読書室の窓辺から(7)
※この記事には、本のネタバレを含む内容が書き連ねてあります
こんにちは。富岡です。
こちらは、課題図書型読書会「対談読書室」の7回目「課題図書『プリズン・サークル』を語り合う (7)」の振り返り記事になります。
参加人数
・スピーカー :4名
・リスナー* :0名
*スピーカーによるディスカッション中は聴き手に徹し、読書会の全体の振り返り時に任意で発言可
読書室の風景
『プリズン・サークル』の課題範囲を読みながらの反響をご紹介していきます。
今回の課題範囲(エピローグ)を振り返って
スピーカーから、様々な感想が寄せられました。
一部抜粋してご紹介します。
第一印象は「衝撃的。(圧倒された)」。特に、拓也のその後が気になった。坂上監督の「私の物語」も印象に残った。
250ページ、拓也の父(養父)のエピソード。拓也自身はTCなどを通じて明るい未来が待っていそうでよかったが、拓也の養父はケアが必要そうだが、ケアされる予感もしないし、実際にケアされる気配もなさそうだ。そこが気になった。
坂上監督自身の263ページからの語りが読めてよかった。映画の根底にある思いや、監督自身が、この映画の「証人」だったのだと納得した。
出所後も虐待されている拓也のエピソード。その環境から逃げるために書店でアルバイトをしていた拓也は、アルバイト先の店長に過去に服役していた事実を語るが、店長からは好意的な言葉が返ってくる。拓也の居場所がここにあったことが嬉しい。一方で、家庭での拓也は、「居場所がない」ように思えて、対照的に見えて、考えさせられた。
エピローグの、252ページからの「当事者の声」、256ページからの「語りを奪われて」が読めて良かった。252ページからは、TCとは別の空間で当事者自身の語りだしが生まれているのがいいな、と思った。対照的に、256ページでは、東日本大震災の被災者が「語り」に対する束縛感・強制感・他者からの強要を感じている事例が紹介されている。この部分を読んで、「我々(読者、あるいは、一市民としての我々)が加害者になっていないか」ということをハッと気づかされた。この視点は、これからも持ち続けていきたい。
256ページの「言葉の習得」のエピソード。昨年から今年にかけての自分と重ね合わせて読んでいた。今年の8月から「読書会」に初参加し、自分自身が「言葉を習得」して語れるようになってきた。エピローグで、翔が被災者からの質問に答えている内容がいいと思った。
260ページからの、翔がAAの仲間たちと青春している場面。素敵だなと思った。自分自身でサンクチュアリをつくり、仲間との繋がりを大事にしている。希望があるエピソードだった。一方で、坂上監督の弟さんのエピソードでの旧来型の刑務所の現状を知ると、現代日本社会には課題も多いなと感じた。
252~253ページ、「当事者の声」を読んで。映画を観た人、映画に出ていた人たちの語り合いが、両者の様々な経験の語り合いにつながっているのが興味深いと思った。254ページの「自分との向き合いかた」のエピソードも印象的だった。翔が、256ページで様々な本を通じて「言葉」に触れ、日常会話で試していく。まさに、エモーショナル・リテラシーだと思った。259ページの「加害者家族」・「被害者家族」のエピソード。加害者と被害者の周辺にいる人たちの話を読めてよかった。
「読書会」という、自分にとっての「サンクチュアリ」を感じることができた1年だった。「自分自身の仲間・味方」・「証人」の存在を感じることの大切さを実感した。
『プリズン・サークル』も含めての自分の読書体験で、「言葉を奪われる」こと、その対照としての、「語りの発生」について、自分の思索の課題(テーマ)にしたいと思えた。
読書会の前は、「加害者と被害者」という線引きが明確に白黒つけられると思っていた。が、「自分も加害者かもしれない(加害・被害は意外とグレーだ、という認識)」という意識を持つことの大切さを、『プリズン・サークル』の読書会を通じて感じた。自分のこれまでの人生で、1冊の本とこんなに長く向き合った経験はない。対談読書室で、参加者と対話しながらこの『プリズン・サークル』を読めてよかった。
読書会の期間中、『プリズン・サークル』のキーワードである「傍観者とは何か」・「証人であるためにはどうしたらいいのか」をずっと考えていた。参加者と一緒に考えられてよかった。これらを読書会で一緒に考えられることが嬉しかった。
「プリズン・サークル」の映画を観たことがないので想像するしかないが、映画の終わりかた(モノクロの世界から、色の付いた世界になる)が良いと思った。映画を観てみたくなった。
読書室からのお知らせ
12/25(日)「対談読書室 クリスマス会」について
富岡のTwitterアカウントがホストのTwitterスペースにて、2022年の振り返り会を行います。どなたさまも、お気軽にご参加くださいませ。
日時:22/12/25 (日) 13:00~15:00 ※途中入退室自由
次の課題図書について
岩波少年文庫より、『ふたりのロッテ』エーリヒ・ケストナー(池田香代子 訳)を課題本とします。
23/01/14(土)までに、ご入手のほどよろしくお願いいたします。なお、当日の課題範囲は第1章(11~29ページ)です。
2023年の活動予定について
2023年の初回は、1月14日(土)の10:00~12:00で開催します。しかし、新しいメンバーも加わるので、2023年1月下旬からの活動予定日・時間帯の再考を行います。
具体的には、1月14日(土)の後半1時間を、2023年の活動の曜日・時間帯の調整のための茶話会とさせていただきます。1月14日(土)の出席が難しいメンバーの方は、事前に希望日時のご連絡を、富岡までお送りくださいませ。
よろしくお願いします。