友達からお金を貸してと言われた話①
『私を助けてください』
携帯を見ると2度程の着信が入っていた。メールを見ると『私を助けてください』というメッセージが入ってた。
その友達と出会ったのは24年ほど前で同じ派遣会社で出会った。同じ会社に派遣され一緒に仕事をした。その後私は、派遣先の会社に正社員として入社し彼女はその派遣会社の社員となった。一緒に買い物をしたり2年に一度は旅行をしたりする仲だ。大人になってからの友達は数えるほどしかいない中の一人で大切な友達だ、
出会った頃からオシャレに気を使うというタイプではなく男っ気は全くなかった。どちらかというと機能性を重要視するタイプで食べることが大好きな人だった。色んなものを買っては食べスーパーの半額のシールにテンションが上がってそんなに食べれるのだろうかと思うほど買い込み全てその日のうちに食べてしまうようなそんな人だった。食べてる彼女はとても幸せそうでそんな彼女はぽっちゃりしててそれが幸せの証なんだと思っていた。そんな彼女から初めて助けてのメールが来たのは去年の11月だった。
『ごめん。メール見てなかった。どうしたの?』
そう返信すると『今から電話していいですか?』との返信が入ってきてすぐに電話があった。メールの敬語に少し戸惑いながら私は、電話に出た。
『実は、お金を貸して欲しいの。どうしても明日までに15万必要なんだけど仕事で家に帰れなくて、急で申し訳ないんだけどいくらでもいいから貸してもらえない?』
お金遣いが荒いタイプでもなく男に貢いだり飲み歩いたりするタイプでもない。どちらかというと人が良くていいように使われる傾向はあるが頼られることが好きなのでそれに対しては自分でも自覚していいように使われてる節もあった。堅実なタイプで年金保険や生命保険もきちんと入るタイプの人だったので耳を疑った。『どうして?』と聞くと
『どうしても今日中に振り込まないといけないのよ。今日が期限だから。いくらでもいいのよ。ちょっと色々あってね、保険も解約したしもう消費者金融に借りるしかないとは思ってるんだけど…… 返すお金がなくて次の給料で絶対返すからお願いします。』
『いやそうじゃなくてそのお金どうして必要になったの?そんなお金をたくさん使うような人じゃないでしょ』
『理由は言えないんだけどちょっと人にお金貸してて、帰ってくるはずだったんだけど色々あってまだ返ってこなくて……返ってくる予定だったのがちょっと遅くなっちゃって……だから返せる予定はあるの』
親の病気とかそういうことを心配していた私は、彼女の人にお金を貸したと言う理由が腑に落ちなかった。それでも私は今までの彼女を信用してお金を貸した。今までの彼女は、決して遊びなどでお金を借りるタイプでもないし誰かを騙すタイプでもない。
ただ友達にお金を借りるっていうのはどんな気持ちだろうと思った。親にも言えないもしくは、もうすでに借りているのかもしれない。お金を借りることをお願いする友達ってどういう間柄なんだろう。彼女は何を思って私を選んでそう言ったんだろうと思った。私が誰かにお金を借りるというならば誰にお願いするのだろうかそう思いながら心が痛んだ、
それにしても理由が言えない15万は少し問題だなと思った。そして私は彼女から返って来なくても縁切り料として自分が後悔しないだけの金額を貸すことにした。
『そんなに困ってるなら今月中に返してとは言わないけど今年中には必ず返してね』
そう付け加え翌日振り込みをした。振り込み手数料は、貸した金額から差し引いた。もしこのことで彼女と縁が切れるのならと思ったときに振り込み手数料のことなんて考えの1つに入れたくなかった。それくらい私は怒っているのだとそのとき実感した。15まんという金額じゃない。彼女が理由をちゃんと言ってくれなかったことが私にとってはショックだったのだ。翌日彼女からありがとうとメールがあった。一言ありがとうと……それから先彼女からの連絡は全くなかった。1ヶ月がすぎ2ヶ月が経ちそうするうちに年末となった。彼女からは連絡がない。約束の年末私から連絡をするということに少し苛立っていた。そんな人じゃないはずなのに……自分の彼女への信頼という名の期待がもろもろと崩れてしまうような気がした。こんな単純なことで……私は意を決して1度だけ連絡をしようと心に決めた。これで連絡が取れなかったら諦めよう。悩んだときは行動して1つ情報を増やして答えを出す。これが私の悩んだときのいつもの決まり。
私の会社の最終出勤日の前日を選んで彼女にメールした。
『お金年末までにって約束してたと思うんだけど……連絡ないので連絡しました。遅れるでもいいけど連絡は欲しかったな』
そのメールの返信はすぐにあった。『ごめんなさい。明日持っていきます。仕事何時に終わりますか?』
かなりイライラした。今までかなり我慢を重ね心配もし彼女から連絡があると信じそうしながら約束の年末が来たので仕方なく私は、連絡したのだ。その間彼女との縁が切れてしまうことも考えた。彼女が無事でいるのかとも考えた。人は情報がないと悪く悪く考えてしまうものだ。そうやっていろいろ考えて待ち続け意を決して連絡したメールにこのあっさりとした返信。そして理由などを話すつもりがない感じ。それでも今までの付き合いもあるし彼女にあって気持ちが変わるかもしれないと思いお金を返してもらうことにした。今までのように付き合えないにしてもお金を返してくれるなら返してもらおうと思った。
彼女と会ってお金を返してもらって彼女がびっくりするぐらい痩せているのを目の当たりにした。もしかしたら彼女はものすごく困ってるのかもしれないと思い直し彼女の話も聞くことにした。真面目な性格の彼女がこんな状況になるということは食べるのが幸せという彼女がこんな姿になるということは相当な問題が隠れていると思った。
どうしてこんなことになってるの?の質問に彼女は、ポツポツと話し始めた。
『ある人にお金を貸しててその人からお金がまだ返って来てないの。でもその人にはお金を返す意思があってもう少しでお金を返してくれそうなんだけど間に入ってる人との関係でうまくお金が帰ってきてないだけでその人は悪くないしその人にはお金があるの。』
そう言いながら彼女は、私を一度も見なかった。
『でもすごく痩せたよね……大丈夫?あれからもその人にお金貸してるの?』
『ずっとその人にお金を貸して今までの保険を解約し貯金も切り崩しもう自分は一文なしなの。親にも借りれないしあの時は本当にありがとう。でもその人には返す意思があるしもう少しで帰ってきそうなんだけどなかなかうまくいかないのよ。その人のおかげで痩せたみたいなところもあるし。来月にはまとめて全部帰ってくるようになってるから』
『もう貸しちゃダメだよ。何があっても貸しちゃだめ。お金が返ってきたら縁を切らなきゃだめだよ。貸してる金額結構大きいんでしょ。今まで50年一生懸命未来のために貯めたお金なんだから気持ちはわかるけどこれからそんな人と付き合っちゃダメよ。一度でもお金は返ってきてるの?その人どんな人なの?何してて彼にお金貸す話になったの?宗教とかじゃない?』
あまりにおかしい話だから質問事項が多くなってしまった。だいたいお金貸して痩せるってある?ライザップはお金返ってこないから……
『宗教だったらよかったけど。彼のことは言えない。これから先もきっと言えないと思う。お金は返ってきてないけどでも悪い人じゃないの。返す意思はあるしお金もある。ただ間に入ってる人とうまくいかないだけだから。』
もう彼女に話をする意思はない事は分かったしそれ以上聞いてもどうにもならないと思い私は聞くのをやめた。
その後私は考えた。怪しくてしかたない。私が『彼に』という言葉をわざと出したのにそれを素直にきいて相手が男性な事は分かってしまった。そして私の中での妄想は2つし絞られた。これはきっと詐欺か男に騙されてるかどっちかだ。頼られるのが好きな性格で人と話をするのが大好きで寂しがり屋な彼女にとってこの伝染病で仕事がなくなり一人で過ごす時間を余儀なくされた1年はとても辛い物だっただろう。そこを狙った詐欺だったのかもしれない。もしくは考えたくないが男の線。今まで20年付き合ってきて男の話は一度も聞いたことがない。昔の話でも男と付き合った話は皆無だった。そんな彼女を騙したりしたのだろうか。
『お互い素敵な老後のためにもうお金貸しちゃだめだよ。それだけは約束してね。次はないよ』
そう言って年末分かれたはずなのに……次の彼女からの連絡は翌年3月だった。そのメールを見て私は愕然とした
『お願いします。私を助けてください』