【みやまる】のほ本!16冊目-江利子と絶対 本谷有希子文学大全集-
劇作家の本谷有希子の短編集。文学大全集と銘打ってあるが、文庫にして200ページにも満たない小さな短編集(3作収録)。しかしボリュームは充分すぎるくらいにある。どちらかと言えば「本谷有希子ワールドをぎゅうぎゅうに詰め込んだ結果こんな短編が出来ました!」という薄さだ。
どの作品も読み始めたら最後まで止まらないハイテンポで読めるが表題作である『江利子と絶対』がそのなかでも一番。引きこもりかつ奇行の目立つ妹・江利子が突然近所で起きた鉄道事故のニュースを見て、前向きに生きることを決意する。「お前らなんか前向きに見捨ててやる」という意味不明だけどかっこいい言葉とともに。生まれ変わろうとする妹はその手がかりに「自分のことを絶対なや裏切らない犬」を飼うことにする。名前は……なんとそのまま”絶対”。
登場人物本人たちは大真面目なのだが、その大真面目さが返って笑っちゃうような、激しいけどおかしい珠玉の短編たち。本谷小説には『生きてるだけで、愛。』という中編もあるが、こちらもおすすめ。感情のコントロールが出来ず苦しむ寧子はダラダラと同棲を初めてしまい3年。どこからともなく彼の「元恋人」が現れ、彼女に追い回されるというこちらも「本人は大真面目だけど」な良作。わざと「お涙頂戴」風のタイトルにしてあるのも好き。
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