ちいさなうつわ
浪人していた街の、横にある街。
書籍であふれる大好きな場所だった。
つらかったときを、古本がなぐさめてくれた。
ある日、頻繁に通っていた書店が改装するとのことで、大きな広告が出ていた。
それは思わずリツイートしてしまったほど、素敵なものだった。
いいなあ。絶対にまた行こう、と思った。
後日、本当にたまたま。知ってしまった。
今まで、どんな背景があっても、素晴らしいものは認められると思っていた。
それができない器の小さな人間に、なりたくない。ぼくの唯一の矜持だった。
ダメだった。
ぼくは、その街に行けなくなった。