友達からお金を貸してと言われた話②
大人になってできた友達からお金を貸してと言われた。大切な友達だからお金を貸した。一度貸したお金は返ってきたがまた彼女は私からお金を借りようとした。理由は言えないという。
『お願いします。私を助けてください』
私は目を疑った。年末にもうこれで終わりにすると言ってたのに。どうしてそうなるんだろうか。するとすぐに電話がかかってきた。
『お金を貸して欲しいの。明日携帯代払わないと携帯が止められてしまう。そしたら仕事の連絡も取れなくなる。携帯代だけでいいの。貸してもらえませんか?』
流石の私も今回ばかりは理由を聞かずに貸すつもりはなかった。もちろんその理由が親の手術とか自分自身の体調のことなら問題はない。でも今回もlきっと理由が言えないのだきっと。
『どうしてそうなってるの?年末にも話したけどもしかしてまだ切れてないの?お金返ってきてないの?またかしたってこと?どういうことなの?』
そういう私に彼女は泣きながら話し始めた
『結局まだお金返ってきてなくて……あれからもお金貸してたの。でも彼は今外に出ることができなくて仕事上自由になる時間がなくてお金が返せないだけなの。彼にはお金があるんだけど。その仕事も問題だから職場環境改善のために彼も戦ってるからお金は返ってくるんだけど……ただ時間がないのよ。私なんていなくても誰も困らないしもう嫌だ。』
そう言って彼女は黙った。これはだめだと思った。彼を庇う彼女はもうすでに常識がわからなくなってるんだと思った。
『お金返すのに10秒あれば返せるんだよ。年末あなたが私にしようとしたように、車で近くまで行けば返す事はすぐにできる。ごめんけど一度もお金返ってきてないなら彼に返す意思はないと思うよ。
あれからお金を貸してるっていうことは、同じルーツを使って返すこともできるのに貸すだけっておかしいよ……何より貴方が困ってるのが分かっててお金を借りる人なんておかしい』
ゆっくり私はそう話した。それでも彼女は同じ話を繰り返した。彼は悪くない。彼はお金を持ってる。彼にはお金を返す意思がある。彼はお金を貸してとは言わないんだけど私が勝手にお金を貸したんだ。そう言い続ける彼女は、もう何もわからなくなってしまっていた。これは間違いなく男だと思った。
『もうそんな人と付き合っちゃだめだよ。警察行こう。いくらその人に渡してるのかきちんとまとめてとりあえず一緒に警察行こう』
私にはそういうしかなかった。
『お金は貸してくれないの?』
彼女からの言葉はこれだった。愕然とした。
『理由がはっきりしないものにお金は貸せない』
私はそういった。貸すほうが楽なんだよ。貸してもう縁切っちゃえば私も楽になる。でも貸せない。一緒に警察行こうと何度言っても彼女は首を縦には降らなかった。彼は悪くないと言い続けた。
これから寂しい大人が増えてくる。女は結婚するのが当たり前という時代から男女雇用機会均等法が制定され女が結婚しなくても生きていける時代になった。いろんな独身を通した女性が老後を迎える時期がやってくる。男女平等が叫ばれる前の独身でやってきた女性達はきっと特別で才能と努力と苦労をたくさんして独身を貫く為にたくさんの避難も浴び生きてきただろう。その批判の分覚悟も自覚も持たざるをえなかったはずだ。けれどこれからは普通の女性が独身の老後がやってくる。その人たちは、きっとこうして弱い部分もたくさん持っている。
普通の女性というと言葉がおかしいがまだ見ぬその世界を彼女たちが少しづつ築いていく。結婚しないということは、今まで自由にしてきた分脆いところも多いかもしれない。
これから先の人生を一緒に過ごすという誓いをしていないということは、寂しさと一緒に逃げ場もあるということだ。そして子供を育ててない分理不尽な裏切りをされるのに愛してしまう事や理由なんかない我慢をしながら愛してしまう事など割り切れない気持ちに向き合う経験が少ない。
仕事での悔しさや理不尽は大きく味わってもどこかで仕事だからと割り切ることができる。もちろん辛いことも多かっただろう。男性と肩を並べて仕事をするということは、男性と一緒じゃだめなのだ。男性より秀でていないと肩は並べられない。叱咤激励やコミニュケーションという名の嫌なことともたくさん付き合っていかなくてはそこの場所に立つことができなかっただろう。そこに少しづつ体が思うように動かなくなったり疲れが取れなかったりして未来の孤独に対する不安が重なる。先人たちとは違う新しい人生を送ってきて自分たちが先人となった時その老後を切り開かなければいけないのも自分達なのだ。
人との付き合いが希薄となった今、すでに孤独死という言葉が出来上がり未来が怖くなる。そんな中で彼女達は、きっと新しい環境の構築をするはずだ。何せ先人なのだから。未来のためにそして自分達のために。