無知の知(Chapter1-Section10)
アドレス帳が手に入った。衣類以外の財産がこれ。
固定電話がないので、主な連絡手段は公衆電話。当時は気軽に連絡がとれませんでした。ガラケーは1993年以降に普及しますが、固定電話がないと社会的信用が低いとみなされ、履歴書に携帯電話を書くと胡散臭く思われた社会的風潮がありました。
友人宅に訪問。久々の再会を喜び、彼のお母さんも心地よく迎え入れ食事を振る舞ってくれた。
繰り返しになるが、当時「ブラック企業」は眉唾もの。それでも、嘘をついてるように感じなかったのか、おばさんから「労働基準監督署に相談した方がいいわよ」と助言をいただいた。
「そういう所があるんですか!」と目から鱗。ソクラテスのように「不知の自覚」をした。
労働基準監督所は管轄があって、再度、埼玉の地を踏んだ。区役所以外の行政機関はここが初めて。
経緯を話すと、やはり眉唾もの的な対応をされたが、しっかりと仕事はしてくれた。
後日、未払い給与が手に入った。
担当者に「なんで6万じゃなくて12万なんですか?」と倍の額に驚いてしまった。
「そういう計算になってました」と言うので「それなら従事した期間、一律12万になりませんか?」と聞くと「でも、あなたは親方に借金してましたよね?」すかさず「一銭も借りたことありませんよ!」と反論。
「ですが、帳簿に借金した日付と額が記載されていたので、計算上は合っています」
この人どっちの味方なの?と、立ち位置を疑った。借金する風体に見えたとでも言うのか。
先方の方が上手で、勝手に借金したことにして、まんまと逃れていた。
借用書もない。そもそも雇用契約や労働条件明示書だって取り交わしてない。そこを突けば良かった。事前に対策を講じなかった自分の頭の悪さを恥じた。
この国は、公的な制度や社会福祉サービスが用意されている。
ところが、申請主義なので「市民が行政サービスを利用する前提として」制度設計されています。知らないと使えないのです。
また行政にも得意不得意の分野があります。
ボクの場合、労働基準監督所ではなく弁護士に相談するべきでした。それも声をかけた仲間と一緒に相談していたらもっと良かった。そんな知恵もなかったのは無知だったからです。
友人が、福祉業界で働いています。
生活保護の条件が揃っているのにそれを知らない人。障がい児を抱え、どん詰まりになってる一家。色んな事例があったと教えてくれました。
コロナ禍で公的サービスが周知され以前よりマシになりましたが、まだまだ情報弱者は多いと思います。
古典とか、社会に出ても役に立たなそうな授業があります。
ボクは、労働法や社会福祉制度を義務教育で教えるべきだと考えています。この国は申請主義。知らないと損する仕組みだと費用対効果が悪すぎます。
幼少期から「知らないのは持ってないのと同じ」と、呪文を浴びて育ってきたのに、その真意を実感したのはドン底に落とされてからです。
人間というものは、私たちが思うほど賢く作られていません。
第一ベビーブーマー世代の母の口癖は、「銀行に貯金しなさい。利息で生きていけるから」でした。
確かに、あの時代の金利は7~8%ありましたから、間違いではありません。日本人が妄信的に預貯金するのは、その頃の名残りと言っていいでしょう。
1995年、政策金利が0.5%まで引き下げられ低金利時代が始まり、2016年以降のマイナス金利政策の影響で、メガバンクの定期預金の金利が0.002%。普通預金の金利が0.001%になりました。
母の時代、100万円を銀行に預けたら利息で8万円貰えましたが、今は10円です。駄菓子屋で買い物すら出来ません。
あなたが親なら「株に投資しなさい。配当金で生きていけるから」と子どもに伝えてください。
もっと言えば「買い手よし・売り手よし・社会よしの『三方よし』の会社に投資しなさい」と付け加えてください。
より良い未来に貢献する企業となるはずです。…と言いつつ、稀に上場企業でありながら粉飾決算する会社もあるので注意は必要です。
何事も注意は必要なのです。
ここまで読んでなお「株はギャンブルだろ」と思っている方は、周りの意見を鵜呑みにしているだけです。
実はその根拠もあって1929年(昭和4)の昭和恐慌で、日本はとんでもない事態に見舞われました。その経験則からギャンブル扱いされたのです。
日銀総裁に就任した植田さんは、1951年生まれの72歳。20代で昭和恐慌を体験した人ですが、資産公表によると投資信託は「5000万円超1億円以下」その他金融商品が「2500万円超5000万円以下」とのこと。
ご存知の通り、彼は経済学者です。
資産運用の「運用」は、字のごとく「運を用いる」ことです。では、この「運」とは何を指すのでしょうか。
棚からボタモチ。未払い給与の12万を手にすることでしょうか。
この続きはまたの機会に。
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