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17 星屑のピアノ

星屑のピアノ
        

ガラスの硬質な
伽藍をらせんとなって
ジグザグの光が
幾何学もようの衣を
脱ぎすててのぼってゆく

その裾には 
昨日がない

未来という時間へ
情動し 
扼腕する

列をなして
揺籃の
夢をみる

空を
揺らせ
ぴあの弾きよ
吸いこまれていく
表象に
すべての
存在をつくりたもう
その造りびとよ
神よ

陽だまりの安らぎを
愛するものよ
それが安らぎと信じるものよ

伽藍をゆらせ
だきしめる
あの光にみちた
海からのいざないを
それは虹をかけ
通り雨の町を
七色にいろどり
世代をいくつも越え
いま、紫とオレンジの
インクを流し
まぜあわせた
夕の海となる

水辺に
草眠る

手ゆびの 
醸す 
荘厳と 
喜びにみちて
奏でる
ぴあのから
風がおこり
旋律が
またたく
星をともす 
星は川となって流れ
ふたたびめぐりあう

ここにいて
とびこえよ
いざなえ
痛みに
満たされて
ゆく心

狂喜乱舞の
烈しさ
鍵盤も砕けよと
鳴らし立てる

悲しみを か
青春の裏側をかけぬけようとする
いたたまれない
焦燥を か

ときにささやき
ときに叫び
ひきむしれる音が
截ちきられた楽章が
天をかける

音の
雨になって

ここに
ここに
立つ

立ち
ふみならす 

もどかしさに
生きることの
輝きに
あがいている
贖っている

たたき出す
リズム
その裾には
昨日がない

行進する 
柱廊は動く
きざはしと
なる
月の下で
海は
謎を解き明かす

雨と雪と風がもう
数百万年のあいだ
波を洗っていて
いつからともなく
海鳥は
頭を風上にむけて群れている

母なる星よ
わが今生のやどりよ
ふりたてる
旗をもて

ぴあのよ
行進せよ
豊饒と
饒舌の宴
現代の
夜空に
まきちらす
歴史という時間を

砕けて
星くずに
なる 
ぴあの弾きの
その音に


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