THE HARDBAIT #23, #24
「“イナシブ”の発生と対処方法①」
台風や冷え込みなどの苛烈な状況変化が起こりやすい秋は、本来ならハードベイトがおおいに活躍する季節である。ワームに口を使わなくなった魚を反応させることもできるし、消えてしまったバスを探し直すときも、展開の速いクランクやスピナーベイトが不可欠だ。
その一方で、秋は稲刈りのシーズンでもある。収穫を終えたばかりの水田に雨が降ると、稲の切り株から出たアク、いわゆる「イナシブ(稲渋)」が染み出して、それがフィールドに流入することで一気に魚たちの活性を下げてしまう。9月上旬、鈴木美津男さんが利根川を訪れたのは、まさにイナシブの影響著しいタイミングだった。
北総マリンゲレンデを出発して、まずは下流側のインサイドベンドへ。急深でカレントの通るバンクとなだらかなシャローフラットが連続していて、ハイシーズンは常に魚影の濃いストレッチなのだが、この日はとにかく魚の気配が感じられなかった。
トネスプラッシュ、ポインター95SP、トネプロップジャークなどの水面系は不発。クランクもLC0.5からRTO1.5DDまで各レンジを探ってみたが、バスどころか他魚種の感触すら伝わって来ない。水温はまだ24℃台をキープしていたものの、エビなどが跳ねるようすは皆無だった。
いつもであればハードベイトのローテーションで突破口を探すのが美津男さんの常套手段だが、イナシブに関しては、とにかく影響のないエリアに移動するしか解決方法がない。そこで、早々に本流を見切って流入河川をねらうことにした。まずは中流域の尾羽根川へエントリーしてみると?
水面でも小魚がピチピチと波紋を立て、先ほどとは生命感がまるっきり違う。トネプロップジャークを投げると、フックアップしなかったがあっさりバイトが出た。
だが、期待感が高まったのは一瞬だけ。上流へ向かうとすぐに水質が悪化して反応が途絶えてしまった。本流もダメ、支流もダメ。八方塞がりの状況を、美津男さんはどのように打破するのか?
「“イナシブ”の発生と対処方法②」
9月上旬の利根川で「イナシブ」に直面した鈴木美津男さん。悪影響を避けるため、本流からクリークへとねらいを移した。10時ごろからは根木名川へ。変化の少ない小河川ながら、常に魚をストックしていることで知られるエリアだ。
全長46mm・5.3gのタイニークランクなら、サイズは選べないにせよ、ひとまず魚の反応は得られるだろうと踏んでいたが……。
ここからめまぐるしいルアーローテーションが始まった。まずはKJフラット1.5で遅めのリトリーブを試す。さらにLC MTO 1.0で表層の連続トゥイッチ。ミノーのように左右へ飛ぶわけではないが、キックバックする浮力との兼ね合いで、移動距離を抑えつつアピールできる技だ。
「食い気がないならラトル音で煽ってみよう」とLC 1.0 DRSを試したり、リアフックをブレード付きのタイプに交換したLC 1.0SSRで水面直下を巻くといった変化球まで繰り出したが、ことごとく不発。
そう告げてルアーを交換したとたん、なんと1投目でバイトが! ファイト中に抜けてしまったが、ほどなくして待望の1尾めをキャッチすることに成功した。肝心のヒットルアーは?
なお、このバスはピックアップ寸前に食ってきたため「けっして活性は高くない。普通のリトリーブではダメで、軌道の変化などのリアクション要素が必要」と美津男さんは分析。このイメージが2尾めに繋がるヒントになった。
ブレイク沖が1.6〜1.7mに達するストレッチで、LC 1.0DD DRSにチェンジ。リップがボトムを小突き、一瞬止めて浮かせると、ひったくるような感触が伝わってきた。できすぎた話のように聞こえるかもしれないが、この魚もルアーを変えた2〜3投後に食ってきたのだった。
記事&写真 水藤友基