橙色の景色
ひとりで歩いている時間のような曲だと思った。
松尾太陽さんのものがたり収録曲「橙」がひとあし先にラジオで解禁された。軽快なメロディと、太陽さんの歌声を低音から高音まで余すとこなく堪能できる、ずっと聴いていたくなる素敵な曲。景色を歌いながら、どこか気持ちは遠くて深いところにあるような不思議な感じが、ひとりで歩いている時間に似ていると思った。
どこかへの移動中でも、歩くことが目的の散歩の時でも、ふとした瞬間に時間が混ざることがある。歩いている自分と頭の中の自分に少し距離ができるみたいな感覚。地面の感触や風、日差しや喉の渇き、すれ違う人たちとの距離、分かれ道でどちらに行こうか決める自分。その実感は紗幕の向こう側のようにどこかふわっとした手応えとなり、思い出の中の言葉や笑顔、景色や気持ちに心が割かれているとき。いつもよりむしろ鮮明に周りのものに目は届くのに、ピントはどこか遠くにあっているみたいな不思議な時間。
何に想いを馳せているか、言葉にするのは難しいけれど。歩く自分がその想いと重なると、いつも少しだけ何かを受け入れて、一歩前に進むことができるようになることを知っているから。一歩ずつ落ち着いて歩む。
ものがたりがリリースされたら、橙を聴きながらたくさん歩こう。とても楽しみだ。
橙 / 松尾太陽
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