「地形と“差し口”で考えるプリスポーン期」
スポーニングシーズンになると鈴木美津男さんの得意とするハードベイトの釣り、なかでもクランクベイトなどの巻き物は威力を発揮しづらい、というのが定説だ。しかし理由は産卵行動だけではないという。
今回の取材は4月中旬、霞ヶ浦の支流・新利根川で行なった。水面付近でエビやイナッコ(ボラの幼魚)が大量に群れているエリアもあったが、その周辺でバスがフィーディングしているようすはまったく観察できなかった。
ほかの季節であればベイトフィッシュを重視する鈴木さんも、プリスポーン期にはエサではなく「地形」をベースに魚を追いかけていくという。キーになるのは、スポーニングエリアになるであろうシャローフラットへの“差し口”だ。
もちろん、“差し口”をねらうだけで釣れるほど甘くはないのが現実。安定した暖かい日が続けば魚がどんどん上がってくるかもしれないが、三寒四温の「寒」に当たってしまうと、急激にレンジを下げてしまうことも。あるいは季節が進みすぎて、完全にシャローに乗ってしまったら、それはそれで巻き物に食わなくなるという。
「減水したシャローで活きる“2.0”のボディーバランス」
春のバスフィッシングの難易度を上げてしまう日本ならではの現象がある。特に平野部の湖や沼は、農業用水として利用されていることが多いため、田植えの季節を迎えると水位が下がってしまう傾向があるのだ。
たとえば鈴木美津男さんの得意とするシャロークランキング。減水しているとわかれば、できるだけ潜行深度の浅いものを選ぶわけだが、そのなかにも細かな使い分けが存在するという。
興味深いのは、ここでの鈴木さんのチョイスがワンサイズ大きな“LC MTO1.5”ではなく、“LC RTO2.0”になる、という点だ。“LC MTO1.5”を選ぶと、たしかに浮力は増すが同時にやや潜りすぎてしまうので逆効果。一方で“LC RTO2.0”は、ドシャローでも快適にトレースしやすいバランスになっているという。
このボディーバランスが優れているのは、対カバー攻略だけではない。平坦なシャローバンクを巻いていく際も、ちょっとした枝などに触れたらリトリーブを一瞬止めて回避、そしてまた巻き続ける、といったコントロールが容易になるのだ。太めのナイロンライン(16ポンド程度)を使えばさらに扱いやすい。
“LC MTO1.0”と比較するとボリューム感が増すため、できればローライトや風雨などのプラス要素があるコンディションで使うのが理想的。なお、アフタースポーン期になれば同じく潜行深度の浅い“Fat CB BDS Magic 2.2”の出番が増えるのだが、こちらはまた別の機会に紹介したい。
記事&写真 水藤友基