株式会社アナザースカイ24

目尻をこすり目頭をこする。
それでも足りず再度目尻をこする。

看護師が立つ右側ではなく左側に顔を向け、ひっそりと人差し指でひっそり指先で涙を拭う。

のではなく、看護師と、左目の目尻に小さなほくろのある、笑うと目尻が下がる、色白の肌にピンクの衣服が似合う、化粧けのない看護師と、
(菩薩様インダハウス。ほくろー、色っぽ。たまらーん。)
フェイストゥフェイスで、菩薩さながらの笑みをたたえた、ずいぶん年若いと思われる、仏道界界隈及び医療業界期待のニューカマーであろう若き菩薩を、ストレッチャーに毛が映えたような簡易のベッドから、体を横たえたままアラタは見上げ、小学2年生のようなしぐさで、左の手の甲でごしごしと、

涙を拭った。

「辛かったですよね。大丈夫ですかね?うん。大丈夫じゃないですよね。辛いですよね。泣いちゃいましょう。あと、先生が仰ったように検査。体調が落ち着いたらちゃんと検査を受けてくださいね。」

アラタは笑う。


辛ければ辛いほど、傷めば傷むほど自分は、つい、心とは裏腹に、躊躇わず、笑いを正義とし、笑う。
腑に落としきれないであろう負を、それでも受け入れようと目の前にいる他者が、自分に関わるその人が幸せになれるならと、もがき抗い受け入れるため笑う。笑いを携える。

涙を拭いアラタは医師の言葉を反芻する。

『胃潰瘍かなと思うんですが、ストレスとか、思い当たることはありますか?』

『そうなんですね。そうするとやっぱり、胃潰瘍のね懸念がね。』

『僕は、ヒトの精神に興味がありますがなにより肉体に興味があるんです。内臓。内臓にはとても興味があります。
精神の、心の不調はほぼ必ず内臓に大なり小なり影響を与えるんだと思います。
自分は大丈夫とスルーしても、内臓はきちんと異変を察知してくれる。内臓は優秀なので、きちんと信号を発してくれる。
自分の内臓は自分で守りましょう。
僕らがどんなに力を尽くすそうと、ご本人がきちんと信号を察知して労り労い大切にして内臓を重んじる行為は、医療に勝るとも劣りません。
大切にしてください。内臓も精神も。』


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