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二人の女性と親子丼と携帯電話とお昼の出来事

最近発売された親子丼を食べに行こう。
そう思って会社を出た。いつもいく吉野家へ向かう。
いつもいく吉野家は、w型のカウンターで店員さんの通路を挟んで客が向かい合わせになる。
『親子丼並みで』
注文が終わり運ばれてきた水を飲んでると目の前に二人の女性が座った。

80代のおばあちゃんと40代の娘さんと言ったところだろうか。
『私はいつものやけど、遠慮せんで好きなのをたくさん頼みよ!』
と言いながらメニューを差し出す。おばあちゃんは、なんだか誇らしげだ。ここの常連なんだろう。
『すみません。ありがとうございます。』
??敬語ということは、娘さんではないようだ。店員さんが目の前に現れた。
『私は、いつものにするわ。そしてこの人は…なんでもいいんで好きなのを頼みよ。なんにする?』
『親子丼で』
そう言って連れの女性は、親子丼を頼んだ。
その後連れの女性は、携帯を触り始めた。
私は、何だかおばあちゃんんが不憫に思えた。きっと何かお世話になったことがあって連れてきたのであろう。自分の行きつけの店に美味しいものを食べさせたい一心で。
そして彼女は、おばあちゃんが行きつけの店にというので隣の老舗洋食店かと思ったら吉野家で少しだけ残念だったのかもしれない。
それでも食事をお奢ってもらうのに、注文の後携帯をひたすら触り続ける彼女を見て何だかいたたまれない気分になった。

おばあちゃんは、じっと静かに前を見ている。ふと隣を見て携帯をさわってるのを見るとまた目の前に視線を戻す。
私の親子丼がやってきても、彼女が携帯を手放す様子はない。
すると、おばあちゃんの食事がやってくる。
おばあちゃんは、彼女の食事が来るまで食べるのを待つ様だ。なのに彼女は、携帯を見ていてそのことにすら気づいていない。
せめて先に食べてくださいの一言でもと思うと心が詰まる。
少し時間が経って彼女の親子丼がやってくる。
親子丼のお盆には、レシートが乗っている。そのレシートをおばあちゃんは、すかさず握る。
『ここは、いいから』
『すみません。ありがとうございます」
そう言って彼女は、食べ始めた。

私はせめて食べている時だけは、会話がなくてもいいから携帯を触らないでと神様に誓った。

彼女は、携帯を置いて親子丼を食べた。
親子ではないおばあちゃんと親子丼を食べていた。
携帯は、親子丼の隣に置いてあった。

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