マメの家

小学生の頃、「マメ」という同級生がいた。苗字が遠藤だったからシンプルにエンドウマメから取ってマメ。マリカーをやっているとキャラに入り込みすぎてだんだん体がねじれていくので「ねじれ国会」と呼ばれていた時期もある。たしか、友人の高橋が名付けた。

休日はみんなでマメの家に集まってテレビゲームをし、飽きたらすぐそばにある「中央公園」で野球をするという流れがすっかり定番になっていた。マメの家のリビングは高級な匂いがして、ゲームがたくさん置いてあった。スマブラDXやポケモンスタジアム2、カービィのエアライド。僕の家ではテレビゲームを買うことが許されていなかったので、マメの家でゲームをするというのはハメを外す行為で、それはもう楽しかった。エアライドはとりあえず見つけたアイテムに片っ端から突っ込んでいくことしかできず、一度も勝ったことがなかったけれど、楽しかった。

マメが飼っていた柴犬のタロは庭の低木に繋がれていて、道行く散歩の犬に吠えたり、ちょっかいをかけにきた町内のカス同級生(隼太郎)にかみついたりしていたのを覚えている。それでもかわいい犬だった。

マメは小学校の頃スポ少の野球チームに入っていたが、中学ではテニスを始め、引き続き野球部に入った僕とはそれほど会わなくなった。それでも家が近かったので毎朝僕とマメを含む近所の同級生4人で一緒に登校していた。ちなみに僕の家は中学校の目の前にあるので、待ち合わせ場所を経由すると遠回りになる。でもなんだかんだ幼馴染だしなあと、「4人で過ごす時間を大切にしよう」などと仰々しく考えていたわけではないけれど、小学校からの関係性が切れていくのがなんとなく怖かったのだろうと思う。

高校が別々になるとマメとは本当に会わなくなった。大学も別々だった。一度だけ、成人式の日に会場でマメを見つけ、昔一緒に登校していたメンバーで写真を撮った(1人は式に不参加だったので3人で)。懐かしさからお互いテンションは高めだった。でも僕はなんとなくマメをマメと呼ぶことができず、遠藤と呼んだ。足を止めて話していた時間は15分にも満たなかったと思う。お互い、約束していた別の友人の元へ向かうためすぐにお別れした。
それ以来、マメとは会っていない。

この前実家に帰ったとき、ふと中央公園の前を歩いた。あの頃から大きく様変わりしたわけではないが、公園を囲むようにドッグランができていたり、ボロボロだった金網が修繕されていたりと、それなりに時間の経過を感じた。周囲の空き地もずいぶん減った。
あの頃空き地の向こうに見えていたマメの家は、手前の新しい住宅群に隠れて見えなくなってしまっていた。
タロはまだ庭に繋がれているだろうか。少しだけ気になった。
家の前を通って帰るか迷ったけれど、タロがそこにいなかったらかなり嫌だし、もしタロに吠えられでもしたら少しだけ嬉しいけど、やっぱり犬に吠えられるのは嫌な気分になるだろうから、普通に帰った。

そういえば、年末に自分の結婚式を控えている。友人はそれなりに呼ぶけれど、招待者リストにあのころ一緒に登校していた同級生の名前はない。
昔の友人にもう会わないのも、マメの家が見えなくなったのも、自分が未だに仕事に打ち込めずにいるのも、全部少しだけ寂しい。時々昔のことを、良いことも悪いこともずるずると引きずりたくなってしまい、本当に何の意味もないとわかっているのだが、色々あるんだから少しくらい浸らせてくれ!と誰ともなく呟きながら、結局は式のエンディングムービーを自作するのが面倒くさすぎて今日も進捗無しのままベッドに入ってしまった






























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