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THE HARDBAIT #27, #28

「真冬にバスを釣るための考え方①」

鈴木「小学生のころ、先生に『カメは寒くなると冬眠します』って教わったんです。今思えばずいぶんいい加減なこと言ってたね(笑)」

しょっぱなから脱線しているようだが、実はこれもバスフィッシングと関係の深い話。今回は真冬におけるバスの生態や釣り方について、鈴木美津男さんと一緒に考えていきたい。

鈴木「我が家には30年以上生きているミドリガメがいます。ほんの数年前までは、先生が言っていたとおり、冬になるとじっと動かなくなった。ところが5年ほど前に人工の乾燥エサをやめて、生きたエビや小魚に変えたとたん、真冬でも眠らずにエサを追い回すようになったんです」

温かいシーズンに比べて動きは鈍るものの、じわじわエサに近づいて、ガブリとひと呑み。それはまるで、真冬のクリアリザーバーで表層のI字系ルアーめがけて浮上するバスのような食い方だと鈴木さんは言う。

鈴木「20年ぐらい前までは、バスも冬は仮死状態になるというのが定説でした。クランクやバイブレーションをゆっくり引いていると、ほとんど動かないヤツが尻尾にスレ掛かりして上がってくることがよくあった。でもそれは、バスの個体数が多かったので単に引っかかりやすかったんだと思う。しっかりエサとリンクする環境にいるバスは、水温4℃でも5℃でも関係なく活動しているはず

これは鈴木さん自身の経験に裏打ちされた実感でもある。たとえば2月の霞ヶ浦で開催されたトーナメント。ブレイクに絡む浅いフラットの張り出しをねらって1800g級を3連発したことがあった。まだ発売前だったRC1.5のプロトタイプを長門川に持ち込み、ひと流しで3本・5kgオーバーをキャッチしたのも2月の出来事だったという。なお、平均水深が浅くて気温の影響を受けやすく、低水温期に活動するエサの少ないマッディーシャローほど、バスも越冬状態になりがち。その一方で、冬でも生命感あふれるワカサギレイクのような場所であればフィーディングに入るバスの数は多いと考えられる。

鈴木「こういう魚をねらう釣りは、ダウンショットやメタルバイブで越冬状態のバスを叩き起こすのとはまったく違います。エサを食いに来ている個体だからタイミングさえ合えばさほど難しくない。ただし近年のフィールド、特に関東ではバスの数が減っているから、出会うチャンスが少ないのが現状。厳しい時代だけど、諦めずにチャレンジしてほしいと思います」

鈴木美津男さんの飼っているミドリガメ。2023年1月、結氷した氷の下でもノソノソと動き回っていた
鈴木家にある120cm水槽。屋外に設置することで、ベイトフィッシュや甲殻類の四季折々の行動が観察できる。「ホームセンターのネットを丸めて入れておくと、小魚や入り込んで冬でも死なないんです。牛久沼・たまやボートのおじさんに教わりました」
ベイトフィッシュの豊富なフィールドは低水温期でも安定してコンディションのいいバスが釣れることが多い。捕食の回数が減るとしても、エサさえいれば生き物は活動をやめないのだろう

「真冬にバスを釣るための考え方②」

鈴木「冬に釣行日を選ぶなら、なによりも重視したいのは『安定』。どれだけ寒くても気にしなくていい。天気がしばらく安定しているタイミングのほうが、1日のなかで時合に出くわすチャンスが多い」

今年(2023年)は1月の終わりに大寒波が全国を襲った。こうした急激な変化の直後はよろしくない。下手をすれば1〜2週間のあいだ沈黙が続くことも。

鈴木「本当にコンディションのいい魚は、そんなときでも動けると思うんですけどね」

具体的にはどのようなエリアをねらうべきなのか。鈴木美津男さんのホームグラウンドである利根川本流の場合、エサを食う体力のある魚でも、普段は水深4〜5mにスタンバイ。そこから一段上がったところにあるミドルレンジのフラットで捕食行動に入るケースが多い。

鈴木「下流にある佐原エリアの消波ブロックは、冬の定番エリアとして有名です。その理由も、フィーディングに最適なフラットにブロックが沈められているからなんです」

ブロックに身を潜めて越冬するバスもいないわけではない。ただ、それだけでいいなら、ほかのエリアでも同様に釣れるはず。にもかかわらず「佐原のテトラ」がいいのは、冬でも動けるバスがエサを獲るのに適した地形的条件を備えているから、というのが最大の要因なのだ。複数の流入河川や水門が絡んでおり、それがベイトフィッシュを集める要素になっていることも見逃せない。

鈴木「規模の大きなインレットの合流点や河口付近も、冬に見逃せないエリアです。恒常的に流れがあって、水が安定しやすく、環境の変化にも対応しやすい。ときには本流へ、ときにはインレットに移動して厳しい変化をやりすごすこともできる」

利根川でいうと、長門川や根木名川とのインターセクションは超一級の大場所。明確なハードボトムのブレイクがあり、深い側にいるバスが一段上の乱杭やオダを利用してフィーディングに入りやすい。

鈴木「リザーバーや自然湖に置き換えると、水深があって規模の大きなワンドの入り口もこの条件に合致します」

具体的なルアーセレクトやアプローチ方法はフィールドによってさまざまだが、鈴木さんは「自分なりの基準」を明確にすべきだと語る。

鈴木「僕の場合、基準にしているのはクランクベイトを軸とした巻きモノの釣りです。あんまり深いエリアやフィールドを選択すると、ルアーセレクトの選択肢が広がりすぎて、数少ないチャンスを当てづらくなる。だったら最初から浅い流入河川に入って、たとえ冬でもシャロークランクのローテーションだけに照準を絞る、といった作戦を取りますね」


利根川下流域・佐原エリアの消波ブロック帯。冬によく釣れるのは、単にテトラが越冬場所になっているからではない


鈴木さんのルアーセレクトの基準はクランクベイト。それはたとえ真冬になっても変わらない

記事&写真 水藤友基

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