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朝、お湯を沸かすということ

しゅっしゅっ、と水が沸騰する音で目が覚める。母がやかんでお湯を沸かているのだ。

我が家には電気ケトルや電気ポットがない。厳密にいえば壊れて以来買い直していない。なので朝沸かしたお湯を電気じゃないポットや魔法瓶に入れ、夜まで温かいお湯を飲めるようにする。

朝いちばん最初に起きた人、といっても大抵母がお湯を沸かすのだが、早起きした日には私が沸かすこともある。だがこの方法は正直めんどくさい。お湯が沸くまで10分ぐらいかかるし、その間は台所を離れられないからだ。

だからその間、暇つぶしにぼーっとやかんを見ている。
形は丸に似ているけど底が潰れているな、取っ手のところに黒い光沢が出てきた、黒と言えば父のナスがいい具合に漬かっているな、よしかっぱらおう。

お湯を沸かすのは嫌いだが、とりとめのない思考が浮かんでは消えてくるこの時間は結構気に入っている。

沸いたお湯をポットに入れる。とぽとぽとぽっ。
残ったお湯を起きてきた家族のコップに入れて回る。そして何気のない雑談が始まる。

我が家の場合、朝のお湯を沸かすことでゆるーく会話するきっかけが生まれるのだ。


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ななしのはなし
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