後朝
薄明。
日の出の瞬間。
ササラギは目を覚ます。柔らかくも硬い皮膚が彼女の頬にあたっている。ミヒライに抱かれたまま眠っていたようだ。
彼の胸は安らかに上下していた。眠りの鼓動。
ササラギはミヒライの刻むリズムにうっとりと身をゆだねる。生命の、動物のビート。
ミヒライのだから、美しいのね、とササラギは思う。
彼の眉にそっと触れる。しなやかな手触り。彼の伸びかけの髭にそっと触れる。強い手触り。
場所によってずいぶん手触りが違うのね、とササラギは思う。
ミヒライに触れながら彼を探るのは楽しかった。
近しくなること、仲良くなることは生き物の根幹をなす。こんなに自分が伸びやかに満たされたことがあっただろうか。
ササラギは甘く喉を鳴らす。ササラギの小さな手を包み、彼女の白い胸に顔を埋めたミヒライ。
別々の個体がクロスする不思議。それでいながら、それは連綿と行われてきた日常なのだ。
ササラギは自分の泉が無限であることを知り、ミヒライの力が及ばない場所も知った。
淡い光が差し込んできた。
ミヒライ髪に光の輪ができる。
ササラギは胸をつかれる。狂おしく愛しい。ミヒライのすべて、細胞の隅々まで抱きしめたくなった。
ミヒライにすっぽり包みこまれている至福をササラギは感じていた。彼女はミヒライの首筋にそっと口をつける。
彼の脈がササラギの口に流れこんだ。
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