「結果からおはなしします。良性ですよ。」
それは、
二月の終わり頃です。
「なんか右肘が痛いな。」
そう言ったダンナが、
病院へ行くと言い出したのが、始まりでした。
あんなに病院が嫌いなのに‥。
よっぽど痛いんだな。
そんな風に、軽く考えていたんです。
ところがです。
「うちの病院じゃ、検査出来ないからここ紹介するよ。」
「おそらく、次の病院でもMRIをとると思うから、ここを紹介しますよ。」
あれよあれよと言うまに、
病院を三件もまわり、
これはただ事ではない?
と
私たちはその時やっと、自覚しはじめたのです。
結局、MRIに入っても原因が分からず、
とうとう検査手術をすることに
なりました。
「もしかして悪性腫瘍の可能性がある。」
悪性腫瘍。
その言葉を聞いてからです。
こころはいつも、ここに有らず。
集中しようとしても、気持ちが途切れてしまう。
見てるだけで分かるくらい、
ダンナの様子が変わっていきました。
(ダンナだけでなく、きっもわたし自身も、そうなのでしょう。)
手術して、退院して、
日常をおくって、結果をまつ。
たったそれだけのコトなのですが、
気持ちは日々、すり減るのです。
ただ待つ、というのがこれほど疲労するとは‥。
正直言うと、
ここ数週間はいつもと同じ状態でいるコトが
出来なかったんですね。
(たぶん、ダンナも。)
例えるなら、この数週間は
つくり笑顔をしている時の感覚に
似ていました。
面白くなくても、笑って、笑って、
笑っていれば。
いつかその笑顔が、ホンモノになるだろう。
それを自分に言い聞かせながら。
半分は祈りのような、半分は願いのような。
この状態を耐え終わったあと、
自らの気持ちが
いったい何処にむかうのか‥?
その先を知りたくもあり、
また、逃げてしまいたくもあり。
そして、
少し気を抜くと混沌とした気持ちに
足元をすくわれそうになって
しまいそうにもなるんです。
(例えば、眠れない夜なんかに。)
「良性ですよ。」
落ち着かない日々をすごし、
疲労を蓄積させていったわたしたちに
それは救いのコトバでした。
安心しすぎて、涙が出てしまったほどです。
よかった。
よかった。
よかったね。
ここ最近、
無口に拍車がかかっていたダンナが、
先生からのお話が終わったころ、
ようやく笑顔になりました。
思い切り仕事が出来なかったことも
かなりのストレスになっていたと
思います。
そして、身体を最優先にして、
営業を休んでしまっていたお店のことも
気が気ではなかったんです。
検査結果を聞く日が近くにつれ、
悪い想像をしてしまっては、
無表情になっていくダンナ‥。
わたしの、
どんなコトバも届かないような気がして、
なにも言えませんでした。
でも!!
「また、頑張れる!」
「また、一緒に走れる!」
ダンナとわたしの二人三脚のような、
夫婦経営。
ブレーキをかけられてから、
やっと、再出発できそうなんです!
「また走れることができるのか?」
大丈夫です!
わたしたちは、わたしたちのお店は、
以前とは違うなにかを
手に入れているはずです。
なぜなら、
お店って、わたしたちの気持ちが
反映されてつくられていくから。
わたしたちの心が強くなって、
お店がさらに飛躍ができるように。
頑張りすぎないよう、
すこしゆっくり、歩幅を狭めて、
進んでいきたいと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!