児玉隆也「淋しき越山会の女王」について
初出は1974年の文藝春秋11月号「田中角栄の金脈と人脈」2本立て特集の1つ(今読めるのは岩波現代文庫)。この特集のもう1本は立花隆の「田中角栄研究ーその金脈と人脈」。こちらの方が有名だが、当時の時代状況を知りたかったので読んでみた。
内容は面白かったが、もっとも興味深かったのは併録されていた他のルポルタージュであった。それは「チッソだけが、なぜ」という水俣病を起こした企業チッソの生い立ちを取材したもので、創業者が金沢市出身の野口遵(のぐちしたがう)であること、今は全く関係はないが旭化成・積水ハウスという大手メーカーが分社化していたことなど、知らないことを知ることが出来て大変勉強になった。また、著者が越山会のルポを発表した半年後、38歳という若さで急逝したことにも驚いた。
この本の解説を柳田邦男が書いているが、これも面白い。柳田邦男の作品は何かを読んで面白くなかった印象もありほとんど読んでいないが、他の人の解説を書かせると面白いものが多い。そういう人なのである。