揺らぐ夜
隠された恋はあまりにも哀しい。隠した恋は悪魔的に甘い。
私がしているのはどちらだろう?呼び出された部屋で、窓の外を見る。中途半端な時間。浅い秋の空は暮れつつある。
長い夜を過ごすつもりはないらしい。私はため息をつく。どちらかは明らか。主導権は彼だ。私は彼の声と手だけに縋っている。逃れられない網。捉えられて蠢いてしまう。
柔らかに撫でられ、優しく触れられる。不実の果実を食んでいるのはわかっている。わかっている。
けれど、
私はその蠱惑的な味を知ってしまった。蜜が流れ落ち、潤うことを知ってしまった。
愚かだ。愚かなのはわかっている。
それでも、
この気持ちを肯定して欲しい。愛している。純粋な想い。ただ、出会う順番が間違っただけ。
スマホが振動する。ディスプレイが光る。
私はまた、窓の空を見る。
もう、夜のとばりは下りていた。
inspired by 「アルメリアホテル」 paris match
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