よりひかえめに、よりよく。
これは、5月20日に90歳となったデザイナー、ディーター・ラムスの言葉。(2022年時点)
誕生日を記念して、期間限定で彼のドキュメンタリーフィルムが無料公開されており、この週末見ることに。
「よりひかえめに、よりよく。」
これは、彼が考えている「よいデザイン」の10ヶ条のうちのひとつ。
でも、映画を見てわかったのは、この言葉の主語はデザインではなく、「人々の生活」であるということ。
今や、デザインは生活中にあふれかえる。
デザインされていないものを探す方が難しいし、モノだけでなくかたちのないコトもデザインされる時代。
そんなデザインであふれた部屋にいる私の胸に、彼の言葉が静かに響く。
映画内に出てくる、ラムスがvitraの椅子ギャラリーを訪れるシーン。
世界的名作と言われる数々の椅子たちを、手に持った杖で指しながら「これはよくない」「好きじゃない」とコメントするラムスの姿は、なんだか愛らしい。
でも、そうした批評と、自分のデザインに対するこだわりや誇りは、非常に的を射たもの。
デザイナーはきっと耳がいたいはず。
「よりひかえめに、よりよく。」
この言葉を体現したデザインを提案することが難しくなっている、現在の世界。
デザインだけでなく、さまざまな物事がよりひかえめになれば、ラムスが思い描いた、よりよい世界になるはず。
ラムスの言葉と過ごす、ひかえめで豊かな週末。
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