エフェクターコラム07 「KLON Centaur」


クロサワ楽器 お茶の水駅前店様デジマート販売ページより引用

BOSS、Tube Screamerに続くのは現存するオーバードライブで最高価格のプレミアがついているペダルでございます。なぜ今回紹しようかと思ったかというと、昨今数多くのクローンが様々なメーカーから発売され「ケンタウルス系」というジャンルでたくさんのペダルが存在するからです。オリジナルは最早私が何か申し上げる必要もなく、伝説、最強という世界的評価。ライブなどで足元にあるのを見るや、ギタリストは「うわぁ本物のケンタウルスだ…すげぇ…」と、泣く子も黙るレベル。もしエフェクターに興味がなくこのページを開いてしまった方も、Centaur(ケンタウルス)という名前だけは覚えていってください。エフェクター業界最強のパワーワードです。昨今ではプレミア価格の高騰ぶりが半端ではなく、あれよあれよという間に100万円近い値段になっております。もはや当時の日本の定価の17倍。数年前に40万円くらいですら衝撃的だったのに…。100万円と言えば高級ギターと高級アンプが両方買えてしまうレベル。もはや一般的なエフェクターとしての値段ではありません。

この高騰ぶりがどれくらいすごいことかというと、スーパーで並んでいる100円前後のほうれん草が1700円になるくらい。自分で書いておきながらあまり伝わってない感がすごいです。20年間大切に持っていた1000円札が17,000円くらいの価値になった、と言えばもう少し、いや、うーん。

さてそんなCentaurですが、私も一時期使っていましたので、その時の所感など、さらにまとめ記事的なメモとしてお役に立てたら、というコンセプトで書いていこうと思います。

アパートメントでたった一人で作り続けられた300ドルのペダル

ボストンでギタリストとして活動していたビル・フィネガン氏が、自身にとって最高のペダルを作るために友人たちと4年半かけて開発し、それから15年間たった1人で作り続けられていたそうです。開発コンセプトは、彼が愛用していたテレキャスターとTwin Reverbを小音量で鳴らしても大音量で鳴らした時と変わらないリッチさをキープでき、エフェクター臭くないペダル、だったそう。

Centaurの詳しい歴史を知りたい方はこちらのGear Otakuさんへ!

さらにマニアックなエフェクター情報なら、みんな大好き村田さんのデジマート・マガジン Deeper's Viewも

そしてペダルギーク御用達ムック、The Effector BookのCentaur特集号もあります。

というわけで正直もうリンクを上に貼った各所様のサイトで情報としては十分、お腹いっぱいな感じだと思います。が、個人的に追記できるものもありますのでよければどうぞ。

90年代当時の新品価格で6万円弱、要するに当時からしても、びっくりするレベルの高級ペダルだったわけです。のちになってアメリカ現地の価格が300ドル強だったということを知るわけですが。さらに雑誌広告やギター・マガジンのインタビューなどでは目にするものの、製造されていた当時ですら楽器屋さんに現物が並ぶこともほぼないという幻のペダル。当時の私には、まるでCentaurは長らく研究を重ねてきた歪みエフェクター最後の壁、追跡!幻のエフェクターの正体!などと無駄に高いテンションで、たった一台しかなかった入荷品を即お取り置きしてもらい手に入れたのでした。ちなみに私だけではなく、多くのギタリストはエフェクターを購入する時はテンション高めです。

個人的Centaur所感

実際その時に試奏した感想だと、確かに値段が高いだけはあって適度な柔らかさがあり音が太くなり重心が低め、そして高域に独特のキラっとした少し暴れる成分があり、完成度の高さを思い知りました。当時はハムバッカー付きのSGを使っていたのですが、相性もばっちりに感じられ、これは間違いなくいいものだ…と、ついに最強のペダルを手に入れたと、とてもうれしかったことを覚えています。そう、もうこれで歪み系エフェクター探しの旅は終わるものだと、終わるはずだったのです。

あまりWebに書かれていない印象としては、私はBossのSD-1がとても好きだったので、それに似たような感覚もありました。マイルドかつ全体のレンジ感をぎゅっとハイよりのミッドにまとめて気持ちよく聞かせてくれるSD-1の感じ、Centaurはそれより重心も低く太さも感じ、SD-1よりも低い位置のロー寄りのミッドに色気と艶、コクを足してくれるイメージ。先述した高域の暴れ感も決して音が硬く耳に痛いようなものではなく、全体の味の調和を崩さない絶妙なスパイス感、とでも言いましょうか。ゴージャスでリッチでワイドレンジになった適度に暴れるSD-1と言いますか。

Centaurはハムバッカーの付いているギブソン系、もっと言えばLes Paulと一番相性のいいエフェクターというのが当時の感想でした。今でも人からLes Paulでおすすめのオーバードライブを聞かれるとCentaur、もしくはCentarクローン系と答えています。個人的な好みなのですが、シングルコイル系の音を太くして持ち上げてくれるより、ハムバッカーの倍音感をかっこよくまとめてくれるサウンドの方が相性がよく感じたのです。ただし通すだけで音が太くなりプリッとさせてくれるクリーンブースター的な使い方は今となってはストラトでも試したい…。

そんな私がYoutubeで見つけた音源の中で、一番Centaurっぽさを感じた動画がこちらです。

こちらはZombie Klonという2万円前後で売られているCentaurクローンのモデル。ネオソウルギターの旗手、Tom Misch氏のボードにも入っているようです。ミントブルーのかわいい筐体にエフェクターボード派にもうれしい小型サイズ。Centaurクローン系ペダルもいろいろ試した中で個人的に好きなペダルです。Youtubeでも本物のCentaurの試奏動画も数ある中、なぜか私が見つけた中でこれが一番当時の感覚の音に似たものでした。

その後P-90のLes Paul Specialにギターを持ち替えたこと、そして当時一番気に入ったマーシャルのアンプを手に入れたことで、エフェクターを使わずにアンプ直の音が一番のお気に入りになり、持っていたほとんどのエフェクターたちとともにCentaurは手放すことになります。

そしてKTRへ

上述したGear Otaku様のコンテンツにもあるように、2012年、KLONからCentaurの後継機種としてKTRがリリース。コンパクト化や内部の合理化、契約工場での生産が可能なことなどを目標に、ビル・フィネガン氏とアシスタントのジョン・ペロッティ氏で2年をかけて設計されたとのこと。

イケベ楽器特設ページより引用

Kindly remember : the ridiculous hype that offends so many is not of my making.(覚えていてください:あまりにも多くの人を嫌な気持ちにさせる馬鹿げた誇大広告は私が作ったものではない)というフィネガン氏からのメッセージが書かれています。

こちらを試奏した時には私はかつて持っていたCentaurらしさはあまり感じませんでした。当時持っていた個体のせいかもしれませんし、もちろん2つ繋いで比べたわけではないのであくまで記憶からの印象なのですが、ロー感が少なく、クリアな印象でした。全体的にハイ上がりになって音が尖ったと言いますか。あれこんなにトランスペアレントだったか?と。しかしオリジナルの音は時として、「少し昔っぽいODの音」とも言われるので、より現代的に使いやすくアレンジされた、という意味ではこれが正解なのかもしれません。とは言え、ネット上には「とても似ている」「全然違う」とどちらの意見も多く見受けられるようです。ギタリスト國田大輔氏の比較動画をはっておきます。

ここしばらくお店で見かけないと思っていたら、どうやらフィネガン氏が強く主張し頑なに使い続けてきたNOSのゲルマニウムダイオードのストックがなくなりつつあるということで仕様変更が伝えられ、流通が止まり、こちらのKTRもあれよあれよと中古価格が本来の定価の3倍近くの値段に。仕様変更された新しいKTRの音が楽しみでもあります。

そして続々と発売されていくCentaurクローンたち

価格面的にも、もはやオリジナルは一般的なミュージシャンが手に入れられる物ではなくなってしまった印象ですが、となるとクローンペダル(似たような音を狙ったモデル)が現実的な選択肢になってくると思います。いくつか弾いてみた中での所感を書いていこうと思います。

Electro Harmonix Soul Food

Electro Harmonixオフィシャルサイトより引用

みんな大好きエレハモが隠すこと無くクローンですって言っているペダル、この真っ直ぐさ、さすがです。弾いてみた印象ではよりローによりむちっとした成分があり、ハイゲイン。ドライブをあげていくとファズのような歪みになっていく印象です。Centaurか?と言われるとうーん、というところですが、分厚いサウンドを出してくれるoverdriveとして結構好みな印象でした。こちらの動画が私の印象に近かったです。

Walrus Audio Voyager

日本代理店オフィシャルサイトより引用

こちらはオフィシャルでCentaurとは言っていないにも関わらず、この機種自体の人気からかCentaur系と言われるようになったペダル。こちらは個人的には全くCentaurっぽさは感じられなかったのですが、それよりもこのペダル自体が好きです。マイルドで音に透明感があり、目の細かく優しいサウンド。弾いていて気持ちいいし、歪ませてもコード感がなくならないのもとても好きなポイントでした。

RYRA Klone

日本代理店オフィシャルサイトより引用

こちらもかなりのマニアでいらっしゃる作者さんがCentaurのクローンとして制作し、よりパーツの品質、ノイズの少なさ、使いやすさを向上させたペダル。個人的にはジューシーさや、他の多くのクローン系ペダルにありがちなロー感の薄さがない事を特徴的に感じ、ローノイズな高品質感のあるペダルという印象でした。実戦で使われる方にはとても重宝されるイメージで好きです。


おわりに

追記部分も多くなりましたが、どなたかの一助になれば幸いです。価格的に気軽にお店で試奏をお願いできるペダルではもはやなくなってしまいましたが、オリジナルでも製造時期や個体差で音の印象が変わるペダルですし、耳に心地よく聞こえる帯域も感覚も人によって千差万別だとは思います。もしチャンスがあれば是非一度音を出してもらいたいペダルでもあります。そしてその感想をどこかで聞けたりしたらもっとうれしいです。楽しいエフェクターライフを!

更新履歴:
6/13/22 KTRの項目を追加

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