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読書記録「ロスト・ケア」
〜今日の1冊〜
今日は葉真中顕さんの作品を紹介します。
戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―悔い改めろ!介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味…。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る!全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
〜読後の感想〜
介護問題を取り上げた社会派小説です。
今の日本で大きな問題とされている介護。
高齢者を支える若者たちの減少、介護現場での人手不足、介護する側もされる側も苦しむという現実。
作中に出てくる犯人に、私は気づいたら「同情」していました。
「殺人」はもちろん悪、許されてはいけない、それは間違いないことです。しかし、介護する家族にとっては…その行為によって自分が救われる…そう思うことも正直あるのだと気づきました。
それだけ、介護は人としての感情や心を壊してしまう恐ろしさがあるのかもしれません。
小説でありながらも綺麗事では済まされない「介護の現実」を目の当たりにして、これから先の未来に希望を持てなくなってしまうくらい生きていくのが辛くなりました。
ミステリーともサスペンスとも違う…しかし非常に考えさせられる小説でした。