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秋山黄色「SKETCH」
ゴールデンカムイを録画しては見るようになり、その録画のテストだのついでだので他のアニメも暇があれば見るようになった。(何故か金カムのネタバレがあります注意)
その中に僕のヒーローアカデミアがある。その昔はジャンプで追い単行本も出るたびに買っていたが、今は全く追えていない。それらの代わりのような気持ちで見始めた。
見ていて思わず気に入ってしまったのが、そのエンディング曲である「SKETCH」だった。
「居なくならないでね」
「君こそね」
能天気に約束して肩を叩く
きまってどちらかが破るのさ
今回もまた僕じゃなかっただけ
この曲が僕の心に引っかかったのには理由があった。おおまかに分けて、その理由は3つ。
ひとつは、この曲を聞くようになった時期に重なって、ある人を泣かせてしまったことだ。Twitterでその人と繋がっていたのだが、その繋がっているアカウントを消そうか悩んでいるツイートを軽い気持ちでした。
後日その人がひどく落ち込んでいるツイートをしていたので、アカウントを消すにしてもこのまま見なかったことにしてしまうのは後悔しそうで、声をかけた。そしたらその落ち込んでいる理由が僕だった。
居なくならないでね。君こそね。そんな約束したつもりはないしこれからもする予定はないけれど、でも僕から繋がりを切るような真似をして悲しませるようなことは、二度としたくないなと思った。それをするなら僕が切られる側がいい。
人から向けられている感情を、僕が鈍い故に軽んじる傾向がある。その人はとても素直に伝えてくれるから、ちゃんと大切にさせてもらえる。
この騒動ネタ、何度も引っ張ってしまって申し訳ないなあと思いつつ、僕のようなカス野郎に泣くほどの感情抱いちゃって可哀想と思いつつ、でも自分のエゴだと言いながらもそれを素直に打ち明けてくれたのが嬉しくて、僕にとっては宝物の思い出なのだ。僕はその素直さが好きだ。すまんな。
ふたつめは、金カムの話になってしまう。そこはヒロアカにしろやって感じだがすまない、話させてくれ。
「居なくならないでね」
「君こそね」
能天気に約束して肩を叩く
きまってどちらかが破るのさ
そんな当たり前を包むものが愛なんだろう
ヒロアカのエンディングで聞いていて「あぁ、いいなこの曲」って思い、フルで聞いてひっくり返ったのがこの「そんな当たり前を包むものが愛なんだろう」という歌詞だ。
そう……愛別離苦なんて言葉があるように、別れというものは人生でありふれたもので、その苦しみや悲しみも当然のようについてくる。米津玄師はアイネクライネで「今痛いくらい幸せな思い出が いつか来るお別れを育てて歩く」と歌ったくらい普遍的なものだ(急に別の曲の話をするな)。
「離別という当たり前を包むものが愛……?」と考えた僕、すぐに思いついたのが、金カムの最終話でお出しされたヴァシリの「山猫の死」だった。
狙撃手として言葉が無くとも通じ合った、尾形百之助とヴァシリ・パヴリチェンコ。僕はてっきり、ふたりは完全に勝負をつけて話が終わるのだと思っていたのだが、ふたりの勝負はヴァシリが生死不明のまま幕を閉じ、尾形は最期、自分の目を撃ち抜いた。
その後、作品内でヴァシリが生きていることを教えてくれたのが、彼が描いた「山猫の死」という絵。この絵のモデルは明らかに尾形だった。
この絵については本当に、読む人によって様々な解釈があるのだが、尾形とヴァシリを繋げる、あるいは包む、あるいは同じ枠の中におさめる額縁のような、そんな解釈がこの歌詞によってもたらされた。それが、ぴたりと当てはまる表現だと思ったのだ。
しかもこの曲、タイトルがSKETCHな通り絵に関連した歌詞になっていたりするので、僕にしてみれば概念ドンピシャだった。
3つ目は、曲全体の印象の話になる。
すみません、そもそも秋山黄色という方を全く存じ上げていないのですが、この字の並びがすごく秋っぽいなと思っていました。黄葉に染まる秋の山が連想されて。
だから、SKETCHという曲を聞く度に秋を感じるのは、この名前のせいであろうな、と思っていた。
ねえ幸せだってちょっとくらいは痛みがするから
不幸くらいでは離せない 分かるかな
でもなんかちげえなって、紅葉がはらはら落ちる木の下を歩いていて思ったのですよ。この曲が僕に抱かせてくる感情が、秋という季節から感じているものと同質だなと感じたのです。
秋。多くの人にとって、どんな季節なのだろう。
僕にとっては美味しい恵みが多く、そして紅葉や花が美しく、さらには夏のように暑すぎず冬のように寒すぎない素晴らしい季節だと思っている。
でも、このあとにあるのは冬なんですよね。寒くて厳しくて美しい冬。
満たされて、幸福で、そして時が経てばそれらに終わりが来る。
今の幸福を噛み締めながら、先の別れを見据えてる感じがこの曲のイメージだった。そのあたたかな気持ちと切なさが、まるで秋だと僕は思っていた。