雨の日の出来事
「ねえ、先生」
「ん?」
(あかん、、、大した人間でないのに、先生と呼ばれることに慣れてしまっている自分…)
「すきな人、居る?」
(はいはい、)
「へっ?」
「すきな人。昔でも」
「居なかったわけじゃないけどさ」
(突然だなあ)
「うん」
「どれも、あんまり素敵なもんじゃなかったな」
「そうじゃろうね。盛大に空回ってそう」
(ほーん…なんやねん、ほんま)
「ところで、」
「あっ、ノーコメントで…」
「アリと思う?」
「このままじゃ望み薄じゃねえ」
「ひどい!」
「まあがんばりんさい」
「先生もね」
「はいはい」
(居ないんだけどなあ)
「ねね、図書館で読んだんじゃけど。『こゝろ』の「先生」って、なんで死ぬことに決めたん?ぼくなら死なんけん。お嬢さんも居るのに」
「聞いたらさ、それは高校で勉強するって母さんが言いよった」
「せやね。私も死なんけど、、、わかる日が来てほしくはないな」
「つまり、そんな状況になったら、わかるってこと?」
「たぶんね」
「先生はどっち?」
「Kかな」
「そうじゃろうね、そんな感じ」
「」
「また明日来るけん」
「雨降っとるけえ、気をつけて帰り」
「わかっとる!」
今でもわからんもん、と思う。
とりあえずわかるのは、国語の教科書ってよく出来てたなってこと。