見出し画像

父と祖母と私の豚汁

私の父は料理ができる。

できるといっても基本的に自分の好きなものしか作れないし、作らないタイプだ。例えば、キャベツ炒め、焼きそば、フルーツサンド、チャーハン。切ったり焼いたり炒めたり、わりかし簡単な調理方法で出来るものが多い。その中でも一番気に入っているのが冬になると作り出すのが豚汁である。

この豚汁は元をたどると、祖母の豚汁を自己流にアレンジしたものだろう。仕事がら泊まり込みが多かったせいか、職場に材料と鍋を持ち込み、同僚にふるまうことで研究してきた「ちょうどいい」豚汁である。

ちょうどいいとは、特別美味しくもなくまずくもない、普通においしい、という意味である。

この豚汁だが、私も再現しようとしたことがある。
一人の下宿先、冬の寒さに望郷の念がよぎってしまった日だ。ちなみに地元はさらに寒いので帰りたくはない。

どうしてもあの豚汁が食べたくなり、元祖豚汁の作りてである祖母に電話でレシピを聞いた。ただ祖母の豚汁は美味しすぎて真似できない。やはり経験の差であろうか。その微妙な塩梅がまだ再現できないのだ。

その点、父の豚汁は同じ具材、同じ調理方法で作れば大体同じ味になる。その点も気に入っているがこれほどまでに感謝したことはなかった。

材料は、豚肉・大根、人参などの冷蔵庫にある野菜・里芋じゃがいもさつまいも。……そう、私の家の豚汁は、鍋の半分が芋で埋まるいわば「いも汁」なのである。

これがまたほんのり甘くて美味しいんよな~、と思いながら具材を適当に切って、豚肉、大根、芋、芋、芋を入れる。とりあえず芋が入っていれば後はなんでもいい。
適度に煮込めば完成だ。父もおそらく同じ方法で作っていると思われる。

そんな豚汁を食べて、学生時代は冬を乗り切っていた。

そして今日。くそ暑い梅雨の最中にも関わらず、久しぶりに豚汁を作ってみた。今度は父の監修のもとで。

具材が大きい!先に根菜から入れろ!おまえ料理をなめてんのかっ!
など色々と言われながら、でも全部入れて煮込めば同じじゃんと無視する。
煮込み終わるのに20分ほど。父が味見をすると、……まあいいんじゃない、と言いながら味噌を足す。なんでや。

次は祖母が来て、ちょっと濃いんとちゃうか?と水を入れる。そんなこんなのうち、バカでかい鍋一つが満杯となった。

結局豚汁は父・祖母修正のもと食卓へ上がり、仕事帰りの母からも美味しいとのお言葉をいただくことができた。私は豚汁は雑に作っても、途中で家族が手を出してきても美味しく作れる料理だということを再認識し、しばらくはもう作らんとこ、と心に決めた。

#今日のおうちごはん

いいなと思ったら応援しよう!

ななしのはなし
いただいたサポートは執筆のお供にさせていただきます。

この記事が参加している募集