ハルの花とハルの想い出 #5

♬色褪せないキミの願い、また巡り合うその瞬間に

ハルの花 / 松尾太陽


「多分、俺の方が給料はいいと思うんですよね」

あなた、仕事できるけどこき使われるタイプだから。ほら、俺はそのへん要領いいので。コスパ重視で動けるから。

程よく酔いが覚めてきた帰り道。ご機嫌な調子で未来を語る彼の話を聞く。

あなたの教え子はきっとどんどん増えていくから、そのうち大人数の飲み会とかしちゃってさ。給料はそんなよくないでしょうけど、奢ろうとするわけですよ、あなたは。

まるでその様子が見えているかのように確信的に語る彼は、してやったりという顔で私を見てニヤニヤと笑う。

そこでね、俺が、サッと出て行くわけですよ、俺の方が多く出しますよ、って。だって俺の方が給料いいですから、ね、師匠?って言って。

堪えきれなくなったように笑いながら。

「ああ楽しみだ!悔しいでしょ?そういうの超悔しいでしょう?絶対そうしてやりますから。教え子が増えても、一番は俺ですから。」

ハルの花を聴くと、リアルな質感を伴って思い出されるあの日語られた未来は、あの人が願った未来は。遠く遠く叶わなくなっても、まるで本当に起きた未来のように、鮮やかに咲き誇っているのだ。

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