天使の愚痴
僕はあの子が好きというより、この街が好きというより、あの子といるこの街が、この街にいるあの子が好きなのだった。
道路にはみ出した飲み屋の外席で、「最近あいつがさー」となんだかちょっと嬉しそうにあの子が悪態をついていた。
社会になじめないのを人のせいにすることもなく、自分のせいにすることもなく、なんとなくアルコールと人の多さでぼやかしてくれる。そんな街が好きだった。
信じられない人の多さと治安の悪さが、まだこの中に居られる僕は若いと思わせてくれる。思えなくなったら、どうなるだろう。どうなってるだろう。
アラサー近くなって定職についていない僕が人並みの幸せを手に入れることはもう無いだろうとぼんやりとわかっていた。
同い年の同級生は結婚したやつが増えてきた。家を建てているヤツも何人かいた。腑抜けちまったよ!あいつらは!と思う反面、腑抜けることもできず、爆発することもできずに画面を指でなぞるだけの僕がひどく情けなく思えた。
今頃あの子は何をしているだろうか。
黄色い電車をみると思い出す。
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