中国海軍の「和諧使命」まとめ
和諧使命とは
和諧使命(簡:和谐使命)とは、中国海軍が920型病院船866「和平方舟」を派遣して行う人道主義的な医療提供任務である。これは中国と被派遣国間の関係強化、「責任ある大国」としての役割や中国海軍の良いイメージの強調、遠海での作戦遂行能力の向上等を目的としたものとされる。
派遣された先では、現地の華僑や華人、現地人に対し無料で医療提供を行う。また、和平方舟から医療チームを現地の病院や村、離島に派遣することもある。
通常の軍艦の派遣とは異なり、通常の民間人/一般人に対し直接的なアプローチが取れるのは、病院船の大きな魅力だろう。
2023年8月現在、和諧使命任務は9回行われており、和平方舟が海外に派遣された回数は和諧使命任務を含め10回となっている。以下、この10回の任務を纏める。半分くらい自分用メモも兼ねている。
尚、国内でも病院船保有を求める声があるし、コロナ禍の際には強まった様に思う。専属の病院船の保有に関する議論をする際、平時には以下の様な海外派遣を行っていることを知っておく必要があるだろう。
和諧使命任務列挙
和諧使命-2010
期間:2010年8月31~11月26日
派遣国:ジブチ、ケニア、タンザニア、セイシェル、バングラデシュ
指揮員:包裕平
記念すべき初の和諧使命任務は2010年に実施された。各国で医療提供を行った他、アデン湾でソマリア海賊対処を実施していた第六次護衛隊(第六批护航编队)と会合し、同護衛隊乗員への医療提供等を実施した。
和諧使命-2011
期間:2011年9月16日~12月29日
派遣国:キューバ、ジャマイカ、トリニダード・トバゴ、コスタリカ
指揮員:邱延鹏
2回目の派遣はパナマ運河を越えて中米へ。
和諧使命-2013
期間:2013年6月10日~10月12日
訪問国:ブルネイ、インドネシア、モルディブ、パキスタン、インド、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア
指揮員:沈浩
ブルネイではASEAN+8の防相拡大会議及び人道支援/医療演習に参加。インドネシアで国際観艦式参加。また、アデン湾で海賊対処を行っている部隊に医療提供を実施した。
和諧使命-2014
期間:2014年8月4日(真珠湾時間)~9月29日
訪問国:トンガ、フィジー、バヌアツ、パプアニューギニア
指揮員:沈浩
2014年6月26日~8月1日まで行われたRIMPAC2014に参加した和平方舟が、8月4日に真珠湾を出港し任務開始。
和諧使命-2015
期間:2015年9月23日~2016年1月23日
訪問国:オーストリア、仏領ポリネシア、アメリカ、メキシコ、バルバトス、グレナダ、ペルー
指揮員:管柏林
9月17~22日に実施されたマレーシアとの「和平友誼」演習を終え、9月23日にクランを出港。仏領ポリネシアでは基地の見学や交流を実施。アメリカではサンディエゴに寄港し病院船マーシーUSNS Mercy (T-AH-19)との相互訪問を実施した他、軍の医療関係施設を訪問したり医療関係者との意見交換等を実施したりした。
和諧使命-2017
期間:2017年7月26日~12月28日
訪問国:スリランカ、スリランカ、ジブチ、スペイン、シエラレオネ、ガボン、コンゴ共和国、アンゴラ、モザンビーク、タンザニア、東ティモール
指揮員:管柏林
アデン湾ではソマリア海賊対処を実施している第二十六次護衛隊(第二十六批护航编队)と合流し、護衛を行う。その後地中海へ進出しスペインのマラガに寄港しアフリカ西岸を寄港しつつ南下。南東部ではモザンビークとタンザニアに寄港し、インド洋を東進し東ティモールへ。
和諧使命-2018
期間:2018年6月28日~2019年1月18日
訪問国:パプアニューギニア、バヌアツ、フィジー、トンガ、仏領ポリネシア、ベネズエラ、グレナダ、ドミニカ、アンティグア・バーブーダ、ドミニカ共和国、エクアドル、チリ
指揮員:管柏林
和平方舟2回目の中米進出。チリではチリ海軍200周年観艦式に参加。
和諧使命-2022
期間:2022年11月2日~11月29日
訪問国:インドネシア
指揮員:邱文生
期間も短く、訪問国もインドネシア1ヶ国のみであるが、これはコロナ禍を経て初めて実施された和諧使命任務だからであろう。
和諧使命-2023
期間:2023年7月3日~現在執行中(2023年8月現在)
訪問国:キリバス、トンガ、バヌアツ、ソロモン諸島、東ティモール
指揮員:赵光庆
コロナ禍を経て2回目の和諧使命任務。期間も訪問国も和諧使命-2022より拡大し、コロナ禍以前に戻りつつあるように思う。
番外:2013年対フィリピン救援
期間:2013年11月21日~12月15日
訪問国:フィリピン
2013年11月4日、トラック諸島沖で発生した平成25年台風30号(Haiyanハイエン。中国語で海燕の意)は8日、フィリピン中部に上陸。レイテ、セブ、パナイ島を横断した。これに伴い死者6201、行方不明者1785、被災者1608万、家屋損害114万、経済被害額398億ペソ(日本円換算964億円)の多大な損害が出た。特にレイテ島北部とサマール島により構成されるサンペドロ湾沿岸で高潮の被害が重大であった。
この被害に対し国際社会は対比援助を実行。中国海軍も和平方舟を派遣した。