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読書記録「つみびと」
〜今日の1冊〜
今日は山田詠美さんの作品を紹介したいと思います。
熱の夏、彼女はなぜ幼な子二人を置き去りにしたのか。フィクションでしか書けない“現実”がある。虐げられる者たちの心理に深く分け入る迫真の長編小説。
〜読後の感想〜
物語は児童虐待死事件で被告となった娘とその母親、さらに娘の子供の3つの視点から進んでいきます。
被告の娘が子供を虐待死させたのは事実だが、そうなってしまった背景にこの話は切り込んでいるように感じました。
娘の育った家は父親による母親への暴力、さらに継父の娘への性的虐待など、決して家庭環境は良くありませんでした。
そんな娘が大人になった時…認めたくはないですが、やはりこのような結末を迎えてしまうものなのだろうかとどこか諦めにも近い形で思いました。
「ああ、やっぱりそうなのか…」と。
親子間での負の連鎖は根強く残っていく…辛いけどこれが現実なんだなと改めて感じました。
娘の母親は最終的にいい人に出会えたことで少しずつ立ち直ることができているようでしたが、娘は結局社会にも親にも頼ることができず、SOSの出し方を知らずに一人で全てを抱えた結果、幼い命をなくすことになってしまいました。
この事件はある意味、亡くなった子供たちだけでなく、娘自身も被害者のような気がしました。
子供たちの目線からも書かれているのがまた読んでいて辛いところでした。
特に、兄はどれだけ怖かっただろうと思います。
目の前で妹が徐々に衰弱して亡くなっていく様子、自分もこのままじゃ妹と同じ様になってしまう、でも外には出ることができない…。
その恐怖が読んでいるこちらに痛々しいほどに伝わってきました。
終始暗い話が続くし、自分の感情もかなり引きずり込まれて、ちょっと読後は辛かったです。
作品自体は個人的に皆さんに是非読んでほしい作品ですが、元気な時に読むことを強くおすすめしたいです。