ラベンダー色の空
春の夕暮れは、未来を予感させる。
ビルの隙間から見えるミニチュアみたいな空でさえも、世界は美しいと感じさせる。
あかねは、仕事終わりにふと空を見上げた。
光の残響が残る空に、淡いラベンダーが広がっている。
胸がふわりと軽くなる瞬間。
あかねは、辛い日々に寄り添ってくれた人を思い出した。
その時、スマホが振動した。
LINEの通知。
一言。「元気?」
あおいらしい簡潔で、思いがこもった言葉。
あかねは、すぐ返す。
「ちょうどあおいのこと思い出してたんだ。」
「以心伝心。」
「きっとこの空のせいだよ。」
「あかねとあおいが混じったら、この空の色だね。」
あかねは、微笑んだ。
「今のご時世会えないけれど、また会おうね。」
「そうだね。」
「今は、耐えるしかないけど、」
あかねは、LINEを続ける。
「この空は繋がってる。この空を共有してると思ったら、超えられるような気がしてくる。」
あおいから返信。
「あかね、よかった。」
あかねの目が熱くなる。あおいの思いが伝わる。本当に私のことを慮ってたんだ。少し前向きになったのをわかってくれたんだ。
あかねが苦しんでいた時。まわりが全て敵だと思っていた時。何回もあおいを失望させたと思う。それでもあおいは、あきらめなかった。あかねの横を伴走してくれた。
そして今。
別々の所で、春の夕暮れを見上げている。
優しい気持ちを抱えながら。
あかねはくしゃみをひとつして、歩き出した。
inspired by スピッツ 「紫の夜を越えて」