NHK 貧困報道炎上 「子どもの貧困」を煽る反日自治体の正体①
毎晩7時に公開されている、岩田温・大和大学政治経済学部政治行政学科准教授の動画。
今月14日に公開されたものを見て、5年前の「ヘンテコ報道」を思い出しました。
そこで、5年前に書きながら日の目を見ていなかった文章を、かなり長いこともあって、複数回に分けて公開していきます。
※肩書などはいずれも当時(5年前)のものとなります
※該当先が削除されている場合を除き、可能な限りリンクも張っています
NHK報道が炎上
8月17日、夜7時からの「NHKニュース7」が「子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える」と題して報じた内容に関し、インターネット上の議論がヒートアップし、「お祭り」や「炎上」と呼ばれる状態になりました。
冒頭で、松村正代アナウンサーが、厚生労働省の統計によると、平成24年時点で我が国の子供の6人に1人が貧困状態にあるとされ、一人親世帯の半数以上が貧困状態にあり、大学や専門学校への進学率が全世帯の割合に比べて30ポイントも低いと説明しました。
それに続き、こうした実情を多くの人に知ってもらうため、神奈川県の「附属機関」である「かながわ子どもの貧困対策会議」によって企画された同日のイベントで、経済的な理由で進路の選択が難しいとされる女子高生が自らの言葉で貧困の現状を訴えた様子や、その女子高生の学校や家庭での映像が流れました。
しかし、映像にあった女子高生の部屋にモノがあふれていたことから、「本当に貧困なのか」と疑問を持った人が多かったようです。
さて、今回の報道で取り上げられた「かながわ子どもの貧困対策会議」は、神奈川県が「かながわ子どもの貧困対策会議設置要綱」を根拠に設置していますが、次に掲げる地方自治法の条文、判例や判決を根拠に、その法的位置づけが違法状態であることが極めて強く疑われるのです。
地方自治法にはこうあります。
【地方自治法 第百三十八条四第三項】
普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。
この条文から、地方自治体(地方公共団体)が附属機関を設置する場合は、国会や地方議会での議決を経なければならない法律や条例に根拠にしなければならないことが分かります。
また、裁判所が運営する「裁判例検索」で検索すると、この条文をめぐる裁判所の判断が記された、次の三件の判例を見つけることができます。
【判例1】
平成11(行ウ)8 損害賠償等請求 (平成14年1月30日 さいたま地方裁判所)より抜粋
第3 当裁判所の判断
(中略)
2 争点2(本件懇話会の附属機関該当性)について
(中略)
更に,この規定は,附属機関は法律又は条例の定めるところにより設置することを要し,地方公共団体の長のそれより下位の行政の内部規律,例えば決裁により制定される要綱などで設置することを許さない趣旨を含むものと解される。
附属機関の設置は,法令に特別の定めがない限り,各執行機関において規則,規程その他の内部規律に基づいて任意に行うことができるものとされていた従来の取扱いを改め,今後は,行政組織の一環をなす附属機関の設置は,すべて条例に定めなければならないこととする趣旨で本条が新設された経緯(昭和27年8月法律第306号)からみても,このように解するのが相当である。(9ページ目下部辺りから)
(中略)
そうすると,本件懇話会が条例に基づかず,越谷市の内部規律にすぎない本件要綱によって設置,運営されたことは,前記規定(地方自治法138条の4第3項のこと。※筆者補足)に違反したものというべきである。(10ページ目中ほど)
【判例2】
平成13(行ウ)25 若宮町違法公金支出返還請求事件 (平成14年9月24日 福岡地方裁判所 住民訴訟)より抜粋
第3 争点に対する判断
(中略)
2 本件公金支出の違法性について
(1) 「まちづくり委員会」の性格
(中略)
地方自治法によれば,普通地方公共団体の執行機関は,その担任する事項について調停,審査,審議又は調査等を行う附属機関を法律又は条例の定めるところによって設置することができると規定している(地方自治法138条の4第3項,202条の3第1項)。このことは,執行機関の附属機関を設置するには法律又は条例の定めるところによることを要し,附属機関が法律又は条例で設置されていない場合,附属機関の委員の任命行為は無効であって,委員に対する報酬等の支払いは違法である。(3ページ目中ほど)
【判例3】
平成24(行ウ)262等 公金支出差止等請求事件 (平成26年9月3日 大阪地方裁判所 住民訴訟)より抜粋
第3 当裁判所の判断
(中略)
3 争点②(故意・過失等)について
(1) 前記2のとおり,本件各組織等は,いずれも附属機関に当たるにもかか
わらず,法律又は条例によることなく設置されているものであるから,その
設置は,附属機関条例主義を採用する法138条の4第3項に反して違法で
あり,委員等に対する報償費の支払に係る本件各財務会計行為も,法令上の
根拠を欠き,違法であるというべきである。
これらから分かるように、法律や条例でなく「要綱」を設置根拠とする組織に対しては、地方自治法違反であるとの判決が出ています。
さらに、このイベントを企画した「かながわ子どもの貧困対策会議」のメンバーにNHKの戸田有紀記者(報道局友軍プロジェクト)が在籍していることも判明したため、NHKによる自作自演の報道ではないかとの指摘が相次いだのです。
ちなみに、戸田記者には「NHKスペシャル シリーズ東日本大震災『追跡 復興予算19兆円』」に携わったことで、放送界で権威があるとされているギャラクシー賞の第50回大賞の受賞歴があります。
現職のNHK記者がメンバーの一員である同会議によって企画されたイベントをNHKが取材対象とすることは、取材する側とされる側が同じ立場にあることから、利益相反行為に該当するとして放送倫理が問われます。
この事実は、取材者や記者といった現場職員レベルではなく、NHK全体の法令順守や企業統治が問われる問題でもあります。
「子どもの貧困」の定義
さて、問題の報道の中では、「厚生労働省による統計によると、平成24年時点で我が国の6人に1人の子供が貧困状態にあるとされ」るとの説明があったのですが、そもそも「貧困」とはどのように定義されているのでしょうか。
それは、厚生労働省が公開している「国民生活基盤調査(貧困率)よくあるご質問」で確認することができます。
図の上部に「相対的貧困率」についての質問があることから、問題となる「貧困」の定義とは絶対的なものではなく相対的なものであることがわかります。
その算出方法は、図の①~⑥にあるように、世帯の可処分所得を世帯人員数の平方根で割って算出した「等価可処分所得」を低い順に並べて中央値を求め、その中央値の2分の1の値で「貧困線」を引き、それを下回る数値の者が「貧困」とされ、その人数xの、全体の人数nに占める割合が「貧困率」とされていることがわかります。
図に示された手順によって求められる「相対的貧困率」の算出方法はOECDの作成基準に基づくものではありますが、条件設定として明らかに不適切と思われる点が何点かあります。
「貧困率」を算出する際には、次の図の上部から分かるように、資産の多寡を考慮しない条件設定となっていることがわかります。
また、可処分所得とされるのは就労所得、財産所得、仕送り等、公的年金、その他の現金給付のみであり、資産のみならず、保険・医療・介護サービスなどの現物給付が考慮されないことが分かります。
この算出方法では、仮に公的機関が現物給付による支援を行ったとしても可処分所得には反映されないことになるため、どれだけ貧困対策として現物給付を実施しても、「貧困」は解消されないことが分かります。
今回は以上です。