エフェクターコラム09 「トランスペアレント系OD」
いつの間にやらペダル業界の1カテゴリとなった系統、トランスペアレント系。ここ10年ほどでやたらと聞くようになった言葉だと思います。Transparent = 透明。透明なペダルってなんだろう?ということで今回は書いていこうかと思います。
エフェクターというのはギターとアンプの間につないで音をより好みに変えてくれるもの、という説明は以前にしましたが、それが透明なんだったらいらなくね?そう思いますよね。音と変えるためにあるはずものが透明なんだったら存在価値はどこにあるんだと。でもそういう意味での透明ではなかったんです。
音を素直にクリアに、時に瑞々しくしてくれるモダンなエフェクターたち
シンプルに言ってしまえば、音に素直さクリアな気持ちよさを感じるかどうか、みたいなところが、所謂トランスペアレント系と言われるペダルの所以のような気がします。BOSSやTS系などは、ギターとアンプだけだった音の本来のレンジを気持ちいい帯域にまとめてくれる。これが良さであり気持ちよさなのですが、それを「エフェクターっぽいギターの音」として良しとしない人も当然好みとしているわけです。
お気に入りのギターとアンプの音はそこまで変えないで欲しいけどもうちょっと一味ほしい、音を少しだけ前に出てくるようにしたい、ちょっとだけ太く元気にしたい、そんな目的に合う「原音に対する味付けが少ないペダル」がトランスペアレント系と言われると思います。素直な音って表現されることもあります。
「エフェクターらしい音の変化をしていないもの」はアンプランクなどと言われることもありますが、このアンプライク、と言われるペダルの中でも音に素直さとクリアさを感じさせてくれるものだと「トランスペアレント系」という印象になるようです。
ジャンル分けなんかまぁどうでもいいんですが。素直さや透明感や音にクリアな瑞々しさを感じたら「ああトランスペアレント!」って思ってOKということです。「うそぉ?そんな感じおれはしないけど?」って言われることなんか多々あるので気にしたら負けです。
デジタル機材との相性もいい
最近なんでトランスペアレント系のサウンドが人気があるのか、と思うと、まず音が現代的なことが理由でしょうか。現代的な音ってなんだよ?ってなると思いますが基本的にヴィンテージのような、甘く、暖かく、枯れた、こなれた、時に渋さすら感じさせるトーンとは真逆な感じの、クリアで元気でローノイズな感じ、と言えばいいでしょうか、その手の感触があると、「モダン(現代的)」という扱いになるようです。
そしてこのモダン系のメリットは、デジタル系機材との相性の良さでもあります。最近のレコーディングはもう殆どがパソコンのDAWを使って録音するので、完全にもうデジタルレコーディングなわけです。もはやアンプもパソコンのアンプシミュレーターしか使ってないというギタリストも多い時代です。そうなった時に、デジタル系と相性のいい、扱いやすい音質というのは確かにあって、トランスペアレント系のペダルの持つクリアさは、デジタルの持つクリアさとも相性がいいように思います。Youtubeに多くある弾いてみた系のコンテンツでもこの手の音作りを好んで使っている方がたくさんいると思います。
トランスペアレント系の代表機種
それでは実際に音を聴いてみましょう。
Paul Cochrane Timmy Overdrive
トランスペアレント系の名機と言えばまず挙げられるのがこのTimmyだと思います。個人的には結構玄人向けなペダルの印象で、その理由は他のペダルと比較して派手でわかりやすい音質変化のなさ、だと思います。しかし確実に気持ちよくギターを弾かせてくれる、そしてギターやアンプを選ばない対応力の広さ。それがわかるともう使い勝手の良さと音の気持ちよさに病みつきになってしまうペダルだと思います。
Walrus Audio - Voyager
Centaurの回にも登場したVoyager。こちらはTimmyと比較するとオーバードライブらしい音質変化はあるものの、そのクリアさにとても特徴がある印象です。クリーンかつマイルドで目の細かいサウンドは、よりハイグレードになったSD-1のような印象もあります。この音が好みかそうじゃないか一度試してみて欲しいエフェクターでもあります。Warlus Audioの歪みは他のものも全体的にトランスペアレントなテイストがあると思います。
Y.O.S.ギター工房 SMOGGY OVERDRIVE
日本が誇るオーバードライブの名品として知られるこちらのペダルもトランスペアレント系ともされると思います。
まず特筆すべきがもう通しただけで音がギターがワンランクアップしたかのような、ハイエンドギターのような高品質な音に。私が初めて音出しした時の印象は「ああこれは高級なペダル!!!」でした。エフェクターらしさというよりは、高級なオーディオ機材を通して音をグレードアップさせたかのような、踏み込んだ瞬間に音の変化はあるのですが、エフェクターらしくはないのです。
そして特筆すべきは音の速さとクリアさ。ワイドレンジになり、ギターどころかアンプまで一気にグレードアップしてしまったんじゃないかと思わせてくれるほどです。音のハリもアップしてぷりっぷり、ピッキングに対するタッチもすごく敏感に応えてくれます。価格も高価ですが、ちょっと異次元のクオリティにあるオーバードライブ。運良く店頭で見つけられたらぜひ一度音を出してみてほしいと思います。
余談ですが、こちらのY.O.S.ギター工房の吉田氏は以前ESP時代にタモリ倶楽部に出演されエフェクター制作の先生をやられておりました。楽しいコンテンツなのでぜひ。
おわりに
本来なんでもジャンル分けしたいわけではないのですが、今まで紹介したものとはちょっと毛色の違う、こんな系統もありますよ、というつもりで書いてみました。参考になったり楽しんでもらえたらうれしいです。
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