祝28周年
物語のきっかけは今年の夏だったらしい。
僕は米津玄師のアルバム「STRAY SHEEP」を、誕生日にかこつけて友人に贈った。
僕とその友人は共通の出来事で、心に傷を負った状態にあった。僕がそのアルバムのはじめにある「カムパネルラ」に少しばかり救われていたので、そうなってくれたらいい。他にも多くの曲を聴いてそれらに少しでも救いや慰めや希望を見出してもらえたらと。
そしてつい数日前のこと。その友人からクリスマスプレゼントの名目でアルバムが贈られた。すぐに「STRAY SHEEP」のお返しだと分かった。
BUMP OF CHICKENの「orbital period」だった。その名前の意味は「公転周期」だと、添えられた手紙で教えてくれた。友人が10代だった17年前に初めて聴いて、感動したんだというエピソードと一緒に。
このチョイスに僕はニヤけた。なんせ今、二次創作するほど「チ。−地球の運動について−」に熱を上げている。地球の運動、つまり公転運動の話だ。最近は「アルビレオ」という語感に参って、「銀河鉄道の夜」を読み直し、そのセリフを二次創作の中でさらにオマージュしてみたりしていた。二次創作以前にとにかく星にどっぷり浸かっていたのは、彗星を見て彗星に心を囚われてしまったせいもある。
話が脱線したが、もう少し脱線させてほしい。
友人は別の場所で米津玄師の「毎日」の歌詞を引用した話をしていた。
「月曜火曜水曜木曜金曜土曜日曜。どっちが先か分からないけど、これ星の名前と揃えようぜってした人すげーなと思う」
「毎日毎日どこまでいっても星の名前がついてくる」
そんな感動を教えてくれた。
では、話を戻そう。
僕は上記のことを踏まえた上で「orbital period」を検索してみた。
出てきたのがこれだったので読んでほしい。特に、今が28歳の人。
僕は今年の夏に28歳になりました。そう、あの「STRAY SHEEP」を友人に贈ったあのあたり。
たぶん、米津玄師のライブに当選したとき以上に興奮した。もうどうにかなりそうでTwitterに興奮を書き散らし、誰も相手してくれないと気づいてアルバムを贈りあった友人にLINEした。友人は仕事中で、当然返答はすぐに来ない。
ふと、もしかしてこの「28年」の意味をわかってて贈ってくれたのでは? と思い当たった。
結論として友人は、このことに全く気づいてなかった。話を聞いて、僕と同じくらいブチ上がっていた。曜日の話までして匂わせているようにしか見えなくなっていたのに、ただの運命の運び屋だった。
いや、ただのと言うのはちょっと違うかもしれない。
この話の当然の流れとして、「じゃあ自分たちの生まれた曜日は何曜日だったんだ?」となる。
ふたりとも月曜日だった。
10代前半の頃。希死念慮に悩まされていた僕は「ハレー彗星を見るまでは死なない」と決めた。自分との約束だった。
今年の秋、やっぱり僕は希死念慮に悩まされて、深夜に徘徊しながら木星を見上げていた。子供の頃に天体望遠鏡を通して見た、ガリレオ衛星を引き連れた縞模様の木星を思い出した。紫金山・アトラス彗星を見ようとその時に決めた。
ようやく双眼鏡で見たその彗星はあまりに淡くて、なのに今も、僕の心の中で希死念慮を払い除け続けてくれている。
この彗星の一連で僕が感じたのは、「人生には伏線が張り巡らされてるらしい」ということだった。
アルバムから28年周期についてまでの出来事は、僕のその考えをさらに強めてくれた。
人によっては本当に意味も驚きも感動も、なにもないことかもしれない。
けれど僕は幸いにも、同じような出来事に感動した人からこの28年周期について文章で教わり、その感動を運んでくれた人も同じように感動してくれる人だった。
こんな面白いことが起こる人生なら、もう少し頑張って続けてみたいと思えた。
あと、「orbital period」はすごい名曲揃いすぎる。最高です。