体温と、距離と、想い。 #6
いいものはフェアに認めたい。
同じものを見ているのに。
さっきまで同じことに怒っていたのに。
すぐに、その良いところを見つけて、きちんと言葉にできるのはあの人だけ。
逆に。
いつもあんなに褒めているのに。
真剣な目で次々と鋭く問題点を指摘していく厳しい言葉を、きちんと扱えるのもあの人だけ。
自分の見栄とか意地とか正当化したい気持ちとか、好き嫌いとかそういう勝手な関連付けをしながら受け取ってしまわずに。
ひとつひとつに対して、きちんとフェアに向き合えるところ。本当に本当に尊敬しているから。
ほら、でもここは結構良くないっすか?
頭の中に柔らかく響く声で、わたしは一つ深呼吸する。
誰に見られているわけでなくても、ひとつひとつに自分の視点で向き合うことで、あの人の温かさを感じることができるのだから。
♬ぎゅっと君の手を 強く握るから 何も言わず握り返して
体温 / 松尾太陽