです.
僕のように昔(といっても5版ですが)からマジックを続けている人間には,ヨーグモスに関して語りたいことが本当に山ほどあります.しかしながら,今回のコンボに使用するのはヨーグモス第2の能力だけです.
これまでのハパチラの能力に関する解説を読んで下さっている方々には既にお分かりかもしれませんが,ハパチラが場にいるときにこのヨーグモスの能力によってヨーグモス以外のクリーチャーと1点のライフをコストに-1/-1カウンターをどこかに置くと,蛇が生成されます.そしてその蛇を生贄にまたどこかに-1/-1カウンターを置き……と,クリーチャーやライフが枯渇するまでこの工程を繰り返すことが可能なのです.
図を使ってもう少し詳しく説明しましょう.
ファイレクシアン・ドレッドノートが場にいれば驚異の12枚ドロー
先ず,ライフを1点支払い,何らかのクリーチャーを1体生け贄に捧げることで,クリーチャー1体を対象としてヨーグモスの能力を起動します.
-1/-1カウンターを置くことに成功したならば,同時にカードを1枚ドロー出来,-1/-1カウンターを置いたことによりハパチラ第2の能力が誘発します.これにより,蛇が生成されます.
次は,この蛇を生け贄に捧げることで,もう一度ヨーグモスの能力を起動することが出来ます.
従って,ハパチラとヨーグモスが揃えば,場のクリーチャーを一掃しつつ,ドローを重ねることが出来るのです.
ヨーグモスの能力はインスタントタイミングで起動することが出来るため,この2人が揃った時点で,クリーチャーに人権は無くなります.場に出たときに仕事をするタイプのクリーチャーであっても相手に何枚もドローさせてしまう結果になるため,軽々には展開できない状況を作り出すことが出来ます.
前述したハパチラ第1の能力では,相手の場にタフネスが3以上のクリーチャーがいたら攻撃が出来なくなってしまいます.
このコンボにとって,そういった状況は寧ろ好都合なのです.相手の場にタフネス3以上のクリーチャーが存在するということは,即ち3枚ドローすることが出来るということだからです.3人の対戦相手すべてがそのようなクリーチャーを壁として展開しているならば,それらのクリーチャーを排除しつつ,9枚以上のカードをドローすることが出来ます.
従って,このコンボの存在自体が大きな抑止力となり得るのです.例えこちらの手札にヨーグモスいなかったとしても,相手は壁としてのクリーチャーを展開することを躊躇するかもしれないのです.
これだけでも,殴り合いが多い環境では,大きな優位に立っているといえるでしょう.
しかし,そうやって相手が一向に場にクリーチャーを展開しなければ,こちらもこのコンボを完成させることは出来ません.クリーチャーを使わないようなコンボ,あるいはクリーチャーを使っても一瞬で決めてしまえるようなコンボデッキが相手であれば,このコンボを揃えたとしても意味はありません.
例えば, 《Phyrexian Devourer》と《トリスケリオン》,《壊死のウーズ》を使ったコンボなどでは,こちらのヨーグモスの起動型能力に合わせて起動型能力を重ねられるため,相手のライブラリー次第ではありますが,殆どの場合こちらのライフが尽きる方が早いでしょう.残念ながら,ハパチラヨーグモスのコンボは如何に強力だったとしても,それ単体で勝利することは出来ないのです.
つまりcEDHの場では,(1)このコンボを継続させるための-1/-1カウンターの置き場所,(2)フィニッシャーの2つが追加で必要になります.
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3.2 -1/-1カウンターの置き場所
このコンボを継続させるためにこちらが-1/-1カウンターの置き場所を作る必要があります.残念ながら,ヨーグモスは自身が人間であるにも関わらずプロテクション(人間)を持っているため,自分自身にカウンターを乗せることが出来ないのです.ここで注目されるのが,不死を持ったクリーチャーや,《葬儀甲虫》のようなクリーチャー達です.
先ず,何らかのクリーチャーを生け贄に,不死クリーチャーに-1/-1カウンターを1個置きます.この時,不死クリーチャーを生け贄にして何らかのクリーチャーの上に置いてもいいです.この場合は,不死クリーチャーを生け贄にハパチラにカウンターを置くことで,
不死クリーチャーは死亡しますが,不死が誘発します.これにより,不死クリーチャーは+1/+1カウンターが置かれた状態で場に戻ります.
この不死クリーチャーに対して再びヨーグモスの能力を起動し,-1/-1カウンターを置くと,+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが対消滅し,最初の状態に戻ります.
従って,《若き狼》のような不死を持つクリーチャーがいれば,相手の場に左右されることなくライフとライブラリーが続く限り何度でもヨーグモスの能力を起動することが出来るのです.他にも前述した《葬儀甲虫》や《森林の勇者》,《サディスト的喜び》のようなカードがありますが,これらについてはまたの機会に説明したいと思います.
とはいえ,ライフは40点と有限であり,無限にドローし続けることは出来ません.ゲームを速やかに終わらせるためには,フィニッシャーが必要になります.
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3.3 フィニッシャー
そこで登場するのが,《本質の管理人》や《ズーラポートの殺し屋》のようなクリーチャーです.前者は蛇を生成する度にライフを1点得ることができるため,ライフの損失を気にすることなくドローを重ねられますし,後者であれば蛇を生け贄に捧げる度にライフを対戦相手から吸収することが出来ます.
EDHは100枚デッキでライフは40ですから,40枚ドローして勝利するのは難しくないでしょう.しかもズーラポートと不死クリーチャーの組み合わせであれば,2回に1回は不死クリーチャーも死亡するため,もっと少ない枚数のドローで勝利することが出来ます.
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3.4 何故1枚コンボなのか?何故ハパチラは自ら毒を食らうのか?
何故こんなにもパーツを必要とするのに,このコンボがジェネラルを除く1枚コンボだと言えるのでしょうか.
それは,仮にヨーグモスしか手札にいなかったとしても,場のタフネスがすべて失われる前にドローを続けることでコンボパーツを集めることが出来るから.これにより,最初から統率領域にありサーチの必要がないジェネラルを除いた実質1枚,合計6マナでコンボを達成することが出来ます.
更に,チューターは強力なサーチに変わります.本来,目的のカードはデッキトップにしか置けませんが,このコンボが始まってしまえばすぐに手札に加えることが出来るからです.
また,浮いているマナが全くなかったとしても,《魔力の墓所》や《モックス・ダイアモンド》,《Elvish Spirit Guide》などの0マナで使用できるマナ加速によって,不死クリーチャーやズーラポートといった1マナや2マナのコンボパーツを展開することは難しくありません.特に伝説のクリーチャーをコンボパーツとする性質上,《モックス・アンバー》を使用でき,ドローを重ねる性質上,《モックス・ダイアモンド》で捨てる土地には困りません.
ヨーグモスさえあればこれらのカードにより勝ちに行ける
しかしながら,このコンボには致命的な欠陥があるようです.
それは,このコンボが最初の1つ目の-1/-1カウンターを置くのに必ず1体の生贄を必要とすることです.実は,このコンボの始動には,正確には少なくとも「ハパチラ」+「ヨーグモス」+「生贄」の3つが必要になるのです.幸運にも対戦相手がハパチラが第1の能力で蛇を生成するエサを提供してくれていればいいのですが,このコンボを知っているならば,クリーチャーをむやみに展開することはしないでしょう.仮にこのコンボを知らなかったとしても,自分のクリーチャーが蛇に変わることを許容する人は多くはないでしょう.
では,そんなときにどうやって生贄を確保すればよいのでしょうか.
もうお分かりですね.他に全くクリーチャーが場に存在しない場合でも,ハパチラは自ら毒を食らうことで,蛇を,生贄要員を確保することができるのです.この第1の能力が,このハパチラヨーグモスコンボを実質1枚コンボとすることを可能にしているのです.
当然,より多くの呪文を早い段階で唱えるために,あるいはもっと単純にヨーグモスを3ターン目に唱えるために,1マナのマナクリーチャーを多く採用し,ヨーグモスの生贄にはそのクリーチャーを使用するといった流れを意識してデッキ構築をするかと思います.
しかしながら,必ずしも理想的なハンドが揃うとは限らず,マナクリーチャーが早々に排除される危険もあります.そういった状況でも第1の能力により,コンボを完成させる望みが消えることはないのです.実際僕も何度かこれに救われています.
コンボ成立の為には自ら毒を食らうことを厭わない,このハパチラの無私の精神が,ハパチラヨーグモスコンボを1枚コンボとして成立させているのです.
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4. 最後に
これまで,ハパチラがどういうクリーチャーなのか,どういうEDH構築が考えられるか,また切り札となるコンボを紹介しました.
正直,cEDHでどう戦うのかという具体的な話にまでは至りませんでしたが,この1枚コンボと緑黒というカラーにより,相手の妨害を弾くことが出来る《夏の帳》や《運命を紡ぐ者》と言ったカードや前述した優秀なサーチ,ドロー,相手の妨害置物を破壊できる呪文に多くの選択肢があるというだけで,cEDHで戦えるポテンシャルがあることはお分かり頂けたのではないかと思います.
妨害対策
最後に,このハパチラを使っていて最も楽しいと感じる瞬間について紹介して,この解説を締めくくらせて頂きたいと思います.
それは,相手のコンボを封じたとき,いやそれ以上に相手のコンボに被せて勝利できた瞬間です.
例えば,対戦相手が《タッサの神託者》を召喚し,能力にスタックして《Demonic Consultation》を撃ちました.デッキが空になります.
このときハパチラヨーグモスが揃っていたとしましょう.また,相手の場には神託者以外の青のパーマネントがなかったとしましょう.つまりこの時点で相手の青信心は2です.自分の土地はすべて寝ていて,だからこそ相手はコンボを始めたのです.
神託者を排除し,2枚ドローします.信心0です.そこで《有毒の蘇生》を引くことが出来れば,ライフをコストに相手の墓地のカード1枚をトップに戻すことが出来ます.すると,相手は占術0で勝利条件を逃してしまいます.ここから相手が再び勝利を目指すのは難しいのではないでしょうか.
また,このドローの中に《召喚の調べ》があれば……場にいるクリーチャーの数にもよりますが,召集で唱えることで,そのままコンボパーツを揃えて勝利することも可能なのです.逆に他のパーツが揃っていれば,《召喚の調べ》により,相手のコンボへ他のプレイヤーが妨害を撃ち尽くしたタイミングでヨーグモスを持ってきて,勝利することも可能です.
勿論これほどの手札が揃うことは稀ですし,相手もあらゆる妨害に備えたうえでコンボを始動しようとするでしょう.《沈黙》で全く呪文を唱えられなくされてしまうこともありますし,そもそもハパチラヨーグモスは揃った段階で殆どコンボを決めてしまえるため,この2体が揃った状態を維持されることは殆どありません(《召喚の調べ》や《ネクロマンシー》等でインスタントタイミングでパーツヨーグモスを揃えることは可能ですが).
したがって,今回紹介したような状況は滅多におこらないといっていいでしょう……しかし,だからこそ決まったときの喜びは大きいのです.
実際,これほど完璧な状況ではないにしても,cEDHにおいて相手の隙をついてコンボを決めること以外でゲームが終わることは稀です.つまり,cEDHでは誰もがこうした勝利の成就を狙っているのです.
オラクルコンボも,上から勝ってしまえばいいのだ(調べは新絵もいい)
cEDHはコンボがすぐ決まってしまう環境だと思われがちですが,実際には妨害に次ぐ妨害,適切なコンボのタイミングを伺うひりつくような時間……これらがゲームを支配しています.
先にコンボを決めなければ相手に出し抜かれ,急ぎすぎれば妨害の餌食になる……であれば妨害を吐き出させるために他のプレイヤーに飛び出しを強要するか,あるいは自らサブプランを準備しそこに妨害を撃たせたところでメインを持ち出すか……
そんな知略や謀略,勝利への渇望の苛烈にも冷静なぶつかり合いが1対1ではなく,4人のプレイヤーの,いやプレインズウォーカーの間で行われるのです.面白くないわけがないでしょう.
魔法のぶつかり合いこそがマジックの醍醐味だ!
相手の炎の魔法がこちらに到達するまでの時間,相手の召喚したクリーチャーがこの身を切り裂くまでの時間,その間にどれだけの魔法を唱え,逆に相手を打ち倒すことが出来るのか……その瞬きする程の時間を切り取ったゲームがマジックだと僕は考えています.
こうした攻撃魔法や妨害魔法の応酬こそが,マジックの醍醐味と言えるのではないでしょうか.そしてその醍醐味を最も深く味わえるのが,EDHなのではないでしょうか.
EDHでもcEDHでも,この素晴らしいフォーマットをより多くの方に楽しんで貰いたいと思います.(ハパチラでなくても)
最後はハパチラと全然関係ない話になりましたが,では,ハパチラのEDHデッキ全体に関する詳細な解説は次回以降にして,今回はこのあたりで締めくくりたいと思います.
Sho Ecru
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