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課題図書『プリズン・サークル』を語り合う(4)
※この記事には、本のネタバレを含む内容が書き連ねてあります
課題図書:『プリズン・サークル』坂上香(岩波書店)
対談読書室:2022年10月15日(土)の課題範囲
8 排除よりも包摂
9 助けを諦めさせる社会
富岡の着眼点
8 排除よりも包摂
現状は、刑務所と外に壁ができてて、そこで終わってしまってる。(高倉)
TCと「マイノリティへの差別」
『プリズン・サークル』での主な登場人物
高倉:被差別部落出身者
朴:在日コリアン
翔:沖縄県
毛利や板東の振り返り
毛利の振り返り
高倉の結婚差別の告白「(衝撃的だったので)深くかみしめながら聞いた」
高倉が所属していた当時のTC
被差別部落出身者や在日コリアンなどのマイノリティが多数いた
訓練生のバックグラウンドを考慮して、TCで差別について考える機会を多く設けた
高倉が感じた「アンチな反応」の毛利の解釈
差別の経験を持つ訓練生も、様々な受け止め方をしていた
高倉の話を聞いた他の訓練生は、言葉にできなかった、もしくは高倉の言わんとしたところが理解できず戸惑ったり動揺していたのではないか
板東の振り返り
初期のTCは、20人未満の訓練生の内、少なくとも4名が部落出身者で、1名が在日コリアン
板東自身も、被差別部落出身者
板東自身の体験談を授業で話したこともある
心を開かせ合う場所
朴の経験
5歳の時に「在日」だと知らされて受けたショック
中学・高校時代を過ごした韓国学校:「軍隊か暴力団組織みたいなところ」
TCで「(同じ)マイノリティ」の翔に出会い、TCの本質に気づく
削除されかかった場面
試写会の反応
高倉:ピクニックの場面での「顔出し」の決意
映画全体を好意的に捉える
刑務所当局と矯正局幹部:ピクニックの場面を問題視
「刑務官の職務執行に関する訓令」10条「届出事項」の拡大解釈(民間の刑務所職員といえども、出所者と交流すべきではない)
映画公開後の毛利のインタビュー
「私たち支援員は、いろいろプログラムをやって、「頑張れ!」と訓練生を送り出して満足してきたわけですが、それでは立ちゆかない場面もあるだろうし……。そんな時、どんな資源が役に立つかって、体験からしかわからないことって絶対にあると思うんです。そもそも刑務所を出た人の話を聞かないと、中で何をしたら良いかわからない」
社会福祉士・精神保健福祉士を合格した高倉
「現状は、刑務所と外のあいだに壁ができてて、そこで終わってしまってる。話をする人はいても、できへんのですよ、自分の困りごとを話すなんて。(中略)。自分の場合は、1年間TCで一緒に過ごしてきて、その人らと外でもつながっとって、心から話せる関係があったっていうのが一番大きい」
9 助けを諦めさせる社会
帰る場所があるっていう感覚が、たぶん本当にない。子どもの頃、帰るところなんてなかったし……。(拓也)
真人の場合
犯行サイクル
犯罪の多くは、いきなり起こるわけではない。TCでは、犯罪行為にいたるまで独特の歪んだ思考や行動のパターンが存在し、「犯行サイクル」と呼ばれる、様々なレベルの予兆が繰り返されていると考える
「強盗のほうは、被害者にケガとか恐怖とかを与えてしまったなと思うんですけど、窃盗に関しては、何も与えてないと思っちゃうんですよね。(中略)。だから、窃盗に関しては与えた影響がなんなのかわかってないなって思います」
真人のソーシャルアトム
小学校1年生
3人目の父からの「しつけ(真人は虐待だと受け止めている)」
小学校6年生
3人目の父からの日常的な暴力おさまる
小学校内でいじめられる
ネコをなでることで、いじめの心の傷を落ち着けていた
犯行直前
母が4人目の父と再婚
仕事をしていなかったため、家族から相手にされなかった真人
犯罪の共犯である「親友」「悪友」との関係:「悪いことする時だけは悪友たちからも認められていたりもするんですけど……。居場所が欲しかったから、距離感的には近くにいたなって思いたかっただけかも」
3つのソーシャルアトムの共通点
「助けを求めない」
「(前略)あんまり自分の気持ちを周りの人に話せてなかったですね。何言っても無駄って思ってたから……。」
拓也の場合
施設の内と外
16歳まで8年間児童福祉施設(現在の「児童心理治療施設」)で過ごす
「(前略)。ここの教育的なこと言うと、サンクチュアリがないですよね。心安まる安全な場所がないっていうか……。だからたぶん、常に助けてほしいってどこかで思ってて。でも、今自分が何に対して苦しい思いをしているかとかはわかってなくて……」
暴力の「世代内連鎖」
子どもの虐待の専門家、西澤哲(山梨県立大学教授)の指摘
(児童福祉)施設における子ども間の性被害・性加害の広範さや深刻さ、そして男子間の性暴力が少なくないことを指摘
暴力を振るう子どもたちもまた、(家庭内)暴力の被害者
児童養護施設で過ごす子どもたちは、安全に暮らせる家庭が存在しなかった。その子どもたちが施設でさらに暴力を受け、無力感を強め、その無力感を克服しようとして、自分よりもさらに無力な子どもに暴力を振るう「世代内連鎖」が起きている
読書室の窓辺から
参加人数
・スピーカー :3名
・リスナー* :3名
*スピーカーによるディスカッション中は聴き手に徹し、読書会の全体の振り返り時に任意で発言可