エフェクターコラム03 「Fuzz」
これまでのコラムで歪みの虜になったみなさまこんにちは。なってくれてますよね?なってくれてなければそれはひとえに私の能力不足、なってくれてたらハイタッチ、ギターも恋愛も、あきらめないことが肝心だそうですよ。
さてここからは歪みエフェクター、歪みの音ってどんなのがあるのよ?っていうのを書いていきたいと思います。まず、歪みの種類は「アンプの音量をあげすぎてオーバードライブさせた歪み」と「通常のアンプじゃ作れない壊れたアンプみたいな歪み」の大きく2種類に分けられます。
そして、歪みの歴史という順番で説明するならば、「通常のアンプじゃ作れない壊れたアンプみたいな歪み」からスタートします。つまり、Fuzz(ファズ)です。
かっこいいですね。Fuzzが使われている名曲は数知れずですが、ほとんどの人にとって代表的な曲はきっとこれでしょう。そしてFuzzが使われた曲は星の数ほどあれど、代表的なギタリストとしてまず名前が挙がるのもJimi Hendrixだと思います。大好きです、今でこそ。しかし最初にこの曲を聞いた時、私にはかっこよさのかけらも理解できませんでした。ただの好みの問題だと思います。お味噌汁とお米で育ってきた子供が、初めてパンとコンソメスープの朝食を出された時に、それをそのままおいしい!と思えるかどうか。お米が食べたいってなる子だって当然いるでしょう。そういう意味では私の中でJimi Hendrixは聞けば聞くほどすごみと旨味が増していくスルメ系のイメージです。もちろん初見からハンバーグになる人もいると思いますが。
自分がなぜ最初に好きだと思えなかったかと考えてみると、ブルーズやサイケデリックなフィーリングに当時理解が追いつかなかったのと、あとはFuzz特有の暴れる粗いサウンドがあまりきれいに思えなかったからだと思います。
それもそのはず、なぜならFuzzというサウンドは元々、使おうと思ってたアンプが壊れていてすごい音が出てきちゃったものを、「これは新しいサウンドだ!かっこいい!」って発見されたからです。
Fuzzの歴史についてはこちらのBuzz the Fuzz様のページがめちゃくちゃ詳しいです。
そう、Fuzzというのはギタリストの中でも激しく好みのわかれるものなのです。太く、荒々しく、ピーキー、中には大丈夫かなこれ?というくらいのものも存在しており(というかそういう物の方が多いです)、それに眉をひそめるか、やべぇぶっとんでる!って興奮するかはその人次第、まるでチーズのようなディープな世界です。簡単には乗りこなせないじゃじゃ馬だけど、オレだけはお前をうまく乗りこなしてやるぜ、彼って他の人からはひどいって言われるけど、私にはとっても優しい時もあるの。こんな危険な魅力にあふれたもの、それがFuzzです。
そんなファズですが、現在世の中にあるものは、大きく分けて4種類に分けられると思います。
・Fuzz Face系
・Tone Bender系
・Big Muff系
・それ以外
本当にざっくりです。今回はまとめ的な内容のつもりですのでかなりはしょった説明になります。(Fuzzマニアの皆様すみません。
Fuzz Face系について
かわいらしい顔に見える定番中の定番ファズ。かわいい見た目の通り、他の多くのFuzzよりはコントロールしやすく使いやすさに定評があります。中域に特徴のある比較的多くの人に好まれやすい音といいますか、とはいえFuzzらしい荒々しさはきちんと持っているので、Fuzz初心者から玄人まで愛用者も多いです。そして私も使いやすさからこのFuzz Face系が一番好きです。
Fuzz Faceと言えば!のフーチーズやデジマートでおなじみの村田氏が文章と動画でこれでもかとご紹介してくださっています。こちらのDeeper's Viewは貴重なビンテージ機材を詳しい解説と動画で説明してくれるのでとてもおすすめです。(コンテンツ一覧ページはこちら)
Tone Bender系について
Tone Benderに関してはそもそも私もたくさん試したことがあるわけではないので、こういう音だよ!とざっくり分けることすら難しいと思っています。製造時期や個体差による音の違いの激しさ、マニアですら追いきれない、集めきれないと言われるほどのディープすぎる魅惑のFuzzワールド、それがTone Benderです。誤解を恐れずに言えば、Fuzz Faceと比較して無骨でピーキーでより暴れるサウンドとでも言えるでしょうか。Fuzz Faceは音がムチっとする印象があるのですが、Tone Benderはギャン!ってなると言いましょうか。個人的には叫ぶような鋭くてピーキーな音を聞くと、Tone Benderっぽいなみたいに思ったりします。
こちらもMk3からフーチーズ村田氏が解説してくださっているDeeper's Viewがあります。Part2もあるよ。
先程紹介させて頂いたBuzz the Fuzz様のページも再度。そもそもこちらのサイトはTone Benderがメインコンテンツなのです。
個人的にはこちらのWren and CuffのTone Bender系ファズがかっこいい音で好きです。サイズが小さいのもエフェクトボード派にはうれしいところ。
Big Muff系について
Big Muffはみんな大好きぶっとび老舗エフェクターメーカー、Electro Harmonix(通称エレハモ)が長い歴史をかけてリリースしてきた一連のFuzz/Distortionです。こちらもまた、製造年によって仕様がだいぶ異なるので、それぞれの年代によってだいたいどういう音、というのはあるのですが、個体差もとても激しいです。一貫するのは音像がやたら太くなり轟音になる、年代によっては完全に低音寄りの極悪サウンドになる、というところでしょうか。日本では特に90年代のオルタナ・グランジブーム以降愛用者が爆発的に増え、さらにシューゲイザー、ノイズアンビエント系の人たちの間でも定番エフェクターとして有名だと思います。人によってどの年代のどんな系統の個体が好き、と好みが分かれるのも面白い点です。
Deeper's Viewも初期のTriangleと最近人気のあるRam's Headのバージョンごとに作ってくださっています。
良い子には禁止のBig Muffに関するGear Otaku様の素敵コラムはこちら
それ以外について
上にあげた主要な3種類以外のFuzzも恐ろしいほどの数が、名機が存在します。Fuzzコレクターでも全部は追いきれない、集めきれないというレベル。もはやギターが好きというより、Fuzzが好きでギターを弾いてる、というようなディープな猛者たちがひしめく世界。最近だと、本物は幻とされるBuzzaroundのFuzzのレプリカや系統ものもちらほら目に入るように。Organic SoundsのORGAROUNDがめちゃめちゃかっこいい音してる…。
より使いやすく手に入りやすくなっているRain Stormってやつも好き…!
おわかりいただけるでしょうか、ざっくりとした説明だけでこのボリューム。きっとFuzz初体験の人は情報量の多さにもう目がぐるぐるだと思います。でも大丈夫、とにかく大まかにこんなものがあるのね、ものすごい量があるのね、ディープなのね、が感覚として伝わればいいのです。
また、Fuzzのもう一つの魅力的な使い方として、ギター側のボリュームを使って歪みの量をFuzzからクリーントーンまで変化させて使う、というものがあります。Fuzz選びには、このギターのボリュームをしぼった時の音質の変化をとても重要視する人たちも多いです。音出しをするときには是非どんな変化があるかも試してみてください。
最後に私が思う好きなFuzzについての話を。私は元々高音がきつい硬い音質が苦手な傾向なので基本的にそのようなものは避けがちで、さらに逆にモコモコしてしまうような音もバンド内でうまく調節しきれなくなるので苦手です。荒々しい轟音は欲しいけど、自身でコントロールしきれないような音は使いこなせない、しかも轟音にしてもコード感は残って欲しい、わかります、だったらファズ使うなよ、と。それがきっとまともな意見です。そうなんですが、好きなもんは好きだし使いたいもんは使いたい、ということで、今のところファズフェイス系のKingToneのVintage Fuzzを愛用しています。Fuzz Face系が好きならば、尋常ではないかっこいい音と使いやすさなので見つけたら是非音を出してみて頂きたいです。
ざっくりとまとめてディープなファズワールドの歩き方のようなものを狙ったつもりが、やはりあまりにもディープすぎる世界なのでうまくまとめられた感はあまりないのが正直なところです。ファズの力強さや荒々しさ、ディープな魅力が少しでも伝われば。楽しんで頂けて、もし何かの役に立てたらうれしいです。
今回はとにかくディープでカルトな内容すぎたので、次回は安心安定みんな大好きOverdriveについて書いていこうと思っています。
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