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利尻島も“くねくね“〜利尻町⑧『沓形大火記念碑』

いまから60年ほど前の1964年(昭和39)5月15日午後6時50分頃、異常乾燥注意報発令中の沓形市街にあった倉庫(沓形本町)から火の手が上がります。

地元や東利尻町(現在の利尻富士町)そして礼文町から消防団が加勢して消火活動を行います。風向きの変化などもあり、一旦、火の勢いは弱まりますが、次々と延焼し市街地の約80%が焼き尽くされてしまいます。
当時、離島としては、戦後最大の火災となりました。

この災害を忘れないため、1966年(昭和41)火災当時、最初の災害対策本部が設置されていた場所(現在は、交差点脇の小さない公園)に『沓形大火記念碑』が建立されます。

『沓形大火記念碑』

沓形大火の概要

・出火日時  1964年(昭和39)5月15日 午後6時50分頃
・出火場所  沓形市街の個人所有の倉庫
・出火原因  史料を確認する限り不明とされる。倉庫は、解体が予定されており、空き家状態で燃える物がなかったとされる。
・鎮火時刻  1964年(昭和39)5月16日 午前1時30分頃
・焼失家屋  236棟(203世帯、878人が焼け出された)
・死者    2名(うち1名は、礼文町から消火応援に赴いた消防団員)
・被害額   約8億円

火災にあった地域は、当時の本町、富士見町、緑町、日出町一円の地域でした。火災発生とともに火は、風を伴ったと記録に残っています。もしかすると現在、「火災旋風」と呼ばれる火災時に発生する竜巻状の渦(うず)が発生した可能性もあります。

大火翌日の沓形市街の航空写真 「広報りしり」より転載

役場は、災害対策本部を設置。隣の東利尻町(現 利尻富士町)、礼文町に消防団の応援出動を要請します。

火災当初、沓形には、ポンプ車が1台しかなく、小型ポンプも15台という状況でしたが、消防団員285名で懸命に消火作業に当たります。しかし、火の回りが早く、一旦、火の勢いも収まりかけますが、再び、拡大していくことになります。

消防団は、必死の消火・延焼防火体制をとりますが、火災が四方に広がりをみせ、その上、風(火災旋風?)が強まってきて、消防団を包むようになってきます。消防ポンプは、孤立化し、それにより消火ホースは、分断され集中的な消火活動が出来なくなってくるのです。

また、消火する水も、そのほとんどは、海水を使用していた(当時、沓形に消火栓は3カ所)ので、火災が拡大するにしたがい消火ホースの水圧が低下(消火ホースを伸ばすため)して消火活動に支障が出たのです。これも火災が拡大する大きな要因となっていきます。

復興作業が始まる市街地。 「広報りしり」より転載

さらに、役場と消防団との連絡もとれなくなるなど組織的な消火活動は、ほぼ不可能となります。

島民の一部は、一時、船で沖合に避難することにもなりました。

島民や消防団の懸命な消火活動で火災が、鎮火するのは、日が変わった翌日、午前1時30分頃です。
火災は、約6時間にわたり、役場や病院、銀行などの公共施設や民家236戸を一度にして焼き払ったのでした。

役場は、被災後、国や北海道へ陳情して復興の財政的支援を要請します。
火災から半年後には、公共施設や家屋など147戸が新たに完成しています。当時の利尻町長は、町民をあげて一致協力体制をとって「融和」という言葉を旗頭に「よりよき町づくり」や「よい人づくり」にまい進していくことを宣言します。

大火翌日の様子

現在の利尻町は、基幹産業である漁業も沿岸漁業を中心として島を支える重要な産業となり、特に、港は、毎年、内外からの客船が訪れるなど観光的にも大いに注目され、それが、離島地域の活性化につながっています。

エピソード

大火のあと、島外からの救援活動が活発化する中で、その救援物資を運ぶために活躍した船があったことが確認できました。

私は、汽船会社やフェリー会社に勤めてことがあるので、どのような船だったのか興味を持ち、調べたところ、その船名は、「釣島丸」といい、太平洋戦争を生き抜いた幸運の船であることが分かりました。

旧日本海軍電纜(でんらん=ケーブル)敷設船『釣島(つるしま)』。戦時中、同型船は、4隻建造されたが、戦争を”生き抜いた”船は、この「釣島」のみでした。戦後の1953年(昭和28)日本電信電話公社の所管となり、船名を『釣島丸』として海底ケーブル敷設船として活躍します。しかし、老朽化と海底ケーブルの仕様の変更などにより1968年(昭和43)に廃船が決定し27年あまりに及ぶ生涯に幕を閉じました。

■船名 釣島丸(旧日本海軍時代は、「釣島」)
■進水年月 1941年(昭和16)5月24日
■総トン数 1160. 58㌧
■長さ 76.80m
■船幅 10.80m
■速力(最大) 13.0ノット




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