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読書記録「向日葵の咲かない夏」
〜今日の1冊〜
今日は道尾秀介さんの作品を紹介します。
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
〜読後の感想〜
※物語のネタバレ含みます
主人公は「小学4年生の僕」、妹が一人いる。
主人公は、初っ端から同じクラスの生徒「S君」が自宅で死亡しているのを見つけてしまう。
急いで学校へ戻り先生へ報告するが、警察からの報告ではなんと死体が消えていた。
死体はどこへ?
犯人が隠したの?
…と、ここから犯人探して事件解決して、で終わるのが普通。
しかし、最初にお話しておきますと…この話結構設定ぶっ飛んでます(笑)
まず、主人公「ミチオくん」小学4年の割に頭キレすぎ。
妹の「ミカちゃん」、3才なのにペラペラ言葉話しすぎ。
母親は、娘ちゃん大好き大好きで、ミチオくんのことはかなり嫌ってます。
しかもその嫌いのレベルが半端ない…。
父親はいるものの、存在感薄すぎて…母親にいつも怒鳴られてるし。
そして、ミチオくんが見つけたS君は死亡していましたが、なんとその後「蜘蛛」となってミチオくんの前へ現れ、ミチオくんは蜘蛛となったS君と一緒にS君の消えた死体を見つけることに…。
物語は「ミチオくん」目線で進みます。
■人物紹介
ミチオくん…小学4年生の男の子。自分の中に空想世界を作っている。
Sくん…ミチオくんとクラスメイト。最近起きている犬猫殺しの犯人。自宅で自殺しているのが見つかるがその後死体が消えてしまい、S君は「蜘蛛」として生まれ変わる。
ミカ…本当のミカは母親のお腹にいる時に亡くなっており、その後「トカゲ」として生まれ変わる。
ミチオくんの担任教師…幼児性愛者?のような感じ。小学生の子供の裸を写真や動画に残している。
お爺さん…S君の近所に住む。幼い頃母親を亡くし、その時母親の死体が行き帰り動き出したことが怖くて、死体を見ると生き返らないように足を折るようになった。
ミチオくんの母親…ミカをお腹の中にいる時に亡くしており、その原因となっているミチオを憎んでいる。
人形をミカだと思って育てている。
この人物紹介を読んだ時点でだいぶぶっ飛んでんな…と思ったと思うんですけど、当然お話を読み始めたときはそんな人物像だなんて分かるわけもなく(笑)
ただ、読み始めに違和感は感じられて…読み進めるほどにどんどん濃くなっていき、現実なのか妄想なのか分からなくなっていくという何とも不思議な読書体験をしました。
面白いと思ったのは、人間として死んだはずがすぐに別の生き物として生まれ変わっているというところ。
「人間」と「人間ではない別の生き物」、これらが同じ時間軸の中に違和感なく溶け込んでいること。
読んでいて「あれ?なにかおかしい?」とは思うものの、さほど違和感もなく物語を進めていくことができること。
こういうお話は私はあまり読んだことがなかったので不思議な感覚を持ちながらも面白く読了しました。
ちょっと変わった読書体験をしたい、という方に是非一度読んでみてほしい作品でした。