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私のアスタリスクの花言葉

1.最初に

 自分はそれほど面白い文章を書けると思わないし、なんなら文章を書いて誰かに読まれる事は恥ずかしいと思う人間だ。それでも、この投稿だけは書かずには居られなかった。だからこれは、読まれてもいいし読まれなくてもいい。ただ、どこかの仮想住人の誰かに何か伝わってほしい。そう願う。

2.遅すぎる挑戦

 2020年3月1日~同年6月14日。約3カ月半を掛けて、VRChatの謎解きワールド「アスタリスクの花言葉」を攻略しました。おそらく挑戦者の中でも最長級の期間を掛けた攻略だったと思います。諸所理由はあるのですが、これだけ長く掛かっても攻略できた事は嬉しく思います。

 そもそも、アスタリスクの花言葉というワールドの存在を知ったのは、ワールド公開がされた直後。『有名なワールドクリエイターがまた何かすごい体感型謎解きワールドを公開したらしい』くらいの印象で、ソレに言及するtweetを見掛けました。しかし、当時の私は出張でVRに入れない事が断続的に続いたり個人的に人間関係がちょっと複雑化してるタイミングで、流れに乗って攻略に出る機運ではなかったので、結局こんなに遅くなっての挑戦となりました。

 当然、半年前のコンテンツであり周囲ではもうブームは去っており、一人でゆっくりと、答え合わせやらしながらでもやっていくつもりでワールドへ挑戦することになりました。

3.そうだ、アスタリスク行こう。

 恥ずかしながら、自分はよく「人」に対する感情や関係性を自問自答することがあり、その度に「自分の周囲における安定した人間関係上、自分の成してる役割は特別なものではないのではないか?誰かの何かとして私個人が求められる事はないのではないか?」といった事を思案する癖があります。ちょうど2月の終わり頃も毎度のように感傷に浸って日々を浪費していた私は「何か久しぶりにVRらしい事を体験したい。鬱々とした気分を変える刺激が欲しい!」とぼんやりとネット記事を眺めていました。

 VRならではの体験、といえばやはり圧倒的な風景美だったり、世界を縦横無尽に駆け回るものだったり、空間演出の凝ったパーティクルライブだったり。およそ現実世界では見ることが叶わない派手な物の印象が強かったのですが、その時私の目に留まったのは(見た目は)地味なあるワールドの写真たちでした。何人もの人が、同じ構図で、フレンドたちと並んで、背景も白い壁しかない集合写真を上げている。コメントには「アスタリスクの花言葉、フレンドと一緒に駆け抜けました」「フレンド達と攻略しました」「探索を完了しました」

 具体的な感想があまり書かれず、普段「映える写真」を狙って撮ろうとするVRChatの住人達が揃って地味な写真を上げている光景に興味を惹かれた私は、その時はそれ以上何も考えずにワールド一覧を開きました。

 そうだ、アスタリスク行こう。

 きっとそこに行けば、VRならではの凝った仕掛けと大掛かりな演出でもあるのだろう。今の鬱々した気分を晴らしてくれる何かが待っているかもしれない。そんな期待を持って。

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4.秘匿された謎解き

 当初、私が見たかったのは「VRならではの演出」であり、まじめに謎解きなんてしなくても面白い仕掛けやら不思議な視覚効果を堪能出来ればそれでいい、そんな考えで挑み始めました。しかし「アスタリスクの花言葉」はそんな私の甘さを一部屋目から挫いてくれました。一人で部屋の中をうろうろし、置いてあるオブジェクトを手に取り、扉に書いてあるヒントと思しき図を眺め、窓から見える風景から手掛かりを探そうと睨みつけ。結局一人では何の進展も見出すことができませんでした。頭が固い。

 実はこの後も、いくつかの部屋は完全にどん詰まりとなり何度も「解答」を探してネットを検索したのですが、前半の部屋以外はほとんど何も明確な答えを見出すことができませんでした。それだけこのワールドの「謎解き」は攻略組には魅力的だったのかもしれないし、あるいは興味を失った人達はそれをわざわざ書かなかったのかもしれない。いずれにせよ、リリースから半年も経った謎解きワールドの答えが見つからなかったのは衝撃でした。スピード感があり流行り廃りが激しいVRChatの中で、これだけの期間を経ても答え合わせが出来ないというのは想定してませんでしたし、それを秘匿している「攻略組の想い」は相当なものなのかも知れません。

 ※事実、私も解答については細かく書こうとは思いません。

 この記事を読んでいる方の中にこれからアスタリスクの花言葉に挑戦しようとする方がいれば、是非覚えておいていただきたい。

 ネット検索は手段であり、解答ではない。

5.Discord推奨?

 攻略に乗り出してから1週間。とりあえずFriend onlyのインスタンスを建てて、攻略した部屋まで一人で戻り、そこでまただらだらと次のヒントを探して過ごしていたある日。そういえばと幾つかの記事を思い出しました。

『Discordで攻略に向けたチームを結成しました』『外部連絡用の攻略Discordの立ち上げ』『Discord等を推奨していたので鯖を用意しました』

 なるほど?つまりはワールド維持とか参加している人が思いついたことを話し合う簡易攻略wikiを身内で作るわけですね?ということで私もひっそりとDiscordのサーバーを立ち上げ、1週間ほどTwitterの固定ツイートにしたり、リツイートで呼びかけを行ってみました。

 結果、私以外のサーバー参加者は一名でした。半年前のコンテンツですし仕方ないところなのかもしれません。沢山集まってワイワイしすぎるのも当時の心境的にはツライものがあったので少数を望んでいたところはありましたが、ちょっと寂しかったのを覚えています。

 結局、攻略完了まで二人だけのサーバーを使って情報の共有を行い、なんとか完走するに至りました。今後当該サーバーを外部に公開することはないと思いますが、サーバーに参加されなくても協力してくれたFriendの名前はサーバー内に刻んであります。みんなありがとう。

名称未設定

6.感じ方の違いと私が求めていた体験

※一部ネタバレにつながる表現の可能性あり

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 攻略中に『アスタリスクの花言葉』に関する情報を探してネットを検索し、何度となく見かけた感想の中にはこんなものがありました。

 『VRChatの謎解きワールドなのに、外部サイト情報や外部の前提知識、外部サービスを使わないといけないなんてナンセンス』『複数人前提だから、一人では出来ない仕様がダメ』『ほかのワールドを見に行かないといけないのはただの意地悪』

 もっとキツイ表現をされている物もそれなりの数を目にしました。また、攻略途中にJoinしてくれたFriendも「そういう仕様が嫌だからやる気なかった」と教えてくれた方もいらっしゃいました。

 確かに、VRChatのワールドだけで完結していない仕様は人によっては手間だったり、前提知識がないと分かりにくいものは不快だったりするのかもしれません。それ自体は理解できない感覚ではありません。ですが、私が感じたのは全く逆のものでした。先の記述で「VRならではの」等と言っておきながら難だとは思うのですが、私はこの「ワールド単位はおろか、VRChatだけで完結していない仕様」にとてもわくわくしたものを感じました。表現は大げさかもしれませんが、あらゆる「情報」を収集、整理、連想して一つのワールドで利用する体系が、昔に夢見ていた統合されたネット世界を駆け巡る表現に近く感じ、それらを実際に体験できるコンテンツだったからでした。(某公安のアニメ作品等に大きく影響を受けています)

 もっとも、自分の感性を他人に強要するものではないと思うので、その点からもDiscordが二名のみだったのはある意味正解だったかもしれません。長く掛かる攻略に、同じ方向を見て同じ景色を共有できる相手でなければ互いに疲れてしまったりしそうですし。

 そういったわけで、落ち込み気味だった私が珍しく心躍るような感覚になってのめり込んだアスタリスクの花言葉というコンテンツは、その最後までを諦める選択肢を持つことなく完走することができました。

7.各部屋の感想

1部屋目:Friendのゆず君のおかげで攻略。部屋そのものの雰囲気が好きで、アスタリスクの花言葉関連を調べるときにはここで過ごしたりしてました。

2部屋目:一瞬で理解してテンションが上がりました。

3部屋目:仕様上わからずじまいだったのでおきゅたんの配信を参考にしました。

4部屋目:徐々に片鱗を現し始めたアスタリスクの花言葉。結構掛かりましたが、Friend攻略者Nakaさんの助言もあり楽しく攻略しました。最後の決め手はFriendのSanaちゃんでした。

5部屋目:Friendのあまよりさん他の協力で意味を理解。同時に、ワールド作者のヨツミフレームさんの「お願い」の意図も何となく理解しました。

6部屋目:正しい攻略手順ではなかったのですが、偶然の発見から攻略。後になって意味を何となく分かった気でいますが、未だ理解しきれていません。

7部屋目:ヒントをくれたのはFriendのMjunさん。攻略の足掛かりまでは至ったのですが結局最後の詰めを理解できず、Friendでデバッグ組のゆかたゆさんにこっそり答えを頂きました。(わからなくても仕方ない、と攻略組からも意見を頂いたため)

8部屋目:気付くのに少し時間がかかりましたが、部屋の意味を理解した時のワクワク感と、にらめっこしている時の高揚感、そして扉を開いた時の驚きはここが一番でした。

9部屋目:決して難しくはありませんでしたが、3か月掛けても挑戦してよかったと心の底から思いました。特別な時間を過ごせた気がします。

8.余談、前日までの流れの良さ

 実はアスタリスクの花言葉攻略の前日までの数日。これは全くの偶然だったのですが、最高の流れが私の中に出来ていました。

 一つ目は自宅ワールドを用意していたこと。そこに飾るものを探して、沢山の過去の写真を眺める時間がありました。

 二つ目はある映画を見たこと。Friendさんと『メッセージ』という映画を一緒に鑑賞しました。独特な空気感の映画で、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、物思いに耽るには丁度いい作品でしたね。

 三つ目は私もお世話になっている『1989年以前爆誕呑み会』に参加したこと。同じ様な年代、あるいは落ち着いた年代。同じ様に昔を懐かしめる仲間と過ごす時間が持てたことです。

 これらの意図しなかった準備が、私がアスタリスクの花言葉の攻略した際の余韻に深みを持たせてくれたので(本当に偶然ではありましたが)最高のタイミングでの攻略となりました。

9.攻略を終えて

 所謂エンディングの間、演出はもちろんですがこれまで掛けた時間やらなにやら(稚拙な表現にせざるを得ないのはご了承ください)が自分の中の感情を高めてしまい、つい隣にいるFriendの事をちらちらと見てしまいました。きっと同じ物を見て、似たような方向の事を感じて、けれど別の景色を観ているであろう大事なFriendです。(視界の端には攻略組のNakaさんもいらっしゃったので、昂ぶり過ぎない程度に抑えられたのは良かったのかもしれません)

 1部屋目に戻り、憧れていた構図の写真も撮りました。

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 これは自惚れかもしれませんが、ここに至ってようやく「アスタリスクの花言葉攻略組」と同じ目線で作品に係わる様々な物を見れる、一つの目標点に立つことができたのかなと思います。作品から受けた印象はまだ余韻を含んで私の中に巡っていますし、自宅ワールドにはアスタリスクの花言葉で使われていたBGMを導入するほどに感化されています。元々の私の思い描いた世界観と、アスタリスクの花言葉が語ってくれた世界観、あるいは想いがそう離れた方向ではなかったこともあり、静かに染み入るような感動が心地よかったです。

 合う、合わないはあるかもしれませんし、人に対して「素晴らしいから体験しろ!」というタイプのコンテンツではないと思いましたが…。もし、私の感覚に近い物を持っている人がいれば、静かに視界の端に置いてみたい世界だなと思いました。

10.私のアスタリスクの花言葉はまだ終わっていない

 攻略に際して、一つ思い至ったことがありました。

 それを実現するまで、私のアスタリスクの花言葉は本当に完了したとは言えませんし、終えたと言いたくありません。

 また同じ景色を観るために、目指すは現実世界インスタンスです。

 Friend達とのオフ会も一緒にできたらいいなと思います。

 最後に、どういう時に使うか悩んだのですが、ここまで決意をさせる作品に出合ったということで一つ。

「おのれ、ヨツミフレーム(歓喜」


閲覧ありがとうございました。

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