歌詞勉強 ユメヲカケル ウマ娘プリティーダービー

作詞:マイクスギヤマ  作曲・編曲:東大路憲太


ゲーム、アニメと人気を博しているウマ娘プリティーダービーのアニメ第2期オープニングの曲です。
アニメ系の歌詞について語っているものがあんまりないなーと思いましたので、やってみることにしました。

ウマ娘というコンテンツが、女の子たちが走り一着を目指す青春という内容のため、全体的にも応援的、前進志向的な曲が多いです。
この曲も多聞に漏れず、前向きな曲になります。また、このアイドル的な要素も持っているため、泥臭さよりもキラキラした楽曲が多いです。もちろん熱血な曲もあり、楽曲の幅は広いです。

視点はウマ娘の女の子視点で描かれています。等身大で、時に悩んだり、時に笑ったり、一生懸命夢を追いかける。そんな女の子の、前向きな自分に対して、もしくは伝えたい誰かに対しての応援歌になっています。

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「キミと夢をかけるよ
何回だって勝ち進め 勝利のその先へ!」


ファンファーレの後にタイトル回収から始まります。キミというのはライバルのことですが、トレーナー(ゲームではプレイヤーは、トレーナーとしてウマ娘と接する)に対してとしても解釈できる部分はあります。

メロディーラインで言うと、サビのふた回し目からはじまります。華やかで解放感のあるはじまりでワクワクします。


「Sunshine 前を向けば Passion 高鳴るファンファーレ
青空一直線!(目指せ一着!)
ちょっとヘコむときは パっと耳澄ませてFeel Me!
その背中 押してたいから」


さてAメロ。このゲームは競馬がモチーフになっており、ファンファーレなど競馬で使われる言葉が多用されています。
スタートの合図であり、ここから始まる期待感を持たせています。類語でいうと"はじまりの鐘、チャイム、合図"や"JAM projectの"GONG"のサビ前での「GONG鳴らせ」 などがあります。
ファンファーレという言葉を使うことでアニメのイメージにも合いますし、ただ"はじまりの合図"というより輝き感がありますね。

"パッと" などの擬声語、オノマトペはアニメやアイドルソングでよく使われるイメージです。使うことで可愛さを表現することができます。発音もおもしろいので、子供向けの楽曲では繰り返しで使用することもあります。
覚えやすさや耳残りの良さに繋がりますので、その曲のテーマ、誰に対して聞かせたいかなどに合った使い方をするといいと思います。使いやすいところで言うとキラキラとかでしょうか。

3行目、4行目で聞き手、もしくはキミに対しての応援の要素が書かれています。

その背中 とこのフレーズでは接続詞を省いています。メロディの音数が理由だとは思いますが、接続詞などを使うと説明口調になり、ニュアンスとして堅くなってしまう場合があります。
文字数なども考えつつ、どう言葉をはめ込もうかを考えるといいと思います。また倒置法を使ったり、体言止めをするなど工夫のしようはたくさんあります。



「気持ち一列 それぞれに続く地平線 蹴って
(No More!)迷わないで
(Let's Go!)止まらず行こう!」


Bメロです。少しここで落ち着きます。曲の抑揚をつけるようにBで落ち着き、Cで盛り上がるのは日本のポップスでは基本なように思います。

"気持ち一列"という表現は、競馬のゲートを想像させます。また、蹴ってという部分も走ることが重要なアニメですので、曲のイメージと合いますね。 
この部分に関しては 地平線 まで のようなはめ込み方もできたと思いますが、蹴っての方が映像イメージが湧きますし、印象に残りますね。

こういう楽曲に関してはストレートな歌詞の方が刺さるのだと思います。テーマにもよりますが、盛り上がり、ライブで映えるような曲は誰でも伝わり、誰もが口ずさめる。そんな歌詞を目指して書きたいですね。



「キミと夢をかけるよ 何回だって 巻き起こせスパート
諦めないで I Believe! いつか決めたゴールに
Try!届け 全速で 走りまくろう Never Give Up
風も音もヒカリも 追い越しちゃって 誰も知らない明日へ進め!
(ほら)キミと夢を重ねてる
(ほら)その姿この瞳 映ってるから」

サビです。イントロの歌詞と同じ、タイトルから始まります。 
ここでは少年ジャンプの3大原則、「友情、努力、勝利」が描かれています。まだその途中ではありますが。
ストレートで誰の胸にも届く歌詞で、映像も思い描きやすいです。
ちゃって の部分が少し遊びの部分というか、かわいらしさの表現になってます。
複数人数で歌うことが想定されている楽曲ですので、( )がコーラスとなっています。



「青春ワクワクしよう 前途多難も楽しめば
あふれる大歓声!(気合満点!)
きっと一人だけじゃ ずっと気づけなかったよね
不可能なんて 辞書にないこと」


"不可能なんて 辞書にないこと" これはフランスの軍人、皇帝であるナポレオン・ボナパルトの名言として有名ですね。本来は「余の辞書に不可能の文字はない」ですが。それを変えて、メロディと合うようにしています。
こういう名言やことわざ、四字熟語を組み込んだりするのも技術の一つです。入れやすいのは日進月歩や笑う門に福来るなどでしょうか。ほかにも、単語を一部変えて、新しい言葉、文にしてしまうのもありです。
例えるとアニメ化物語のオープニング、キャラクター千石撫子(なでこ)が歌う「恋愛サーキュレーション」の "ちりもつもればやまとなでしこ し 抜きで いや死ぬ気で"という部分。
"塵も積もれば山となる"ということわざを、"~やまと"のところで"なでしこ"に変えてしまい、し を抜くことでキャラクター名にもなり、なでしこの"し"を抜く=し ぬき=死ぬ気 という言葉遊びをしています。 
ここまでやるのはなかなか難しいですが、塵も積もれば明日になる など一部分を変えるくらいならいけるかもしれません。

キャラクターソングやイメージソングはいかに合った単語を組み込めるかも大事です。ここでは"あふれる大歓声"がそれにあたります。世界観を統一させる意味でも。旅立ちというイメージひとつとっても、出かける、飛び立つ、逃げ出すなど。
その旅立つ方法に関しても、歩きや電車、車なら出発、出立。船なら出航など。細かいところまで見て言葉選びをする必要があります。イメージを統一させることで、世界観がより凝固になりますので、気にしながら。



「パズルのような これからと今と昨日があって
(No More!)迷わないよ
(Let's Go!)繋げて行こう!一緒に」


"パズルのような"は これから、今、昨日がはまって繋がって、続いているんだ という比喩表現です。 
比喩表現は作詞家個人の色の見せどころでもあります。人生を演劇に例えたり、時間を水流に例えたり…こういう表現を書き溜めておくといいと思います。使うタイミングがあれば、いつでも使えるように。タイトルをつけるうえでも重宝します。
曲全体が比喩になっていたりする曲もあります。

あっ て の部分は1B の蹴っ て と同じ音になっています。2週目は1週目と近い音を探して作ると、音の統一感を出しつつ、言葉の選び基準が少し楽になるかも。



「キミと夢をかけるよ 日進月歩 高め合えた
無限のチカラ I Can Be! 躓いたって Once Again
Try!常に 全力で 来たる未来は 自分次第
想像なんてビュンとね 追い越しちゃって 忘れられない奇跡を起こせ!
(ほら)みんなココロ重ねてる
(ほら)ひたむきに輝いた ストーリー」


サビ頭は統一されてますね。タイトルも同じなので、とことん印象付けたいと思ったのかもしれません。
しかもそこだけではなく、要所要所で同じ言葉が使われています。これも技術の一つです。前後の言葉を変えることで同じ言葉でもイメージや意味が変わったりします。
1Cでは前に進むという意味で使われましたが、ここでは上を越えるという意味に変わります。気付いた人があっと思える、そんな歌詞になります。

ここでも四字熟語が使われています。日進月歩。一歩ずつや少しずつなどの表現もありますが、ここではこの四字熟語が使われています。日進月歩の意味は絶えず進歩すること。少しずつ、一歩ずつよりちょっと強気なイメージです。
"全力で"の部分は1週目の"全速で"と同じ母音です。イメージは近く、母音も一緒。ちょっとの変化をつけることで飽きさせません。



「何処にいても虹を見上げて
同じ想いでいられる(目指せ一着!)
トモダチ以上 仲間でライバル
努力だって なぜか嬉しい
競い合って 近づいて行く」


Dメロです。曲の展開的に少し落ち着きます。
"トモダチ以上 仲間でライバル"は友達以上、恋人未満とよく耳にするフレーズを変えたものです。ただの友達ではなく、キミという存在は助け合い笑いあう仲間であり、一着を競い合うライバルでもあります。
競争ですのでみんなが一番ではありません。勝ち負けのある世界の中で、競い合いつつも笑いあう。そんな関係になっていくのです。イメージとしては三角形の頂点に対して、私とキミが競うように向かっていくという感じでしょうか。

トモダチがカタカナなのは可愛さとバランスを重視したのだと思います。漢字だとイメージが固くなり、ひらがなだとライバルが浮いてしまうように思います。
まあこれは個人差ありますので、あくまで私のイメージです。ここ以外でも、キミやチカラ、ココロなど漢字でもひらがなでもいいように思う部分がありますが、全体のバランスやニュアンスなどで使い分けるといいでしょう。



「変えられるのさ Destiny 限界だって 超えてみせる
約束したね あの日 かけがえない勝負を
Pride!響け!全身で すべて出して 思うままに
走りたいよ ともに So We Can Fly!」


一度静かになるCメロです。ここで少しシリアスになります。ここは曲的にもラストのサビに向けて熱意をため込む場所であり、ラストのサビで解放感を曲の展開によって出しています。
限界だって超えてみせる という部分で自らの思いの強さがでています。

"Destiny"は運命でも文字数としては間違っていません。ですがデスティニーの方がここではあっていると思います。書くときは実際に歌ってみて、どれが一番語感がいいかを考えると完成度が高まると思います。



「キミと夢をかけるよ 何回だって 巻き起こせスパート
諦めないで I Believe! いつか決めたゴールに
Try!届け 全速で 走りまくれ もっと
笑い合えた季節の中で

風も音もヒカリも 追い越しちゃって 誰も知らない明日へ進め!
(ほら)キミと夢を重ねてる
(ほら)この胸に昇る太陽
(ほら)噛みしめてGO!
キミと夢をかけるよ いつまでも希望とともに」


ラストサビです。
"この胸に昇る太陽" 普通胸に太陽は昇りません。当然何かの意味を置き換えた言葉になります。昇る太陽は基本的に希望、未来が見えてくる というようなイメージで使われることが多いです。
それは真っ暗な夜から光が差し、太陽が昇ってくるのが、光が見えてくる、希望の到来をイメージするからです。暗いところから明るいところへ。夜明けという言葉だけでもポジティブなイメージを持ちます。
ここでの太陽は その後ろで描かれる希望のことだとおもいます。 "キミと夢をかけるよ いつまでも希望とともに"はいつまでもの後ろに(この)を付けると意味がより伝わると思います。
しかし"その"や"この"などの言葉は説明口調になりがちですので、聞き手のイメージを沸かせるという意味でもあまり使わない方がいいのかもしれません。できるかぎり最小限に……がいいと思います。
まだこれからも物語が続いていくという終わり方です。誰も知らない明日だって、自分を信じて仲間とともに、夢の道を駆けてゆく。希望の見える終わり方です。




アニメソングやアイドルソングを内容が薄っぺらい、心に響かない、イメージが湧いてこないという人がいます。しかしそうではありません。そのアニメに、ストーリーに、イメージに、映像に合うように、
クリエイターが技術を詰め込んだものであり、立派な作品なのです。いくつものチェックをして、これで良いと思えたものがようやく世に出るのです。


職業作詞家は、その歌い手の言いたいこと、思いに沿って、代わりに書くのが仕事です。もしなりたいと思う人がいるなら、自分視点だけでなく、あの人なら、この人ならどう思うか。それを想像して書かなくてはいけません。
私も勉強中の身で、未熟も未熟です。 よりよい歌詞が書けるよう、勉強してまいります。

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