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ハイライト! 2020新作映画~2月編

鑑賞した2020年新作映画の中から、
ハイライトとなる作品を、毎月気ままに備忘録&ご紹介。(一部ネタバレを含みますので、予めご了承下さい)

『サヨナラまでの30分』

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2020年1月24日日本公開/114分/日本

あらすじ
メジャーデビューを目前に解散したバンド「ECHOLL」。1年後のある日、突然見知らぬ大学生・颯太(北村匠海)が現れ、メンバーのヤマケン、重田、森そしてカナに再結成を迫る。――実は颯太の中身は、1年前に死んだボーカルのアキ(新田真剣佑)だった!偶然拾ったアキのカセットテープを颯太が再生する30分だけ、2人は入れ替わり、1つの体を共有していく。(引用:フィルマークス)

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『サヨナラまでの30分』の、ここが良かった話
典型的なお涙頂戴モノと疑っていたら…完全に舐めてました。ごめんなさい。青春音楽映画の、新たな傑作でした。オープニングシークエンスから「あれ?…なんか素敵な始まり方…」と、鑑賞開始さっそく、背筋を正されることになりました。

観る前に構えていた、駄邦画でありがちな「あちゃーっ」となる演出は尽く回避し、丁寧に爽やかに、物語が紡がれていきます。

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特に目を見張ったのが、「撮影」です。カメラのカット使いで、アキと颯太の入れ替わりを表現するのは、古典的ながら「映画ならではのハッタリ」で、個人的に好きな演出。

二人の入れ替わりに音楽演出が相まったライブシーンは、鳥肌を抑えられませんでした。

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また、作品のキーアイテムであるカセットテープも、本作のテーマやメッセージ、キャラクターの感情を伝える上での小道具として、気の利いた素敵な使い方。

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そして、映画のクライマックスは、18年『ボヘミアン・ラプソディ』のライブエイドのシーンよろしく。

「この瞬間のために生まれてきた」とゆう、アキの人生最高のステージを、観客は疑似体験することになります。撮影に、音楽に、役者に、ドラマに、総合的な映画力が高い一本、お見事でした!北村くんも真剣佑も、歌うますぎです。

『ハスラーズ』

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2020年2月7日日本公開/110分/アメリカ

あらすじ
幼少の頃母に捨てられ、祖母に育てられたデスティニー(コンスタンス・ウー)は祖母の介護のため、ストリップクラブで働き始める。そのクラブでひときわ輝くラモーナ(ジェニファー・ロペス)と運命の出会いを果たす。ラモーナや同じクラブのベテラン ダイヤモンド(カーディー・B)からストリッパーとしての稼ぎ方を学び、安定した生活を得ることができるようになる。しかし、2008年に起きたリーマン・ショックの影響で世界経済は冷え込み、ストリップクラブで働く彼女たちにも不況の波が押し寄せることになる。「真面目に働いても生活が苦しいのに、経済危機を引き起こした張本人であるウォール街の金融マンたちは、なぜ相変わらず豊かな暮らしをしているのか」と不満を募らせたラモーナは、ディスティニーやクラブの仲間たちと、世界最高峰の金融地区ウォール街の裕福なクライアントたちから大金を騙し取る計画を企てる。(引用:フィルマークス)

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『ハスラーズ』の、ここが良かった話
「師弟・バディ」ものとして、2人の関係性を愛でる楽しさもありつつ、描かれるのは、ポストリーマンショックの世界で稼げず、生き詰まったストリッパー達がウォール街の男共を相手に、どうサバイブしたのかという、生々しい話。

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予告編から受けるポップな印象とは違い、本編に痛快や爽快感は、あまりありません。

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ストリップクラブとゆうミクロな世界から、資本主義支配下の搾取構図、「金の川」の下流にいる者の、もがきや生き辛さといった、大きな社会問題が炙られてゆきます。

劇中ラモーナの言い放つ「正攻法や、ルールを守ってたんじゃ、ここからは抜け出せない」というリアルは、まさに資本主義の日陰そのもの。間違ってはいない、決して間違ってはいないんだけど…

やがて計画を遂行し、次々と大金をせしめていく彼女達。

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デスティニーやラモーナ達、ストリッパーの栄枯盛衰の描き方、語り口は、なんだかスコセッシ作品を思わせる、余韻と哀愁を残す一作でした。

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単なるガールズ・エンパワー・ムービーにあらず。そして何より男子も女子も、50歳とは思えないジェニファー・ロペス様の美体と神尻を、ありがたく眼に焼き付けました。

『1917 命をかけた伝令』 
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2020年2月14日日本公開/110分/アメリカ

あらすじ
第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。それは一触即発の最前線にいる1600人の味方に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。進行する先には罠が張り巡らされており、さらに1600人の中にはブレイクの兄も配属されていたのだ。

戦場を駆け抜け、この伝令が間に合わなければ、兄を含めた味方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる―
刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる・・・。(引用:フィルマークス)

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『1917 命をかけた伝令』の、ここが良かった話
IMAXレーザーで鑑賞。戦争映画史を更新する1本に出会ってしまいました…!映画は遂にここまできたかとゆう、 1つの到達点にも思える圧倒的没入感と緊張感。

苛烈で美しい戦場追体験は、まさに「地獄巡り」。

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今年のアカデミー賞では『パラサイト』と並んで最も注目を集め、日本でも全編ワンカットの触れ込みで、公開前から大きな話題を呼んでいた本作。

いざ蓋を開けてみれば、なるほど確かに…とりわけ視覚面においては、ロケや美術を含め、明らかに他の映画と一線を画す作り込みで、画面の情報量がとてつもない。

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「攻撃中止命令」とゆう、究極的にシンプルなプロットと、撮影監督ロジャー・ディーキンスによる魔法の撮影の組み合わせは、なんだか神話めいた、特別な魅力を本作に吹き込んでいます。

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また、主人公スコフィールドに襲いかかる数々の受難に加えて、意外な豪華キャストのキャメオ出演など。シンプルなプロットでも観客を飽きさせないよう目配せされた、エンタメとしても隙のない作り。映画史上、ねずみにこんなにもハラハラさせられたのは、初めてかもしれません…

何度でも味わいたい、個人的にはオールタイムベストに連なるような、大事な大事な一本となりました。

『37セカンズ』

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2020年2月7日日本公開/115分/日本

あらすじ
⽣まれた時にたった 37秒間呼吸が⽌まっていたことが原因で、⼿⾜が⾃由に動かない脳性⿇痺となった主⼈公・貴⽥ユマ(佳⼭明)。親友の漫画家のゴーストライターとして働いて⾃分の作品として出せないことへの寂しさや⻭がゆさ、そしてシングルマザーでユマに対して過保護になってしまう⺟・恭⼦(神野三鈴)との⽣活に息苦しさを感じていた。⾃分にハンディ・キャップがあることをつきつけられ、それでも 23歳の⼥性として望んでいいことだってあるはず。そんな思いの狭間で揺れる⽇々。
そんな時、ある出来事をきっかけに、ユマの⼈⽣は⼤きく変わり、⾃らの⼒で『新しい世界』を切り開いていくことになる・・・。本作は、⾃⼰表現を模索しようともがく中で、様々な⼈たちと出会い、思いもよらない展開でドラマティックにひとりの⼥性の成⻑を描いた物語。(引用:フィルマークス)

『37セカンズ』の、ここが良かった話

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主人公ユマを演じるのは、実際に脳性麻痺の病気を持たれた方達の中からオーディションで選ばれた佳⼭明(かやまめい)さん。

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半ばドキュメンタリーと見間違うほど、彼女の可愛さや儚さ、危なげさといった「実在感」は、この映画に驚異的な説得力をもたらし、唯一無二の雰囲気を作品にたたえています。

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まさに映画は、そんな彼女の眼に映る世界そのもの。時折痛々しい、生々しい「視線」を織り交ぜながらも、精一杯「自分」を生きて良いんだという、優しさに溢れた人生賛歌です。

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互いに「自分自身」を受け入れ、「相手」への想像力を持てたとき、子も親も成長する…映画のクライマックスは、枯れ果てるくらい涙を流してしまい、映画館を出る頃には脱水で、喉がカラカラになっていました。

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また映画は冒頭から、徹底した自然主義的な描写と、ユマをとりまく小さな話が続くのですが、終盤の物語的なある飛躍には、ちょっと驚かされるかもしれません。

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この丁寧且つ大胆な映画作りに挑戦したのが、今回が長編デビュー作の監督のHIKARIさん。

邦画に凄い才能が登場してくてました、間違いなく2020年代、最注目すべき日本人映画監督のお一人で、当然今作も必見の一本です。

『ミッドサマー』

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2020年2月21日日本公開/147分/アメリカ

あらすじ

家族を不慮の事故で失ったダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖......それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

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『ミッドサマー』の、ここが良かった話
「コッ」という音とともに、世界中の映画ファンを恐怖のどん底に落とし入れた『ヘレディタリー 継承』アリ・アスター監督の白昼(悪)夢。

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どうしてこの監督は、こんなにも嫌な空気づくりが上手いのでしょうか…「どうあがいても絶望」と言わんばかりに、悪い予感しかしない、不気味で最高なタイトルシークエンス。

怖さと期待が同居して、ニヤニヤが止まりません。監督曰く「最高のストーリーテリングは、人を不快にさせるもの」だそう。

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ジャンルは田舎ホラー(スリラー)。舞台はスウェーデン奥地の白夜の村 “ホルガ” 。雄大で幻想的な美しい風景に、優しすぎる、白装束の住人たちによる「おもてな死」が始まります…

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映画は前作『ヘレディタリー』同様、画面や音の細部に至るまで、監督による徹底した「情報統制」が行われ、序盤から終盤まで、様々な暗示とその回収が、恐ろしくも美しい手際で進められます。

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一つ、そしてまた一つと伏線を着実に回収してゆき、エンディングは、とても精緻にパズルのピースが全て揃ったような「謎の達成感」や「祈りの成就」のような感覚を味わうことができます。アリ・アスター作品、やはりハズレませんでした。

『スキャンダル』

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2020年2月21日日本公開/108分/アメリカ

あらすじ
FOXニュースの元人気キャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、テレビ界の帝王として君臨していた CEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)を提訴した。そのスキャンダラスなニュースに、メディア界に激震が走る――。騒然とする FOXニュース社内。看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、上り詰めるまでの自身の過程を振り返り心中穏やかではなくなっていた。一方、メインキャスターの座を狙う貪欲な若手のケイラ(マーゴット・ロビー)は、ロジャーと対面する機会を得ていた――。

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『スキャンダル』の、ここが良かった話
アメリカの白人権力者由来の闇は、深くて濃い…。カズ・ヒロの特殊メイクがオスカー受賞で公開前より話題を集めた今作。

米国TV業界をとりまく権力関係、政治立場など、ある程度の前提を踏まえていないと、トントン拍子の映画の展開に、ちょっと置いてきぼりをくらうかもしれません。

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3人の主人公の視点を行き来しながら、ハイテンポに物語は進行するため、個人的には町山さんの事前解説をインプットしていたのが、とても役立ちましたので、リンクを貼っておきます。

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映画は、メディア王への復讐譚〜のような、劇映画的な痛快さ分かりやすさ、スッキリ感はありません。それよりも腐敗した現実や、起きた出来事へのファクトチェックや、彼女たちが立ち向かう姿を、淡々と追い続けていくような作劇が印象的です。

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あまり“劇映画”としてのドラマチック性に重きをおいてないのか。観る人によっては、一見薄味な印象を受けるかもしれません。

ただ、この「冷静さ」や「距離感」に徹しているのが、告発に踏み切った彼女たちの態度や、事態への眼差し、作品が世の中に伝えたいメッセージそのもののようで、個人的にはとても好感なあたりでした。

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以上2月鑑賞のハイライトタイトル。
2020年、2月も年間ベスト級連発で困惑中です…。

一方でコロナウィルスの影響で、外出の警鐘が鳴らされる日本ですが、エンタメの灯は消してはいけません。

ネトフリやアマゾン等、SVODも広く浸透してきた環境下で、様々なエンタメウォッチやその報告を皆さんで絶やさない、そんな娯楽好きな日本であってほしいものです。

あらすじ引用
フィルマークス(各作品ページ)

画像引用
(C)2020『サヨナラまでの30分』製作委員会
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