もったいないにも程がある
私の父は使わなくなったものを他の道具として転用させる力があるらしい。
例えば、母の誕生日にプレゼントして使わないと言われたスマホスタンドは、父のPCスタンドに。何年も前に買ったヨーグルト培養キットは計量カップに姿を変えた。
そんな父の日曜大工、最近ではDIYに含まれるのかもしれないそれは、さらなる進化を遂げている。そして本日、思わず目にしてそうはならんやろ、と思った物(ブツ)を紹介したい。
梅雨の正午。雨は降りそうになかったが、風は生暖かく湿度も異常に高い。私は寝苦しさから午睡から目覚め、居間に向かった。居間には誰もいなかったが、祖母がちょうど外から帰ってきたところだった。
ガラガラ、ガシャンっ。父が玄関の開けピンチハンガーごと洗濯物を投げ入れる。それに対して祖母がお小言を言う。いつもの光景だ。
「〇〇ちゃん、洗濯物取って来て」と言われたので素直に取りに行く。あと数歩進んだら居間なのだからそこまで運んでくれればいいのに、とあきれ半分でピンチハンガーを掴んだ。
……?
……充電コードが巻き付いている……?
そこにはピンチハンガーを補強するように巻き付いている、スマホの充電コードがあった。父や私の使っているiPhone用の充電コードである。
「……ばあちゃん、これスマホを充電するやつやんな?」
「そうなん?お父さんがしたらからばあちゃん知らんねん」
父がこの補強を行ったとの情報を得たので、いてもたってもいられず聞きに行く。いったいどんな理由で充電コードを使ったのか。私には考えつかないアイディアがきっとあったのだろう。
「父、洗濯物干すやつにスマホのコードがからまってるんやけど」
「あぁ、断線したから補強するのに使ったんや」
……?
「え、なんで充電コード使ったん?」
「だってそこに断線したのがあったんやもん。これめっちゃ切れん?」
そういう問題ではない。
しばらく会話したが、本当に断線したコードがそこにあったから、という理由で使用したらしい。
え、ふつう使う?
家にはビニールひももガムテープもあるんやで?そっち使わん?
てかまずスマホの充電コード半年に一回で交換するもの?うち普通に2年くらい使っているけど?
人間こんなにも思考が止まらないことがあるだろうか。
私にはない発想だったので思わず戸惑ってしまったが、おそらく世間一般では切れた充電コードでピンチハンガーを補強するのは常識なのだろう。
でも思わずつぶやいてしまった。
「もったいないにも程がある」