エフェクターコラム10 「ダンブル系ODとアンプライクペダル」
KLON Centaurのようにペダル業界でも幻と言われるものは存在しますが、今回は製造台数で言えばそれ以上に幻、アンプ界の伝説ダンブル系のトーンを持つとされる「ダンブル系オーバードライブ」について紹介していこうと思います。アンプライクペダルについても同様に書いていけたらなと。
気に入ったギタリストにしかアンプを作らなかった伝説のアンプビルダー
ビンテージ機材に興味を持った人や、ハイエンド系やブティック物なんかに興味を持ち始めた人がそのうち耳にする伝説の人物の名前、それがダンブルだと思います。
アンプをカスタマイズしてより好みにモディファイする文化は、車のカスタム文化のように昔からアメリカを中心に根付いている印象ですが、そんなカスタムアンプコミュニティに彗星のごとく現れたのがアレキサンダー・ハワード・ダンブルです。自身の作ったアンプに対するプライドも高く、「おれのアンプが世界で一番いい音がする」と豪語し、実際にその世界的評価を勝ち取った伝説の男。
何よりも私が魅力的だと思ったのは、ダンブル氏はいくらお金を積まれようが自身が気に入ったギタリスト以外にアンプを作らなかったといいます。この資本主義経済の世界において、その最大の武器を否定した男。そしてそのアンプはミュージシャンごとのオーダーメイドであったため、どのダンブルも同じ音ではないとのこと。さらに多くの伝説を持ちますが、当然私もそれが真実なのか虚構だったのか知るよしもありません。
そんなダンブル氏ですが、今年の1月にお亡くなりになったことがアナウンスされ、ツイッターなどでも追悼コメントが多数見られました。
Gear Otaku様コンテンツ「Dumble アンプの製作者アレクサンダー・ダンブルが死去」
その伝説的な音とは?
よくしていただいた先輩方のご厚意で、私も2度ほど違うダンブルを実際に触らせて頂いたことがあります。その時の印象だと当時大人気だったDr.Zのアンプに印象は近かったと思います。今で言うならばTwo-Rockでしょうか。フェンダー系のクリーンをよりどっしりと押し出しの強い感じに、ドライブ感もスムーズでパワフルかつ塊のように飛び、そして何より反応が恐ろしく速い。どんな使い方でも恐ろしくいい音がするけど使うのはなかなか怖いアンプという印象でした。よく雑なプレイに対してもアンプの許容量が高く、それなりによく聞こえてくれるアンプのことをミュージシャンの間では「マケてくれるアンプ」と言いますが、そんなものは微塵もありません。
異常にきれる包丁とでも言いましょうか。包丁は切れないより切れたほうがいい、というのはよく聞く話ですが、私はプロの料理人さんが使うごりごりに研がれた和包丁は使うのが怖いです。ちょっと異常なくらいに切れるので。きちんと修練を重ねた料理人の方々にとってはそれはもう手放せない相棒になるとは思うのですが取り扱いも修練も十分でない私には到底取り扱えるものではないなと。
マニアを絶対に裏切らない村田さんのDeeper's viewでももちろん紹介してくださってます。
アンプライクペダルの台頭とともにダンブル系ペダルが出現
そんなギタリストなら一度は触ってみたい伝説のアンプですが、多くの人が手に入れられるわけではありません。そうなると当然、ダンブルみたいな音がする機材が欲しいというニーズが出来上がります。どのペダルがダンブル系の最初なのかという定かな情報はわからないのですが、国産ブティックメーカーであるHAOのRumbleを雑誌や楽器店で見かけるようになってからという印象です。
ダンブルはアンプなんだからダンブルっぽいアンプの方がペダルよりダンブルに近いじゃん。その通りです。アンプの世界でもダンブルクローンとされるものは多いですし、Two-Rockはある意味その代表的なメーカーでもあると思います。ただし、皆さんご存知のようにめちゃめちゃ高価格です。そうなれば、「もっと手軽にどうにかならない?」となるのが人間なわけでして。
そしてアンプライクペダル、アンプのような音がするとされるペダル、というものを知った方々が最初に持つ疑問として「どのアンプにつないでもそういう音がするわけ?」というところだと思います。JC-120につないでも、Twin ReverbでもMarshallもダンブルの音になるわけ?ということですね。
結論から言うと、「っぽい音のテイストが追加されるだけ」です。
えー、だったらいらないよそんなの、って思ってしまう人もいるかも知れません。しかし果たして本当にそうでしょうか?
エフェクターとは元々、アンプとは違う回路で音を変化させてくれる機材です。もしその音の変化が「似た名前のアンプみたいになるかどうか?」が重要で、「そうならない」となれば、良くない物という印象になってしまうでしょう。
ではこう言い換えましょう。「より音が速くなり、ピッキングに対して敏感になり、音が太くなり、ワイドレンジに感じられるエフェクター。」これが所謂アンプライク、ダンブル系ODと言われる多くの機種にある特徴になります。どうですか?うふふ、いいものでしょう?
こうしてアンプライク、ダンブル系ODというものが多く出回るようになりました。
ダンブル系ODの主要機種
HAO Rumble Mod.
デジマート製品レビューでも「ザ・定番」というコーナーで紹介されるくらいの定番機種。エフェクターをかけた音らしい音質変化をしない、という点でもこちらの機種は登場が早かったと思います。つまり音に派手さがあるわけではないものの、アンプをプッシュし音のグレードやタッチに対する反応を一段階あげてくれる。ただ音を聞いてみるよりも、実際に自身で弾いてみるとすごくよくわかる違いだと思います。生産終了品ですが中古ではまだ見かける印象なので、試してみてもらいたいペダルです。
Shin’s Music Dumbloid
日本が誇る下町のリペア・カスタマイズ工房Shin’s Music制作のダンブル系ペダル。カスタマイズ工房だけありDumbloidもミュージシャンモデルごとにチューニングされ膨大なバリエーションがあります。
特筆すべきはこれほんとにペダルか?と思うかのような音。音がとにかく速く、ピッキングニュアンスに敏感、そして音が太い。音作りの幅も広く、太くメロウなトーンから、破裂するかのような暴れるトーンまで。誰でも踏み込めばすぐにいい音が簡単に出ますよ、というペダルではないですが、弾けるギタリストほど「めちゃくちゃいい」と虜になるペダルです。ちなみに私はRFとB Boostが大好きです。
Cornerstone GLADIO
Dumbloidを暴れるダンブル系と言うならば、より静謐でシルキーさ、音のまとまりに注視して作られている印象があるのがこちらのGladioです。きれいなギターサウンドが好きな方にとって使いやすいペダルだと思います。
Stevie Ray Vaughanのダンブルサウンドを意識したコンパクトバージョンもあるよ
Y.O.S.ギター工房 Smoggy Overdrive
前回も紹介したSmoggy Overdriveもガラスのようなクリアさ、音の速さやピッキングニュアンスへの敏感さ、そして音の太さや塊感はダンブル系と言ってもいい印象です。
おわりに
そのうちアンプに関してのコンテンツも書こうかなと思っているので、ダンブルについての説明が長くなったあたりでちょっと戸惑いましたが、ダンブル系、アンプライクペダルのイメージが伝わったならうれしいです。
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