思惑
私はたまに取り憑かれる。
一つの事柄や想いに。ある人への気持ちに。一度私の心臓から出て、湾曲し、また突き刺さる矢のような自分への嫌悪感などに。これを取り払うのはなかなか難しいもので、必要なのはまた次の思想が頭を支配するまでの時間だ。それまでは忌まわしいハエのように私の頭の周りをぶんぶん飛び回る。
カチコチ、チクタク。
メトロノームでの練習は嫌いだった。私のバイオリンの教え子もとても嫌がる。時間を刻むようなその音は誰しもにいくぶんかは与えられている形のないそれを音で手ざわりのある何かにする。
取り憑かれた頭はなかなか、この時間が、味の薄れたガムのように伸びて、吐き気を催す。
ムカムカと嫌な気持ちが肺いっぱいに広がると息がし辛くなる。私はなるべく脳に酸素を送ろうと、思い出しては短い深呼吸をする。
息を吐くたびにムカムカがほんの少しだけ鼻から抜けていく気がする。
取り憑かれるのは大抵暇な時や、空想してしまう時だけだ。
そして、今のように寝ることに子供の時のような不思議な不本意さを感じ、意味もなく起きてしまっている時だ。
スー ハー
空気が澱んでいる。
寒いが、短い間だけ窓を開けることにしよう。
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