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THE HARDBAIT#019, #020
「鈴木美津男“THE BATTLE 2022”優勝レポート」
今回は普段の記事とは趣を変え、鈴木美津男さんが6月上旬に出場したトーナメントの模様をお届けする。
舞台は茨城県の新利根川。霞ヶ浦の西岸に注ぐ流入河川のひとつで、レンタルボートエリアとしても人気が高い。エリアは「川筋」などと呼ばれる新利根川と、霞ヶ浦との接続部に位置する「スノヤワラ」に大別される。数を釣るなら前者、ビッグフィッシュなら後者というのが定説だ。
“THE BATTLE”は試合ごとにテーマが変わるトーナメントで、今回は「トップウォーター&クランクベイトオンリー」。タックルはベイト限定で2本まで、ラインも12ポンド以上の制限付き。「フィネスに頼らず、ハードベイト本来のパワーで競ってほしい」。そんなコンセプトを感じるレギュレーションだ。
鈴木「今回はスノヤワラだけで戦おうと決めていました。すでにスポーニングから回復して、エサを追っている魚がいるだろうと予想していたんですが、実際はまったく違うコンディションでしたね」
まずはスノヤワラ西岸の水門まわりへ。野田奈川からの水が排出されていて、カレントがベイトフィッシュそしてバスを引き寄せることに期待した。この日は南風の予報で、水門から北に続くハードボトムがフィーディングスポットになるのでは、と考えたのだ。
鈴木「もう6月だし、スピードで騙す釣りも効くんじゃないかと思って、LC1.5SSRを速巻きしたり、LC MTO 1.5でコールアップの釣り(詳細は#020で)を試したりしましたが、まったく反応がない。崩壊寸前でした(笑)」
ヒントは思いもよらないところからやってきた。午前9時すぎ、スノヤワラ北岸にある小さなワンドの奥で、オカッパリアングラーがロッドを曲げるのを目撃したのだ。カレントの当たらないストレッチの、さらにインサイドに位置する閉鎖水域だ。当初のねらいとは真逆の場所。格好のスポーニングエリアである。
もしかすると予想より季節の進行が遅いのでは?
鈴木さんはここでスイッチを切り替えた。トネスプラッシュを結び、スローなアプローチを開始。アシやフローティングカバーの際に落とし、1〜2回首を振らせてからゆっくりとステディリトリーブ。このアプローチで、係留船の際をトレースして反応させたのが44センチのナイスフィッシュだった。
鈴木「食う寸前に『ピシャピシャッ』と小魚が跳ねたんです。最初はベイトを食うためにワンドに入ってきたバスかと思ったんですが、2尾めの反応を見てわかりました。どちらもフライガードのオスだったんだね。リリースするとすぐに子どもたちの元へ帰っていきました」
2尾めの35センチも、同じワンド内の同じシチュエーションでバイトが出た。ルアーは“コールアップ”用にしつらえていたLC MTO 4.5のブレードチューン。水面スレスレをデッドスローに巻くと、やはり「ピシャピシャッ」の直後に静かなバイトが出たという。
鈴木「今日はローライトで涼しいから、本来はトップウォーター向きの天気じゃないんですよ。ボートの下に隠れていたバスが威嚇で食ってくれただけ。そうじゃなきゃ、もっとトップで反応があるはず」
結果は合計長寸79センチ、2位に10センチ以上の大差をつけて圧勝。プラクティスなしで挑んだ一戦だったが、季節感さえ把握してしまえば仕事が早い。「ハードベイト本来のパワー」を熟知した、鈴木さんらしいウイニングパターンだった。
「産卵後のシーズンに不可欠な“コールアップ”」
前回の記事では、新利根川で開催されたトーナメント“THE BATTLE 2022”における鈴木美津男さんのウイニングパターンを紹介した。そのなかで何度か登場したのが「コールアップ」というキーワードだ。
鈴木「アフタースポーンの時期に僕がかならず意識する要素です。バスは産卵直後のようなお疲れモードではないけれど、普通にハードベイトを巻いてガンガン追ってくるコンディションではない。そういう微妙なタイミングでは『ルアーを止めて、浮かせる』というひとひねりが必要になってくる」
障害物を回避するためのストップ&ゴーは多くのアングラーが実践しているが、“コールアップ”をねらう際は、さらに意図的にルアーを浮上させる回数を増やす。「水面に逃げられてしまう!」と思わせることで魚のスイッチが入るのだという。
鈴木「ワームの釣りでも、この時期は高比重系ノーシンカーが効くでしょ? ねらっているのはあれと同じ魚です。中層にサスペンドするバスを下方向へのフォールで食わせるのか、ハードベイトを浮かせて水面に“コールアップ”するか、その違いにすぎない」
ここでセレクトするルアーはさまざまだ。たとえば新利根川のなら、LC MTO1.5のようなレギュラーサイズのクランクを水中の杭や沈みものなどにコンタクト→浮かせるのがオーソドックスだと鈴木さん。ブレイクショルダーに当てるためにクラッチDRで急潜行させたり、LC 0.7 DRXを使って浮上中にスパイラルさせるのが効果的なケースもある。
なお、“THE BATTLE”で鈴木さんがLC MTO 4.5にブレード付きフックを装着したのは、浮上中にブレードが回ることでバイトを誘発するためのチューニング。普通に巻くと潜りすぎてしまうため、試合の途中でフロロカーボン20ポンドのリールに交換して深度を押さえる工夫もしていた。
興味深いのは3位に入賞した越川晴彦さんの釣りだ。フラットサイドクランクを使い「バンク際から少し潜らせて止めて、浮上中にバイトを出す」釣りで6〜7バイトを引き出したという。これもまた“コールアップ”をねらった好例だろう。
鈴木「ハードベイトを投げ倒している人ほど、この時期の“コールアップ”の重要性を知っている。琵琶湖ならノベルHFをウイードコンタクト後に浮上させる宮廣祥大さんの釣りが有名だし、先日のH-1グランプリ相模湖戦でも、サトシン(佐藤信治さん)がプロトタイプのダイビングミノーでこの手の釣りをやっていた。アングラーによってネタは違うけれど、どれもハードベイトにしかできないアプローチですよね」
記事&写真 水藤友基