エフェクターコラム01 「初期衝動」

エフェクター、それは最も多くのギタリストを虜にし、悩ませ、天国へ導き、そして地獄に突き落とす、果てなく続く沼地への旅、もしくは終わることない追求の愉悦。

なぜそんなことになってしまうのでしょうか。エフェクターコラムを書かせていただくに当たって、まずはその説明からさせていただきましょう。

ギターを始めようと志した人間は、まず楽器屋さんで戸惑いながら最初の一本を手に入れます。ついでにきっと小さな練習アンプも。そしてきっとメーカー名の書かれたソフトケースで店員さんから渡され、肩からはギター、片手には小さなアンプの箱を下げて、なんて最近はもうお店から宅急便、もしくはネット通販が主流でしょうか。

そしてやっとこさ帰宅して、もしくは届いたダンボールを部屋へと運び、興奮さめやらぬままギターをケースから取り出し、きっとそれを大切そうにベッドに置いたりするのでしょう。そしてアンプの箱をあけ、きっと店員さんがおまけでつけてくれたシールドケーブルも取り出して、そうそう、最近はチューナーやピックなんかがセットになってる初心者用セットなんかもありますね。おすすめです。

アンプをコンセントにつないで、ギターとアンプをシールドでつなぎ、ストラップなんかももう装着しちゃってて、さぁ、初めてのエレキギター生活が始まります。慣れないピックを握って、もう最初の一音を出しただけで、

「!!!!!!!!!!!!」

演奏などろくにできるわけがありません、アンプの設定だってもちろんめちゃくちゃです。初めてなんですから。でもきっとどんな形で音を出したとしても、心が、本能が叫びだします。

やべぇ、と。

俺の人生の道ができてしまったと。夢ができてしまったと。そうでしょうそうでしょう。エレキギターとは本能に訴えかけてくる麻薬、衝動の全てを受け止めてくれる相棒、おれだけのオンナ。私だけのカレ。

エフェクターコラムです。

戦いと言う名のデートはそこから始まります。まず大好きなのにろくに弾けない、当たり前ですね。大好きなのにどうしたらいいかわからない、わからないことだらけ、でも好き、間違いなく好き、大好き、たまらない。序盤からもう重すぎる愛です。そうやってみなさんのラブデイズ、ギターのある暮らしは始まるわけです。

Youtubeなんかをスマホで見ながらローコードなんかを弾いてみるかもしれません、いやいやもっと硬派な白黒写真しかないようなコードブックを閉じないように重しを乗せながらかもしれません。もしくは学校の先輩やインターネットから、CAGEDシステムなんかを教えてもらうかもしれません、もう毎日指が痛くて、ああこれがギターを弾いている人特有の、おれの左手の指が…ギタリストの指に…

全然エフェクターの話にたどりつかないよ。

そんなある日、みなさんは気づくのです。もちろんまだ上手にギターなんて弾けません、あんなに気持ちいいのに、練習めんどくさいな、全然できるようにならないな、もしかしたら才能ないのかも…きっともう頭の中はギターのことで夢中。愛です。妄執です。悶える日々です。そしてたどり着きます。

「もっと気持ちいい音を出したいな。」

はい、終了です。悪魔の声です。あなたは何も間違ってはいません、だがしかし、それはこれから続く永遠の沼、果てなき荒野のはじまり、魔道、修羅の道です。そしてあなたはきっとどこかから知ってしまうでしょう、それは先輩や友達からかもしれません、もしくはギター・マガジンから、ウィンドウショッピングをしたいと思ってふらりと入ってしまった楽器屋さんから、はたまたスマホやパソコンからWeb経由かもしれません。

「エフェクターってのがあるみたい。」

ようこそ私達の世界へ。いや待て、あなたはまだこっちの世界に足を踏み出してはいない、世の中には「絶対アンプ直ノーエフェクター派」という硬派な人種もおりますけぇの。しかし多くのギタリストたちは、亡者のような微笑みで手招きするでしょう、そう、まるで生前の彼らの姿を思い出すように。そして少しばかりの罪悪感を抱えながらも、きっと目は完全にキマっているでしょう。

つまりそういうことです。伝わりましたね?

多くのギタリストたちはこうしてエフェクターという魔道に堕ちます。中でも「歪みエフェクター」というジャンルが一番極悪で甘美な沼です。

なぜか。

まず簡単にギターの音をより好みの方向に変えてくれます、
うれしい。
そして音に変化があることで練習も楽しくなるしやる気も出ます、
たのしい。
そして誰もが憧れる「オレ(私)だけの音」の追求が始まります、
大好き。

それではここで一曲どうぞ、Dreams Come Trueで、「うれしい!たのしい!大好き!」

スーパーでスペシャルになったもの。

もはやギターの練習よりも、どんな音になる物があるんだという新しい道。ギターという武器を手に入れてしまった人がはまり込む最高のおもちゃ。しかも楽器を買うよりアンプを買うよりも価格も安く、価格の割に目に見えてわかりやすく音も変わります。さらに見た目もかわいい。

新しくすると気分もアガるアクセサリー。
組み合わせも無限大。
踏み込むだけでオレ好みの音。
たまんねぇ。

おわかり頂けたでしょうか。人生という道も人の数だけあるように、ギタリストの道、さらにエフェクターの道というのも人の数×ギターの数×機材の数だけございます。

見上げてごらん、夜の星を。
往年の名歌手、坂本九さんも歌っています。

ほら、インターネットにも、楽器屋さんの棚にも、ギター・マガジンにも。名機と言われる定番から、個性派にぴったりの飛び道具、さらには少数生産の個人作家ものまで。あまりに多くの星たちがまたたいています。歴史が、想いが、思い出がつまっています。そして今もきっと、新しいエフェクターたちが…。

ギタリストにとってトーン、サウンド、音色はその人にとっての名刺、顔、さらには指紋ですらあります。好みは千差万別、正解もなければルールもありません。あなただけの音、あなただけの快楽。

さぁ準備はいいですか?素晴らしきエフェクターの世界がこれからはじまります。

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