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読書記録「流浪の月」
〜今日の1冊〜
今日は凪良ゆうさんの作品を紹介します。
映画化されたことでもとても有名な1冊です。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
〜読後の感想〜
ここまで切ない気持ちになったのは久しぶりでした。
52ヘルツのくじら以来かと…
とても考えさせられるとともに深く感動した作品でもありますので、私なりの言葉で感じたことを記録として残しておこうと思いました。
そして、一人でも多くの方々にこの作品を読んでいただけるきっかけになってもらえればとても嬉しく思います。
※ここからの感想は、ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。
15年前の女児誘拐事件の誘拐犯で当時19才の「文」と、誘拐された女児で当時10才の「更紗」の2人を中心とした物語です。
誘拐犯と被害女児という世間のレッテルをはられながらも、2人は15年後、再び再開することになります。
更紗の父親は幼い頃に亡くなり、母親も新しい彼氏と共に姿を消した。
更紗は、伯母の家に預けられるが、そこで孤独と不安の日々を送っていた。
家に帰りたくない更紗は、雨の降る中傘もささずに公園にいた。
そこにいたのは、大学生の「文」。
彼は、更紗に声をかけ、更紗が家に帰りたくない気持ちを察して、自分の家に連れて行く。
そこから約2ヶ月の間、彼らは生活を共にする。
彼女にとって、文と過ごした時間は心から安心できる場所だったが、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。
それは、世間からは「幼女誘拐事件」と呼ばれ、文は誘拐犯、更紗は被害女児という烙印を押される事になる。
世間は、「誘拐犯に傷モノにされた少女」「犯人からひどい目にあった」と事実と全く異なる情報がまるで真実であったかのように報道していく。
ー15年後、2人は再開するが、世間から見たら2人は誘拐犯と被害女児。
出会うことを許されない2人が再開した時、再び2人の止まっていた時間がゆっくりと動き始めていく…。
「文」と「更紗」の2人の間には世間が報じた「事実」とは違った「真実」があった。
それは、愛情、友情、恋愛、彼氏、彼女、そのどれとも表現することのできない、2人の間でしか決して理解し得ないこと。
文と更紗の2人が一緒に過ごしてきた中で感じたことこそが間違いのない「真実」。
2人の中にあるあまりに独特な関係性はおそらく一般的には理解されることはない…だが、純粋にこれからも一緒に生きていってほしいと思わずにはいられなかった。