見上げる

空を見上げるのが好きなんだけど、感情の面においても見上げるような感情が好きなようだ。

米津玄師「M八七」のMVが解禁されました。初っ端から歌い出しの美しさに引き込まれる。

遥か空の星が 酷く輝いて見えたから
僕は震えながら その光を追いかけた

M八七

米津玄師の横顔と、ブルーモーメントの美しさ。
この時点で思い出したのは「チ。」だった。星を見上げる人間の眼差しと、その人間の心を描き出した漫画だ。
その星を見るための目を片方潰されたバデーニと、作中でとびきり目がいいオクジー。
連想するように頭に浮かんだのは、ゴールデンカムイの尾形だった。山猫と呼ばれた彼。やまねこ座の星は、山猫の視力がなければ見えないなんて言われる。スコープ無しで狙撃するほどの目を持ちながら、彼は最期にその目を自ら撃ち抜いた。

君が望むなら それは強く応えてくれるのだ

ビルの壁に重力無視で座る米津玄師。
「それは強く応えて」まで聴いた時、「それは強く応えてくれるだろう」という言葉で出てくると思っていた。米津玄師ってそういう言葉選びをする人だと思っていた。それを蹴散らすような裏切りで、この言葉が出てきて衝撃だった。

今に枯れる花が 最後に僕へと語りかけた
姿見えなくとも はるか先で見守ってると

狭い部屋で米津玄師は花と対峙する。
僕の目の前にも花があった。それもほとんど花を咲かせ終わり、あとは枯れるだけという体のハオルチアの切り花だ。

痛みを知る ただひとりであれ

これほど「ヒーロー」を的確に言い表す表現が他にあっただろうか?
Twitterで「優しさとは相手の地獄を想像できることだ」なんてツイートを見た。人に手を差し伸べられる人とは、その苦痛を知りながら自分もそれを背負おうとする者だ。
「ただひとりであれ」ということはつまり他に犠牲者を出さないということだ。痛みを知るのは自分だけでいいと進み出る強ささえ感じてしまう。
泣けてくる。僕もそうありたかったな。


僕の生きる理由は「返報」のためだ。報われないその人のために生きる。同時に、「復讐」もあるのだと自覚した。
「人としてどうなの」なんて言われたことあって内心(そんなことが言えるあんたはどうなんだよ)と思ったもんだけど確かに、僕は人でなしだ。人でなしでいいと思う。人でなしに復讐するんだからそれ以上に人でなしになる必要さえ感じてる。目には目を歯には歯を復讐には復讐を、クズにはクズを。あの人の葬式に笑顔で参列してやるのだ。涙一粒でさえくれてやるものか。そのためにも生きようと思った今の僕にはなんだか眩しくて。でもまあ胸を張ってクズでいようと思う。こんなことをできるのは僕しかいないのだから。
あー畜生。殺人で罪を問われて人生棒に振るよりゃいいと思ったがしっかり人生振り回されてるじゃねえか。まあ憎悪の感情くらいは割いてやる。

なんていう個人の事情と感情も聞けばぶっ飛ぶような映像美と、宇宙をも感じさせる壮大さ、神々しさまで感じる曲。
最後、夜明けに照らされる霞んだ街並みとふわふわ浮かぶ人影。人ではなく船だったけれど、そっくりな風景の絵を頂いたことがある僕にとって非常に印象深いものとなった。

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