未知なるりんご飴は、りんご以上においしかった!
それは急ぎ早に歩いている時だった。そんな時でも食いしん坊の私の目は、しっかり食べ物屋さんだけは見つけてしまう。
喫茶店だろうか?おしゃれな店内で楽しそうに何かを食べている人が見える。手元に目をやると赤い物体・・・・・・
りんご飴だ!
急ぎ足のままお店横から入口に向けて歩くと、丸いりんごが木の棒に刺さったオブジェがあった。これが噂に聞いていたりんご飴専門店か。
YouTubeで数年前に見た。りんご飴専門店が流行っているという。
私の中では、えぇ~、りんご飴が!? である。お祭りの屋台で売っているりんご飴。たしかにとても魅惑的な見た目ではあるが、専門の店を構えるほどのものだろうか?
そんな疑問を抱いただけで終わっていたりんご飴。生まれてからこの方、一度も食べたことがないくせに、あれは美味しくないりんごに飴をつけてごまかすためのもの、というひどい偏見がある。りんごは何もせずそのまま食べるのが一番おいしいのだ! という思いもあり、食べようという気持ちにはならなかった。
なのに、なぜかこの時のりんご飴は私の心をとらえて離さなかった。数年前に流行ったけど未だに残っているりんご飴。それはただ映えるからではなくおいしいからでは? 一体あれはどんな味がするのだ? 用事を済ませながらも私の頭の中は未知なるりんご飴のことでいっぱいだ。
よし、一度食べてみよう。数時間りんご飴のことを思い続けた後、ようやく私は決意した。用事を済ませ、先ほどのりんご飴屋さんへ向かう。
レジに2人ほど並んでおり、その後ろに並びながら店内を見渡す。空いている席はなさそうだ。テイクアウトするか。そう心に決めて、メニューを見る。
いかにもりんご飴という感じの棒に刺さった丸ごとりんごの他に、食べやすいようにカットされたりんご飴もある。魅惑的なのはやはり丸ごとだが、アラフィフにはハードルが高い。
なにせ食べたことがないから、飴の固さが分からない。ただでさえりんご丸ごともままならない歯に、固い飴までまとわれてしまったら、もはやこの歯は折れてしまうのでは?
そんな不安から選択肢はない。カットされたりんご飴を迷わず買う。テイクアウトしたいと伝えると、店員さんに「30分以上経つと飴が溶けてしまうのでご注意ください」と言われた。
えっ、飴って溶けるものなの?
りんごが変色するから30分ではなく???
大急ぎで帰ることにする。気持ちが慌てすぎて、飛び乗った電車が行先と真逆の方向に走り出したことに、次の駅に着くまで気がつかなかった。
しょんぼりして降り立った駅で、今度はよ~く行き先を確認して電車を待つ。飴が溶け始めていないか心配で、りんご飴を見てみた。
うん。大丈夫そうだ。
心配はしたが、なんとか飴が溶け始める前に食べられる場所にたどり着いた。
急げ、急げ。さっそく実食だ。
飴がキラキラと輝いて宝石のようにきれいだ。
どれどれ? と一口でパクっとほうばる。瞬間のあの驚き。
おいしい!!
なにこれ、おいしい。おいしすぎる!!!
りんごの甘さ、みずみずしさ、爽やかな香り。そこに飴のパリパリとした食感。これはもう、りんご以上においしい。りんご飴はおいしくないりんごの味をごまかすためのもの、そんな偏見を心から謝罪し反省したい。
りんご飴は、おいしいりんごをよりおいしくさせるものなのだ!
これが未知なるりんご飴を食べた私の感想である。感動さえも感じるおいしさ。あのりんごの香り、飴と相まった甘くも爽やかなおいしさ。
余韻が、余韻がとまらないよ~!!!!!
あまりにりんご飴が忘れられず、1週間後、私は再びりんご飴を買いに走ったのである。